MTT-14

(写真:MTT-14A  写真の個体はライトケースが床面より飛び出た形態である 大間・加藤・足立(1968)p132より引用)



新線路,12巻15号(1961.12)に掲載されているMTT-14Aの広告。広告中の写真の個体は前照灯が端梁に埋め込まれている。

■概要
昭和35(1960)年から製作された国鉄納入機である。MTT-14Aが37両製作された事が確認されている。
国鉄向けとしては初のディーゼルエンジン搭載機となり、油圧ポンプを装備しタイピングユニット昇降が油圧化されている。
但しこれらは前年に名鉄向けに製作されたMTT-13の機能を踏襲しており、性能面においてMTT-13との違いは殆ど見受けられない。本機種にて追加および変更された機能は、離線用ジャッキの搭載と制動方式くらいである。1)
しかしMTT-4よりも格段に性能が向上した事には変わりなく、国鉄においては昭和35~36年度の2カ年に渡り本格的な全国配備が行われた。国鉄における昭和40(1965)年時点の配備先は下記の通りである。

配備先鉄道管理局/台数
旭川 2 長野 1
札幌 1 静岡 1
青函 4 名古屋 2
盛岡 1 金沢 2
秋田 1 岡山 1
仙台 1 中国 2
新潟 1 大分 1
水戸 1 熊本 1
千葉 2 鹿児島 1
東京 2 合計 272)

鉄道線路(1965)記載の一覧表から抜粋し作成

一方スタイリングについては、本機種からタイピングユニットの外側に側梁が設けられなくなり、本機種以前との明確な識別点となっている。この他、前照灯が従前の機種と同様にライトケースごとが床面から飛び出ているものと、端梁に埋め込まれているものの2形態が存在し、おそらく本機種生産途中から変更されたものと思われる。

諸元を下記に示す。

全長×全幅×全高 4.8m×2.4m×2.8m
総重量 8,400kg
原動機 型式 いすゞDA220
(ディーゼル)
定格出力 48ps/1,800rpm
3相交流
発電機
4P-25KVA,1,800rpm,
220V,65.5A-60c/s-3φ
油圧装置 油圧ポンプ
駆動用
電動機
3.7KW-3φ-200V
-60c/s-6P-1,200rpm
(2台搭載)
油圧ポンプ 油研LT-R(2台搭載)
吐出量30L/min-70kg/cm2-1,200rpm
常用圧力 50kg/cm2
タイピング
装置
起振用
電動機
2P-600W,3,450rpm,
200V-60c/s-3φ
(8台搭載)
ツール数 16本
上下昇降用
電動機
なし(油圧シリンダーによる昇降)
伝達機構 油圧コントロールバルブにより左右2個の
油圧シリンダに圧油を送りリンク機構を
介してタイタンパを上下する。
走行装置 走行用
電動機
4P-11kw-1,730rpm,
200V-405A-60c/s-3φ
(1台搭載)
伝達機構 いすゞトラック用クラッチ変速機(前4後1)
およびローラチェーンで後車軸駆動
制動装置 後軸2輪制動
枕木間の
移動
変速機を1段に入れ1個の油圧シリンダで
クラッチブレーキ連動
走行性能
登板能力
6.9~45km/h
35/1000

大間・加藤・足立(1968)p133-135および鉄道線路(1965)記載の諸元表から抜粋し作成

本機種についても、昭和47(1972)年までに国鉄からは淘汰されている。3)

■参考文献
1)『保線データ・シートNo.8 保線機械その1』,鉄道線路,13巻7号(1965.7)
2)大間秀雄・加藤正・足立顕『機械保線作業』,中央鉄道学園,(1968)
3)芝浦製作所社史編纂委員会『50年のあゆみ』,芝浦製作所,(1989)

■脚注
1)従前は全輪制動であったが本機種では後輪2輪のみ制動に変更されている。なお後継機種であるMTT-15Aからは再び全輪制動に回帰している。
2)石原(1978)および芝浦製作所社史編纂委員会(1989)に記載の製作両数(37両)と合致しない。国鉄以外の納入先が存在したか、工事局など施設局以外の国鉄部局へ納入された可能性が考えられるが詳細不明。
3)森沢雅臣『グラフで見る保線107 マルタイの推移』,新線路,32巻9号(1978.9)p43掲載の図-4による