MSW 10


Plasser&Theurer社製の電気作業車。
架線の支持物や金具の点検、整備に用いる高所作業車。
最大到達高さ15[m]の多関節のブームを装備しており、電線や支持物を自在に避けることができる。
JR東日本で採用されており、新幹線用と在来線用の2種類が存在する。

 


■概要
JR東日本では電車線作業の近代化の一環で、トロリ線回の検査を電気保全車(MW)で実施していた。
しかし、き電線、架空地線、電柱バンド、がいしなどの高さ8~15mの設備は梯子を使用して検査作業を実施していた。
この作業を機械化すべく、1989年6月より技術調査を開始、車体本体はPlasser&Theurer社、ブームはRUTHMANN社と仕様検討を重ねた。
1990年8月に新幹線高所作業車BWとして輸入され、上越新幹線に導入された。その後、改良がおこなわれ、1994年段階で東北・上越新幹線の5支社に各1台が配備されている。
また、1993年には在来仕様が品川電力区に導入が確認されている。

■構造
作業用バスケットは垂直方向に15m、水平方向に10m伸びる。ブームは関節機構を有し、オーバーラップ箇所等の複雑な架線箇所でも使用可能である。またアウトリガを張らずに作業可能である。
バスケットは作業員自らバケット内から操作可能であり、また4km/hでの運転操作も可能である。

△多関節ブームを使用するMSW10 文献4)より

また、前運転室の上に接地用パンタグラフを装備している。
パンタグラフはシャンク社製WBL型でドイツ国鉄のICEに使用されているものと同形状となっている。
また安全装置として、接地パンタが上昇しないと作業台バスケットが操作できないようロックがかかるシステムとなっている。また、屋根上へ昇降するはじごもロックされる。

■諸元

車両諸元(新幹線仕様)

全長 9350[mm]
全幅 3100[mm]
全高 3750[mm]
最大速度 75[km/h]
重量 26.7[t]
エンジン 185[HP]
乗車人員 10人
最大牽引重量 26.7[t]

 

バスケット部諸元

垂直高さ 15[m]
水平高さ 10[m]
作業台広さ 1.7×1.0[m]
作業台重量 250kg(2名+工具)
ジブ回転角 水平左右120°
ジブ回転角 垂直200°

 


 

MSW 10.104

(在来仕様)

MSW 10


参考文献
1.JR東日本2017-2018 会社要覧 電力p43 「保守用機械」http://www.jreast.co.jp/youran/pdf/2017-2018/jre_youran_group_p42-43.pdf
2.相原政美,『新幹線用架線高所作業車』,JREA,第34巻 2号,日本鉄道技術協会,(1991/2)
3.伊澤利和,『電力作業の機械化』,JREA,第37巻 1号,日本鉄道技術協会,(1994/1)
4.Plasser&Theurerカタログ MSW 10