MR1669

概要


エンジン等が故障した際に救援車両等に頼らず、収容基地まで自力走行できる非常用エンジンを搭載した軌道モータカー。

 

(1)通常時の走行装置
①主エンジン
非常用エンジンを搭載することから搭載スペースを確保するため、走行に影響が出ない範囲で現行の軌道モータカーよりも排気量、出力を抑えたコンパクトなエンジンを使用している。

②駆動装置
通常時および非常時の走行駆動装置を搭載するため、小型軽量で高性能な油圧モーターによる駆動装置が検討されたが、トルクと走行速度の両立が困難であったため軌道モータカーの作業環境より、従来のトルクコンバータおよびトランスミッションを介した推進軸による駆動装置が採用されている。

③制動装置
圧縮空気を使用した自動貫通制動になっている。

 

(2)非常時の走行装置
主エンジン故障時に非常用エンジンで走行するには、主エンジン側の駆動装置を使用することが困難であることから、非常用エンジンのほか、駆動装置においても別系統となっている。その他の制動装置においては、通常の装置と共用する設計になっている。
①非常走行用エンジン
主エンジン故障時において、牽引している車両を最寄りの基地まで回送する必要があるため、主エンジンと同程度の小型過給機(ターボチャージャー)付のエンジンが採用されている。

②駆動装置
設置スペースの都合上、トルクを重視した小スペースでも搭載可能な油圧ポンプ・モーターによる駆動装置を採用している。

③制動装置
通常時の制動装置と共用になっている。

 

諸元


■ 寸法・重量

長さ 8,800[mm]
高さ 3,775[mm]
2,730[mm]
自重 25[t]

 

(1)通常時の走行装置

①主エンジン

排気量 11,040[cc]
定格出力 254[kW]/2000[rpm]

 

■主要性能

線路勾配[‰] 牽引重量[t] 速度[km/h]
0 600 35
25 160 10
35 115 10

 

②駆動方式
推進軸による双軸駆動方式、前後進等速2段変速走行

 

③制動装置
・圧縮空気を使用した自動貫通制動
・基礎ブレーキ シリンダー方式抱合わせ型四輪制動

 

(2)非常時の走行装置

①非常用エンジン

排気量 6,494[cc]
定格出力 118[kW]/2100[rpm]

 

■主要性能

線路勾配[‰] 牽引重量[t] 速度[km/h]
0 500 9
25 100 8
35 75 8

 

②駆動方式
推進軸による双軸駆動方式、前後進等速走行

③制動装置
通常走行時の制動装置を使用するため、主エンジン故障時にエアー不足が懸念されることから非常エンジンにもコンプレッサーが装備されている。


△駆動装置組立図 文献1)

 

参考文献


1)中里光弥 『非常用エンジン搭載型軌道モーターカーの導入』,日本鉄道施設協会誌,55巻,8巻,一般社団法人 日本鉄道施設協会 , (2017.8)