KVP-S


■概要
マルチプルタイタンパーのつき固め作業後にレールやまくらぎ上に散乱したバラストを整理するバラスト整理車。
日本ではJR東海がKVP-Sは従来のバラスト整理車の老朽置換えとして平成22年より導入を開始した。
KVP-Sでは従来のバラスト整理車に比べ道床横抵抗力を確保するためのバラスト締固めを行うための機能が変更・追加された。

 

■振動沈下装置
KVP-Sにおいて、マルタイ作業で緩んだバラストを締固めるための装置が従来のコンパクタから振動沈下装置へと変更された。
従来のコンパクタによる転圧ではバラスト表面のみが転圧され、締固めが不十分となる箇所が発生することがあった。
この対策として水平加振装置を新規に開発し、振動沈下装置に組み込んだ。
水平加振装置を使用することで振動がまくらぎを経由してバラスト全体に伝わり、バラストの沈下、締固めを均一に行うことが可能となった。


△水平加振装置 文献1)より

加振機能については沈下制御式スタビライザー(SCS)が採用された。
SCSの加振機能は軌道の高低に応じてプレロード圧を変化させる可変モードと軌道に対して一定のプレロード圧を与える固定モードの2種類がある。
可変モードは前位ボギーの傾斜計を用いたレベリングシステムで施工前の高低狂いを測定し、線形の保持、向上に必要な加振力を計算し、プレロード圧を調整する。
また、後位ボギーで施工後の高低狂いの計測も行っている。
SCSではレベリングシステムと水平加振装置の組み合わせで軌道高低狂いの残留誤差を自動的に補正することが可能とされている。
KVP-Sではこの加振装置を1台搭載している。
加振装置1台あたりの加振能力はDTS 62 Nとほぼ同等となっており、施工後の軌道保持力もDTS 62 Nで作業した場合と同等の効果が得られる。

 

■加振能力

加振周波数 30~35[Hz]
プレロード圧 40~100[kgf/cm^2]
施工速度 0.5~4.0[km/h]
スタビライザー数 1[台]

 

参考文献
1)松本竜一『新型バラスト整理車(KVP-S)を活用した軌道整備』,新線路,65巻12号,鉄道現業社,(2011.12)
2)佐藤直樹『新型バラスト整理車の加振機能を活用した定修マルタイの施行』,新線路,69巻3号,鉄道現業社,(2015.3)