TMC500A

概要


かつて信越本線横川ー軽井沢間に存在した碓氷峠には、66.7[‰]の連続急勾配が存在し、明治の代から戦後の1962年までアプト式鉄道により峠越えをしていた。1962年に新線建設により、普通鉄道による峠越えとなる。しかし、新線は建設費の面から従来線の横に並行するのみで、66.7[‰]連続急勾配を抜本的に解決するには至らなかった。

この区間では保線作業においても、急勾配による逸走の可能性から、モータカーはもちろんトロリーに至るまで保守用車の使用が一切禁止されており、長年人力による機材運搬・保線作業がつづけられていた。
しかし、レールや枕木の重量化に伴い、人力での運搬作業が困難となってきたことから、1973年から国鉄高崎局と富士重工にて共同研究が開始され、1975年に登場したのがTMC500A 軌道モータカーである。

265[PS]エンジンを搭載し、66.7[‰]勾配上で25[t]の牽引性能を誇る。
連続66.7[‰]勾配を下るため、ブレーキ装置は非常に重装備となっており、空気ブレーキ(自動・直通)のほか、油圧式ねじ式ブレーキとドラムブレーキが備えられている。油圧式ねじブレーキは、ねじ式手ブレーキを油圧モータで動かすようにしたもので、空気ブレーキやドラムブレーキの故障時にバッテリ電源から直流モータを介して油圧モータを作動させてブレーキを掛けるものである。更に、連続降坂のために抑速用リターダブレーキを備える。

製造番号10のみ存在。
碓氷峠区間の廃止後は、旧横川機関区を利用した碓氷峠鉄道文化むらにて、トロッコ列車・シェルパ君の牽引用に使われていたが、今では予備機となっている。
 
 
諸元


■ 寸法

長さ 7,000[mm]
2,920[mm]
高さ 3,722[mm]
軌間 1,067[mm]
軸距 3,700[mm]
車輪径 860[mm]
自重 25[t]

 
■ エンジン

エンジン形式 4サイクル水冷ディーゼル機関
エンジン出力 265[PS]/2,000[rpm]

 
■ ブレーキ方式

主ブレーキ方式 自動空気ブレーキ・直通ブレーキ併用
補助ブレーキ方式 内拡式ドラムブレーキ・油圧動作ねじ式手ブレーキ
抑速ブレーキ方式 リターダブレーキ

 
■ 牽引性能

勾配 牽引重量 単車積載時 重量牽引時
水平線 200[t] 45[km/h]以上 45[km/h]以上
66.7‰ 25[t] 12[km/h]以上 10[km/h]以上
66.7‰ 25[t] 10[km/h]以上 10[km/h]以上

 
 
参考文献


1)松田務 『MC -一般型モーターカー見聞録-』, トワイライトゾ~ン マニュアル11, ネコ・パブリッシング, (2002)
2)長岡昭二 『信越線 急勾配形モータカーの使用開始』, 新線路, 33巻4号, (1979年4月)