09_バラストスイーパー


■概要
マルタプルタイタンパの搗き固め作業後にマクラギ上に残った砕石(バラスト)を除去するために用いられる。
道床整理車とも呼ばれる。

スイーパーと呼ばれるブラシを回転させ、マクラギ上の砕石を掃き出すことで道床の整理を行う。

 

■日本におけるバラストスイーパーの導入
日本においてはバラストスイーパーは国鉄の「保線作業の機械化」による中編成機械化方式(以下中編成)および特殊編成機械化方式(以下特殊編成)に組み込まれたのが始まりとなる。マルタイの搗き固め作業の続行で道床整理を軌道モータカーもしくはマルタイに牽引されて行なった。
中編成、特殊編成というのは定期修繕方式の保線作業集団のことで機械群をひとつの集団として一連の作業を集中的に実施することで軌道の強化による保守作業量の軽減と保線の近代化を狙ったものである。中編成、特殊編成の他に大編成機械化方式(以下大編成)・小編成機械化方式も存在する1)

大編成は大都市近郊線区(一、二級線)で列車間合が四時間程度確保できる線区の甲修繕を行なう。中編成は中・下級線区(三、四級線)で列車間合が二時間程度確保できる線区の甲・乙修繕を行なう。特殊編成は列車本数が多く、列車間合が六十分以上確保できる線区の甲・乙修繕のほか大編成が対象の線区の乙修繕も担当する。東京北局の線区の分類については以下の通り2)

線名 甲修繕 乙修繕
東北本線(上野~赤羽)、東北電車(神田~赤羽)、
山手電車(神田~目白)、総武線(お茶の水~秋葉原)
大編成 特殊編成
東北本線(赤羽~大宮)、東北電車(赤羽~大宮)、
東北高架線、赤羽線、常磐緩行線等
将来的に大編成
(暫定で中編成または特殊編成)
特殊編成
(暫定で中編成)
日光線、川越線、烏山線 中編成 中編成
東北本線(大宮~白河)、東北貨物線、
山手貨物線、常磐線、高崎線等
特殊編成 特殊編成

甲修繕・乙修繕は具体的には以下のような作業を指す3)。バラストスイーパーは下図の道床整理を担当した。

作業種別 甲修繕 乙修繕
木マクラギ区間 マクラギ更換
道床総搗き固め
道床補充
道床整理
道床むら直し
道床整理
コンクリートマクラギ区間 レール締結装置補修
道床総搗き固め
道床補充
道床整理
道床むら直し
道床整理

中編成(下図甲修繕)、特殊編成(同乙修繕)を図にすると以下のようになる。

△木マクラギ区間の中編成及び特殊編成の例。文献2)より

「保線作業の機械化」は国鉄全域に広がっていきバラストスイーパーは中編成・特殊編成に組み込まれて各地で活躍した4)

 

■体制の変遷と定期修繕方式の終焉
「保線作業の機械化」はマルタイの稼働を伸ばす施策でもあったが昭和53(1978)年に「新しい線路保守体制」が妥結した。これもマルタイの稼働を高めるために少人数で多くの回数を動かすことを狙ったものである。従来の中編成や特殊編成作業は編成群としての作業が前提だったが一時に多くの作業員が必要であったため必ずしもスムーズに稼働していたとは言えない側面があった。この変更により編成作業を分割して手軽に作業を行うことができるようになった。バラストスイーパーも影響を受けバラストスイーパー専任の人員を割けなくなったためブラシを手動で上げ下げする人員の代わりにボタン一つでブラシ上下を行えるように変更されるなどした。

昭和57(1982)年3月に妥結した「線路保守の改善」でマルタイによる「通り」の改善が重視されることとなった。この体制下でもバラストスイーパーは原則マルタイに付帯となったが人員が割けない場合はスイーパーの稼働なしにマルタイ作業を実施するという方針に変更になった。スイーパーを付帯させない場合はマルタイ終了後に作業を行うか別途外注作業となるため道床整理を行わないわけではなかったがそこまでしてマルタイの稼働を高めたかったことがうかがえる。同時に長らく続いた定期修繕方式も終焉となった。

 

■構造
スイーパーと呼ばれるブラシを回転させ、マクラギ上の砕石を掃き出すことで道床の整理を行う。
軌間内のマクラギ上の砕石を除去するメインスイーパーを装備するほか車種によってはレール締結部を重点的に清掃する締結部スイーパーを備えている。

△代表的な単機能型バラストスイーパー 芝浦製 BC-3G-2

・メインスイーパー
枕木方向を軸としてブラシが回転し、軌間枕木上の砕石を除去する。

・締結部スイーパー
高さ方向を軸としてブラシが回転し、レール締結部の砕石を道床肩部へ除去する。

△稼働中の締結部スイーパー

参考文献
1)石上周『中編成機械化作業実施計画』,鉄道線路,第19巻4号,日本鉄道施設協会,(1971.04)
2)椎名公一・黒田昭三『中編成機械化作業』,新線路,第24巻9号,鉄道現業社,(1970.09)
3)中野早八・白井国弘『バラストスイーパーの紹介』,施設教育,第24巻6号,鉄道日本社,(1971.06)
4)志済恵『中編成特殊編成機械化作業』,新線路,第25巻10号,鉄道現業社,(1972.10)
5)田辺健治『大編成機械化作業』,新線路,第24巻4号,鉄道現業社,(1970.04)
6)伊能忠敏『新しい線路保守体制と今後の保線』,新線路,第32巻10号,鉄道現業社,(1978.10)
7)保線研究グループ『「線路保守の改善」の保線作業 保線機械グループ』,新線路,第36巻7号,鉄道現業社,(1982.07)

脚注
1)文献1)p.19で小編成についての言及があるが他の文献では名前を見かけない。他文献では大編成、中編成、特殊編成の3つとされているので小編成=特殊編成であると思われる。
2)文献4)p.28の表-1『線区の分類』および表-2『最適機械編成』による
3)文献4)p.28の表-3『主な作業』による
4)大編成でもマルタイによる搗き固め作業は行われたが文献5)によると道床整理はバラストスイーパーではなくバラストレギュレータやコンパクターが担ったためバラストスイーパーの活躍は中編成および特殊編成のみである。