MMJ


■概要
2003(平成15)年1月より実施工を開始した北陸重機工業と共同開発した道床交換作業車。
片持ち式カッターチェーンを用いてマクラギ下の道床を掘削するもので首都圏の省力化軌道工事区に配備されている。

 

■MMJ投入以前
TC(テクニカルセンターの略称)型省力化軌道を本格敷設するために東京省力化軌道工事区が1998(平成10)年3月1日に発足した。

発足当初にマクラギ下の砂利をかきだすための装置として小松製作所製のバックホウをベースとした軌陸の砂利かき出し機が投入された。

△砂利かき出し機。文献5)より

ところが施工箇所のマクラギ下の道床が異常に硬いところでは掘削機が何度も止まったりチェーンが外れたりと当初は目標の20[m]には及ばない最大16[m]の施工に留まっていた1)

17[t]の掘削機の自重と軌框の荷重が道床に圧密することを避けるために施工箇所を軌框ごとジャッキで扛上するなど対策を行うことで平均16[m]程度の施工、1998(平成10)年12月より道床の固結箇所での掘削能力不足を補うためにダンプトロに油圧ユニットを搭載しパワーアップを図るなどの改良を加えて26[m](平均では23[m])まで施工延長を伸ばすことができた2)

しかしながらこれ以上施工延長を伸ばすことは困難で省力化軌道敷設を早めるために掘削能力が向上した機械を投入することとなり高性能道床掘削機として当型式が導入されることとなった。

 

■もも太郎の由来
MMJ-2001には「もも太郎」のイラストが描かれたステッカーが貼ってあるが漢字をあてると「百太郎」となる。

△MMJ-2001に貼ってあるもも太郎のステッカー

これは水谷組の創業(1892(明治25))年から百年目にあたる1992(平成4)年に片持ち式道床掘削機が完成したこと、当時保線作業は「きつい・汚い・危険」の3K作業と言われていたことから創業100年目の3K退治になぞらえて「もも太郎」としたものである。

 

■片持ち式道床掘削機の構造
片持ち式のカッターチェーンでの掘削によりレールとマクラギに触れることなくマクラギ下の道床を掘削することができる。掘削能力は1時間当たり75[m3]。1分あたりほぼ1[m]の掘削ができ、実掘削作業で45[m]の施工延長と、砂利かき出し機と比較して大幅に能力がアップしている3)
片持ち式道床掘削機は砕石を掻きだすオーバーヘッドカッター、掻きだした砕石を排出するためのスライド式の第1コンベアー、第2コンベアー及びスライド旋回式の第3コンベアーで構成されている。

△MMJ外観

掘削した発生バラストは下図のような流れで移動していく。実際の作業では後位に連結されるホッパー車MFS50に積込されていく。

△掘削した砕石の流れ。文献1)より

 

■動力伝達装置
油圧駆動で掘削・走行の車輪切替を行うことができる。自走走行・カッターチェーン駆動用のメインエンジンと掘削走行・作業装置駆動用のサブエンジンを持つ。サブエンジンはメインエンジン異常時に応急使用が可能となっている。
当形式は自走可能であるが掘削現場までは軌道モータカーによる牽引を基本としている。道床掘削時には4速の走行速度段が設定されており40[m/h]/50[m/h]/60[m/h]/80[m/h]の低速で走行できる。

 

■作業装置
1.掘削装置
掘削は車体前部に取り付けられたオーバーヘッドカッターを油圧モーターでブーメラン形状内の三次元リンクチェーンを駆動することによって行う。オーバーヘッドカッターは油圧シリンダにより上下、左右への動作制御を行うことが可能である。

2.排出装置
オーバーヘッドカッターにより掘削された砕石を車体後部へ排出するための第1~第3コンベアを有している。

 

■その他装置
オーバーヘッドカッター及び第3コンベアには高さ4.2[m]を検知できるセンサーが備えられている。また緊急時用に車体の前後左右4箇所に非常停止ボタンを装備している。
レールからの脱輪時の復旧用に車体前後4箇所にアウトリガーを備えている。

 

■諸元(以下の諸元はMMJ2002、MMJ2003のもの)
・主要諸元

項目 諸元
全長(回送時) 13,020[mm](自動連結器を除く)
全幅 2,790[mm]
全高 4,000[mm]
自重 55[t]

 

・メインエンジン諸元

項目 諸元
形式 CAT C7ディーゼルエンジン
定格出力 168[kW]/2,200[rpm]
最大トルク 1,028[Nm]/1,400[rpm]
気筒数・径×行程  6-110[mm] × 127[mm]
燃料タンク容量  400[ℓ]

 

・サブエンジン諸元
<交流発電機>

項目 諸元
型式 北陸工業 SDG100 AS-3A6
発電機名称  回転界磁型、ブラシレス交流発電機
定格出力 三相 80/100[kVA] 単相10/11[kVA]
定格電圧 200/220[V] 400/440[V]
電流 231/262[A] 115/131[A]
定格回転数 1,500/1,800[rpm]

<ディーゼルエンジンの諸元>

項目 諸元
型式 水冷 4 サイクル 直接噴射式
機関名称 いすゞ DD-6BG1T
総排気量  6,494[cc]
定格出力 73.6[kW]/1,500[rpm]
91.2[kW]/1,800[rpm]
シリンダ数・径×行程 6-105[mm] × 125[mm]
燃料タンク容量 225[ℓ]

脚注
1)1998(平成10)年5月と6月の10回の実績(文献6)表-1 敷設実績表)による。それによると最大16[m]最小4[m]平均11.7[m]の施工であった。
2)文献7) p.27。
3)文献3) p.10の表-1 高性能道床掘削機による施工状況表による。

参考文献
1)尾島智行『片持式道床掘削機・もも太郎』,新線路,第62巻4号,鉄道現業社,(2008.04)
2)萩尾泰弘『車種別機械概要⑭片持ち式道床掘削機の走行装置及び作業装置等の解説』,日本鉄道施設協会誌,2018年第12号,日本鉄道施設協会,(2018.12)
3)北條重幸『第二期TC型省力化軌道工事の取組み』,新線路,第57巻7号,鉄道現業社,(2003.07)
4)『省力化軌道の本格施行に向けて専門工事区が発足した』,新線路,第52巻4号,鉄道現業社,(1998.04)
5)米山典雄『TC型省力化軌道の施工計画』,新線路,第52巻5号,鉄道現業社,(1998.05)
6)田中道利『省力化軌道(TC型)の効率的施工法』,新線路,第52巻10号,鉄道現業社,(1998.10)
7)谷口健一『山手線TC型省力化軌道の敷設について』,新線路,第53巻10号,鉄道現業社,(1999.10)


 

MMJ-2001

MMJ-2002

MMJ-2003