HDMB-21MP

概要


エンジンとモーターをそれぞれ搭載したハイブリッド軌道モータカー。
除雪装置への高トルクな動力の伝達と低定速走行を簡単な操作で実現するために製作された。

ロータリー除雪装置やスノープラウを使用しない回送走行時はエンジンからの動力をトルクコンバーター内蔵の第1クラッチにより車軸へ伝達して走行する。

ロータリー除雪装置やスノープラウを使用する除雪作業時は補助電動モーターの動力をトルクコンバーター内蔵の第1クラッチにより車軸へ伝達して走行する。
エンジンの動力はトルクコンバーター内蔵の第2クラッチによりトルクコンパーターに取り付けられた油圧ポンプへ伝達される。
油圧ポンプにて発生した油圧は油圧モーターを回転させる。除雪装置は推進軸を介して油圧モーターと接続することで動力が伝達される。

従来の除雪車は1つのエンジンの動力を分配しているため除雪装置の負荷変動の影響を受け車速を一定に保つのが難しかったが、本形式では走行と除雪に別の動力を使用しているため除雪装置の負荷変動の影響を受けずに低定速走行を行うことが可能である。

補助電動モーターを用いた走行は回送時で3 km/h、除雪時で1.5 km/hでの走行が可能であると推定される。

また複数の動力を持つことで片方の動力に異常が発生した際でも自力で基地への収容が可能な構造になっている。
車体前部に搭載したエンジン発電機より電力供給を受けることで走行エンジンが使用不能になっても補助電動モーターで走行が可能である他、電動コンプレッサーを搭載することで、空圧供給源も二重化が実現されている。
また、タッチパネル方式のモニタを搭載しており、故障診断や応急復旧方法の表示が可能である。

夏姿時は除雪装置が無い分重量バランスをとるためにバンパーウェイト付き連結器を装備している。
冬姿に変更する際に安全に作業を行うために専用の連結器着脱用作業台車が存在する。
夏姿に変更する際にも同様の理由で専用の除雪装置着脱作業用台車が存在する。

 
諸元


■ 寸法・重量

長さ 10,835 mm
2,960 mm
高さ 3,810 mm
軌間 1,067 mm
自重 22 t

■ エンジン

エンジン名称 VOLVO TAD750VE
エンジン出力 268 HP (200 kW)/ 2,300 rpm

 
参考文献


1) 北陸重機工業『JR東海殿に次世代型軌道モーターカーを納入しました。』http://www.hokuju.com/news/2014/11/jr.php(2014/11/12)
2) 北原和明『在来線保守用車両における安定輸送の取組み』新線路, 72巻4号, 鉄道現業社, 2018年4月
3) 北陸重機工業株式会社『HOKUJU PRODUCT GUIDE』北陸重機工業株式会社, 2023年
4) 北陸重機工業 トキオ 特許第6121592号『鉄道用除雪車』https://patents.google.com/patent/JP6121592B1
5) 北陸重機工業 トキオ 特許第6139738号『鉄道車両用連結装置の着脱用作業台車』https://patents.google.com/patent/JP6139738B1
6) 北陸重機工業 トキオ 特許第6139737号『鉄道車両と除雪装置との着脱構造』https://patents.google.com/patent/JP6139737B1