RIM

△RIM-1 + RIM-2


■概要
1964年から1965年にかけて富士重工が製作した新幹線用電気作業車である。
RIMは「Rendezvous in Moonlight」の略で、富士重工の初期の電気作業車はいずれもRIMの後に数字を付与した形式であった。
いわゆる電気作業車であるRIM-1,3,5と、水タンクトロ、トロであるRIM-2,4、構造物作業車であるRIM-7、延線車(後のSW)であるRIM-21、作業車(後のTW)であるRIM-22が存在するが、本稿ではRIM-1~5について解説する。

 

型式 構造 製造両数
RIM-1 高所作業機付電気作業車 9[両]
RIM-2 水タンクトロ 8[両]
RIM-3 高所作業機無電気作業車 4[両]
RIM-4 平トロ 8[両]
RIM-5 高所作業機付電気作業車 7[両]

 

■開発
従来工法となる”やぐら”を組んだモータカーとトロによる架線作業工法は1928年頃に出現し、東海道線 小田原~熱海間電化工事から1964年の東海道新幹線新設工事まで、またそれ以降の工事でも広く使用されていた。
東海道新幹線ではその後の保全作業を効率的な物とするため、強力な足回りと専用の作業装置を装備したRIMが開発された。


△電気作業用軌道モータカー(新幹線用)電車線工業のあゆみ編集委員会『電車線工業のあゆみ』電車線工業協会,(1983.9)より

 

・高所作業機
油圧操作式の高所作業機で、ブームの起伏・旋回・伸縮を行うことで空中を自在に移動することができる。
最高床面高さはレール面から7,200[mm]、作業半径は5,250[mm]であり、隣接線の作業を行うことも可能である。
高所作業機はRIM-1,5に搭載された。

△隣接線での作業 中谷菊男『新幹線の電気作業車』,新線路,19巻,4号,鉄道現業社,(1965.4)

 

・洗浄装置
電車線と地上を絶縁する碍子は表面に汚れや塩分が付着し汚損することで絶縁性能が低下する。
この対策としてRIM-1はRIM-2を連結することで碍子等の洗浄を行うことが出来る。
RIM-2はRIM-1より電源供給を受け、給水ポンプによる給水・注水ポンプによるRIM-1への送水を行う。
RIM-1には敷地外への水の飛散による影響を抑えるため軌道外側から内側へ放水を行う他、噴霧針状ノズルの放水銃を採用している。

△作業イメージ 『電気作業車』,鉄道電気,18巻,3号,鉄道現業社,(1965.3)より

△RIM-1の高所作業機上には放水銃が確認できる

このRIM-1+RIM-2の1編成で架線延長60[km]分の作業が行えることから、台風などの碍子の急速汚損が上下線合計400[km]発生したと仮定した場合に7[両]が必要と両数根拠として算定された。
これに保守の組織、東海道新幹線沿線の汚損度分布状況が考慮され全線にRIM-1及びRIM-5を16[両],RIM-2を9[両]配置するのが妥当とされた。

△架線作業車及びタンク車配置計画(案) 『新幹線25kv電車線路及び車両用屋外がいしの保守に関する研究』,日本鉄道電気技術協会

 

・台車
保守基地の間隔が広い新幹線での使用にあたり、従来の保守用車で使用していたリンク式の走り装置ではなく高速性能が高い一軸台車を採用している。
動力性能上は90[km/h](水平線,単車積載)が最高速度であるが、試運転時には最高速度110[km/h]を記録している。
この台車はRIM-1,3,5などの動力車のみではなくRIM-2,4などのトロにも採用されている。

△RIM-2の足回りにも一軸台車の使用が確認できる

 

・駆動装置
機関、トルクコンバーター、逆転機、変速機、プロペラシャフト及び最終減速機を経て車輪に動力を伝える2軸駆動方式である。
エンジンにはTMC200系列と同様のいすゞ DH100TP、トルクコンバーターに新潟コンバーター 8A-1500MR-2、終減速機は減速比2.19の物が採用されている。

 

■諸元

作業車 タンク車
長さ(連結面間) 6,905[mm] 7,050[mm]
3,000[mm] 2,636[mm]
高さ 2,700[mm] 2,417[mm]
軌間 1,435[mm] 1,435[mm]
軸距 4,000[mm] 4,000[mm]
車輪径 762[mm] 762[mm]
自重 15.5[t] 6.4[t]
積載 2.0[t] 6.5[t]

 

■エンジン

エンジン名称 いすゞ DH100TP
エンジン形式 水冷4サイクル 6気筒 過給機付
エンジン出力 160[PS]/1,800[rpm] ※

※ JIS規格の呼称変更により新表示では185[PS]

 

■トルクコンバーター

名称 新潟コンバーター 8A-1500MR-2

 

■制動装置

作業車 タンク車
主ブレーキ方式 自動空気ブレーキ 自動空気ブレーキ
補助ブレーキ ネジ式手ブレーキ 側ブレーキ

 

■転車装置

油圧昇降旋回手押式

 

■横取装置

手動テコ押式

 

■発電機

出力 35[kVA]
電圧 三相交流 200[V]
周波数 60[Hz]

 

■作業台

最大高さ 7,200[mm]
作業半径 5,250[mm]
対応カント 180[mm]
最大起伏角度 55[°]
ブーム段数 2[段]
作業台安全荷重 300[kg]
ブーム旋回角度 300[°]
起伏速度 1.5[°/s]
伸縮速度 150[mm/s]
旋回速度 6[°/s]

 

参考文献
1)『新幹線25kv電車線路及び車両用屋外がいしの保守に関する研究』,日本鉄道電気技術協会,(1964.3)
2)『電気作業車』,鉄道電気,18巻,3号,鉄道現業社,(1965.3)
3)中谷菊男『新幹線の電気作業車』,新線路,19巻,4号,鉄道現業社,(1965.4)
4)電車線工業のあゆみ編集委員会『電車線工業のあゆみ』電車線工業協会,(1983.9)
5)『鉄道電気産業史』,日本鉄道電気技術協会,(2014.3)
6)藤川央玖人『新幹線保守用車の紹介』,建設機械施工,75巻,3号,日本建設機械施工協会,(2023.3)

 


 

RIM-1 (RIM-5の可能性も有)

RIM-2