(写真:MTT-4A 片山吉信様所蔵写真)
大間・加藤・安達(1969)p132に掲載されているMTT-4Aの写真。上記片山吉信様所蔵写真の同じ個体を後面側から撮影したものと思われる。
『新線路』, 13巻10号, (1959年10月)裏表紙に掲載されたMTT-4Aの広告。待避時間の短さが謳われており、芝浦製作所が待避走行用電動機の搭載をセールスポイントとしていた事が伺える。
■概要
昭和34(1959)年に製作された国鉄納入機である。MTT-4Aが7両製作され、札幌、新潟、金沢、広島鉄道局に各1両と天王寺鉄道局に3両が導入されている。1)2)
前年製作のMTT-3と機能が共通し、国鉄向けとしては初の回送機能搭載機種となった。また全長が5,900と倍近く大型化し、これに伴いエンジン・発電機および各種電動機の容量増強が行われている。1)2)
この他、本機種のみ待避走行用電動機を搭載している点が特徴として挙げられる。MTT-3までは左側のタイタンパ昇降用電動機を動力として、離線用車輪を電動で昇降させていたが、本機種はこれに加えて待避走行用電動機を別途搭載している。2)離線用車輪を待避用レールに載せた後の横移動の電動化を狙ったものと思われるが詳細不明である。なお後継機のMTT-13では離線車輪昇降が手動となると同時に待避走行用電動機の搭載が無くなり、続くMTT-14からは離線用油圧ジャッキが搭載されるようになった。
諸元を下記に示す。
全長×全幅×全高 | 5.9m×2.2m×2.6m | |
総重量 | 7,200kg | |
原動機 | 型式 | トヨタF型 (ガソリン) |
定格出力 | 48ps/1,800rpm | |
3相交流 発電機 |
4P-25KVA,1,800rpm, 220V,65.5A-60c/s-3φ |
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タイピング 装置 |
起振用 電動機 |
2P-400W,3,450rpm, 200V-60c/s-3φ (8台搭載) |
ツール数 | 16本 | |
上下昇降用 電動機 |
6P-2.2KW-1,200rpm, 200V-60c/s-3φ (2台搭載) |
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伝達機構 | 電動機ローラチェーンスリップクラッチウォームギヤ リング機構を経てタイタンパを上下して搗き固めを行う 上下限位置でリミットスイッチで電動機を停止する |
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走行装置 | 走行用 電動機 |
4P-11kw-1,730rpm, 200V-405A-60c/s-3φ (1台搭載) |
伝達機構 | トヨタF型クラッチ 変速機(4段変速) ローラチェーン |
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制動装置 | ハンドブレーキ | |
枕木間の 移動 |
変速機を第1速に入れ操作レバーとブレーキペダルで行う | |
走行性能 登板能力 |
5~35km/h 35/1000 |
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待避走行用電動機 | 4P-0.75kw-1,800rpm, 200V-60c/s-3φ (2台搭載) |
大間・加藤・足立(1968)p133-135および鉄道線路(1965)記載の諸元表から抜粋し作成
一挙7台の全国配備が行われた記念すべき機種ではあるが、導入は昭和34(1959)年度のみに終わり、本格的な増備は油圧装備が搭載されたMTT-14からとなった。昭和47(1972)年までに国鉄からは淘汰されている。3)
■参考文献
1)『保線データ・シートNo.8 保線機械その1』,鉄道線路,13巻7号(1965.7)
2)大間秀雄・加藤正・足立顕『機械保線作業』,中央鉄道学園,(1968)
3)芝浦製作所社史編纂委員会『50年のあゆみ』,芝浦製作所,(1989)
■脚注
1)鉄道線路(1965)p144-145およびp148
2)大間・加藤・足立(1968)p133-135
3)森沢雅臣『グラフで見る保線107 マルタイの推移』,新線路,32巻9号(1978.9)p43掲載の図-4による