△100[t]牽引試験を行うTMC100
北沢秀勝 『新しい 保線用重機械の紹介』, 新線路,10巻4号,鉄道現業社,(1956.4) より
概要
軌道モータカーは戦前、日本に導入されて以来、兼用型モータカーや貨物型モータカーなど単独で人員または資材を輸送するための運搬機械として活用されてきた。
アジア・太平洋戦争終結後わずか10年にして輸送力を回復した国鉄は全国でインフラストラクチャの更新や輸送力増強、動力近代化を推進することになった。これに伴い長大列車の高速、高密度での走行が増加したため、軌道の強化が求められた。結果、軌道材料の大型、重量化が進行し、従来の貨物型モータカーなどの能力に限界が見えはじめていた。
そこで、単純な人員輸送用ではなく、貨車や各種機械を牽引することを主目的とした大型軌道モータカー TMC100が開発されたのである。
動力性能は89[PS]ディーゼルエンジンを搭載、重量およそ6.5[t]、最高速度56[km/h]、平坦線での牽引重量は100[t]に達し、従来の軌道モータカーより性能の大幅向上を図った。なお、TMC100の100はこの牽引重量に由来する。
1956年に富士重工業宇都宮製作所にて2両が試作された、福島、田端機械軌道区に配属され試用された。
製造番号は101及び102。
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 4,950[mm] |
幅 | 2,064[mm] |
高さ | 2,650[mm] |
軌間 | 1,067[mm] |
軸距 | 2,900[mm] |
車輪径 | 660[mm] |
自重 | 6.5[t] |
■ エンジン
エンジン名称 | いすゞ DA120P |
エンジン形式 | 水冷4サイクル 6気筒 |
エンジン出力 | 89[PS]/220[rpm] ※ |
※ JIS規格の呼称変更により新表示では102[PS]
■ 動力伝達
クラッチ | 乾燥単板式、油圧クラッチ |
変速機 | 前進4段、後進1段 |
逆転機 | 前進1:後進0.84 |
駆動輪 | 前後2軸駆動 |
■ ブレーキ方式
主ブレーキ方式 | 空気ブレーキ |
補助ブレーキ | ネジ式手ブレーキ、センターブレーキ |
■ 主要装置
転車装置・転車台 | 油圧昇降手押旋回 |
離線装置 | 離線車輪付手押 |
撒砂装置 | 全車輪前後方向切替 |
連結器 | ピンリンク式(後部のみ) |
■ 積載荷重・定員
荷台積載荷重 | 2.5[t] |
運転室座席定員 | 3人 |
■ 空気・燃料容量
空気圧縮機形式 | C400 |
元空気ダメ容量 | 70[L] |
燃料タンク容量 | 72[L] |
■ 牽引性能
勾配 | 積載重量 | 牽引重量 | 単車積載時 | 重量牽引時 |
水平線 | 2.5[t] | 100[t] | 50[km/h]以上 | 45[km/h]以上 |
10‰ | 2.5[t] | 50[t] | 45[km/h]以上 | 20[km/h]以上 |
25‰ | 2.5[t] | 40[t] | 40[km/h]以上 | 10[km/h]以上 |
参考文献
1)松田務 『MC -一般型モーターカー見聞録-』, トワイライトゾ~ン マニュアル11, ネコ・パブリッシング, (2002)
2)尾西定明 『大型軌道モータカーの構造と取扱』, 交友社, (1967)