概要
TMC100の試用が成功、早速そのままの形で量産化されたものがTMC100Aである。
大型軌道モータカーは軌道材料の輸送が主目的であるため、貨車牽引が可能となっている。このために主制動装置として空気ブレーキを常用し、直通ブレーキ(自車)と自動空気ブレーキ(貫通)を備えている。粘着力を増すための散砂装置を備えていることからも重量物牽引を主眼に置かれていることがわかる。
動力系としては、エンジンと主変速機が前位側ボンネット内に収まっており、動力はプロペラシャフトを介して車体中央に設置された副変速機に入る。ここで動力が前後に分けられ、前後2軸駆動を行う。TMC100Aの副変速機内には6[t]自動車用のデファレンシャル機構が組み込まれている。
軌道上での転回、線路外への取り下ろしができるように油圧式転車装置と手押式離線装置を装備する。油圧式転車装置は松山式と呼ばれる松山自動車工業製のものを取り付けている。
製造番号103~145の43両が製造された。
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 4,950[mm] |
幅 | 2,064[mm] |
高さ | 2,650[mm] |
軌間 | 1,067[mm] |
軸距 | 2,900[mm] |
車輪径 | 660[mm] |
自重 | 6.5[t] |
■ エンジン
エンジン名称 | いすゞ DA120P |
エンジン形式 | 水冷4サイクル 6気筒 |
エンジン出力 | 89[PS]/220[rpm] ※ |
※ JIS規格の呼称変更により新表示では102[PS]
■ 動力伝達
クラッチ | 乾燥単板式、油圧クラッチ |
変速機 | 前進4段、後進1段 |
逆転機 | 前進1:後進0.84 |
駆動輪 | 前後2軸駆動 |
■ ブレーキ方式
主ブレーキ方式 | 空気ブレーキ |
補助ブレーキ | ネジ式手ブレーキ、センターブレーキ |
■ 主要装置
転車装置・転車台 | 油圧昇降手押旋回 |
離線装置 | 離線車輪付手押 |
撒砂装置 | 全車輪前後方向切替 |
連結器 | ピンリンク式(後部のみ) |
■ 積載荷重・定員
荷台積載荷重 | 2.5[t] |
運転室座席定員 | 3人 |
■ 空気・燃料容量
空気圧縮機形式 | C400 |
元空気ダメ容量 | 70[L] |
燃料タンク容量 | 72[L] |
■ 牽引性能
勾配 | 積載重量 | 牽引重量 | 単車積載時 | 重量牽引時 |
水平線 | 2.5[t] | 100[t] | 50[km/h]以上 | 45[km/h]以上 |
10‰ | 2.5[t] | 50[t] | 45[km/h]以上 | 20[km/h]以上 |
25‰ | 2.5[t] | 40[t] | 40[km/h]以上 | 10[km/h]以上 |
参考文献
1)松田務 『MC -一般型モーターカー見聞録-』, トワイライトゾ~ン マニュアル11, ネコ・パブリッシング, (2002)
2)尾西定明 『大型軌道モータカーの構造と取扱』, 交友社, (1967)