CEM100


■概要
1995年にJR東日本に導入された架線延線を目的とした大型電気作業車である。
なお、CEMは Catenary Exchange Machines(架線巻取延線車)を指す。

■導入背景
JR東日本では富士重工製SWを中心とした6両編成の保守用車群でプレストレッチ工法で架線延線を施工していた。
この工法は架線に過張力を20,30分印加(プレストレッチ)後に400個程度あるハンガを30~40人程度の人員を要して一斉に架け替えるというものであった。

JR東日本では将来的な電車線工の減少に伴う架線張替が困難になる恐れから、省力化工法の開発と作業環境の改善を目差し、機械化・自動化・ロボット化を取り入れた装置の開発を行うこととした。
人員を要するハンガ架替作業を自動化・ロボット化については、ハンガ自動取付替ロボットを2台搭載したハンガロボット位置制御台車が開発された。
ロボットによる金具の取付替はトロリ線延線と同時にする必要があり、従来のプレストレッチを省略する工法が検討された。
検討試験の結果、プレストレッチをせずとも一定張力を印加しながらトロリ線を延線をした場合、プレストレッチ工法で実施した場合との伸びの差が引留箇所の張力調整装置(ターンバックル)で調整可能なレベルまで抑えられることが分かった。この新工法は「張力印加工法」と呼ばれ、延線時に一定張力を印加できる装置を有する張替用車両が開発されることとなった。
この張力印加工法は従来工法で20,30分かけて行うプレストレッチ作業を省略することができるので、作業時間の短縮も図ることができた。

△ハンガ自動取付替装置と連結したCEW100 文献1)より

CEW100はこの張替用車両として1995年に試験及び訓練を目的として最初に導入された車両である。

■構造
CEW100は張力発生制御装置、ドラム制御装置、プーリークレーン、作業バケットの装置で構成される。本機械の巻取・延線装置はスウェーデンで活躍していたものを元としており、「ダブルキャプスタン方式」と呼ばれている。

・張力発生制御装置

△張力発生制御装置 上の滑車はプーリークレーンと思われる 文献2)より

張力発生制御装置は油圧の力によりトロリ線に発生する張力を制御するものである。トロリ線が巻き付けられている回転部の中央には、油圧ポンプと同様の機構が備わっている。
トロリ線の張力は回転部分の回転力を発生させ、回転力は油圧に変換される。この油圧を制御することで、常時一定の張力を得ることができる。

・ドラム制御装置

ドラム制御装置 文献2)より

ドラム制御装置は横巻ドラムの上下位置を制御し、張力発生制御装置へ最適な位置で出すことができる。

・プーリークレーン
プーリークレーンはトロリ線を最適位置に延線できる機構である。

・作業用バケット
後位側にある作業バケットでは上記延線装置の操作の他、走行の遠隔操作も可能である。

■架線延線装置の変更
後年の写真では延線装置が安田製作所製の延線機構に変更されていることが確認されている。

△台枠上がかさ上げされ、安田製作所の延線装置が搭載されている。

 

 


参考文献
1.上田宏『JR東日本におけるメンテナンス関連技術開発の取組み』,JREA,第41巻 7号,日本鉄道技術協会,(1998/7)
2.加藤修『新幹線トロリ線自動張替装置の開発』,JREA,第38巻 10号,日本鉄道技術協会,(1995/10)
3.井口茂男,『新幹線トロリ線自動張替装置の開発』,鉄道と電気技術,第7巻 3号,日本鉄道電気技術協会,(1996/3)
4.井口茂男,『新幹線トロリ線張替に伴うハンガ自動取付替装置の開発と実用化』、第10回鉄道電気技術研究発表会論文集、(2000/10)