MTT-2

(写真:MTT-2A  下記のMTT-2Bとは屋根や手摺の形状が異なる。 片山吉信様所蔵写真)



『鉄道線路』, 6巻10号, (1958年10月)グラビアページに”国産の電気式マルチプルタイタンパー”として掲載されたMTT-2の写真。背景が同じと思われるマチサ製ライトタンパーおよびB27の写真と一緒に掲載されており、同誌31頁からは田端駅構内でライトタンパーとB27の見学会が報じられている事から、東鉄配備のMTT-2Bと思われる。

■概要
昭和32(1958)年に製作された記念すべき初の国鉄納入機である。MTT-2AおよびMTT-2Bの2機種が各1両製作され、前者が門司鉄道局、後者が東京鉄道局へ配備された。1)両社の性能は鉄道線路(1965)および大間・加藤・足立(1968)掲載の諸元表によると同一であるが、屋根や手摺の形状等細かい部分の差異がある模様である。2)

諸元を下記に示す。

全長×全幅×全高 3.5m×2.2m×2.2m
総重量 2,700kg
原動機 型式 トヨタR型
(ガソリン)
定格出力 42ps/3,600rpm
3相交流
発電機
2P-12.5KVA,3,600rpm,
220V,32.8A-60c/s-3φ連続
タイピング
装置
起振用
電動機
2P-400W,3,450rpm,
200V-60c/s-3φ
(8台搭載)
ツール数 16本
上下昇降用
電動機
6P-15KW-1,200rpm,
200V-60c/s-3φ
(2台搭載)
伝達機構 電動機ローラチェーンスリップクラッチウォームギヤ
リング機構を経てタイタンパを上下して搗き固めを行う
上下限位置でリミットスイッチで電動機を停止する
走行装置 走行用
電動機
無し(モータカーによる牽引)
枕木間移動用
電動機
4P-0.75kw-1,800rpm,
200V-60c/s-3φ
(1台搭載)
伝達機構 フリクションクラッチおよびローラチェーンで後車軸駆動
制動装置 ハンドブレーキ
枕木間の
移動
手動クラッチレバーとハンドブレーキ連動

大間・加藤・足立(1968)p133-135および鉄道線路(1965)記載の諸元表から抜粋し作成

前年に製作されたMTT-1Aの改良型という位置づけであり、MTT-1A完成時に国鉄関係者より集められた意見を反映させて製作されている。従って基本的な構造はMTT-1Aとほぼ同様と思われ、上記諸元表の通りMTT-1Aと共通している仕様が多い。一方で屋根、運転席、作業走行用(枕木間移動用)電動機が追加されており、作業走行用時に限り自走が可能となった。3)

初の納入機とはいえ技術的に未熟な部分があった事は想像に難くなく、MTT-2Aは昭和41(1966)年時点で廃棄されている。4)同年時点でMTT-2Bは残存していたが4)、こちらも昭和47(1972)年までに廃棄されている。5)

■参考文献
1)『保線データ・シートNo.8 保線機械その1』,鉄道線路,13巻7号,日本鉄道施設協会,(1965.7)
2)大間秀雄・加藤正・足立顕『機械保線作業』,中央鉄道学園,(1968)
3)株式会社芝浦製作所『30年のあゆみ』,ダイヤモンド社,(1969)
4)芝浦製作所社史編纂委員会『50年のあゆみ』,芝浦製作所,(1989)
5)石原一比古 『電マルの生いたち』,新線路,32巻4号,(1978年4月)
6)石原一比古『大型保線機械の歴史・開発とその経過』,鉄道線路,24巻10号,(1976年10月)

■脚注
1)石原(1976)p9
2)石原(1978)以外の各種文献では片山吉信様所蔵写真と同じ写真をMTT-2Aとして紹介している。石原(1978)のみ、鉄道線路(1958)掲載の個体をMTT-2Aとして紹介しているが、片山吉信様所蔵写真と屋根や手摺の形状が異なり、こちらをMTT-2Bと考えるのが自然である。
3)芝浦製作所(1989)p65
4)施設局保線課『保線用機械一覧表 昭和41年3月31日現在』,(1966)
5)森沢雅臣『グラフで見る保線107 マルタイの推移』,新線路,32巻9号(1978.9)p43掲載の図-4による