78_軌陸除雪車


道路用除雪車に軌陸ユニットが装備されたものを指す。

■概要
一般的に道路用除雪車はロータリー除雪車を指す事が殆どである。
降雪初期段階において、プラウを備えた除雪トラックにおいて道路の路側に積雪を掻き分けてゆくが、路側に集められた雪はやがて高く積み上がってゆき(この状態を「雪堤」という)、雪堤を切り崩し道路の更に外側やトラックの荷台に投雪する必要が生じてくる。この際に用いられるのがロータリー除雪車であり、軌道モータカーロータリーと使用法が近似する。


ロータリー除雪車の本来の使用方法。除雪車の後方の路肩は雪堤が片付けられたため幅員が拡がっている。

除雪作業以外に用いるのが困難な自動車であるため、道路運送車両法においては「特殊自動車」に分類され、そのほとんどが道路交通法における「大型特殊自動車」である。いわゆる建設機械と見做される場合が多く、ロータリー除雪車の細分類は車両定格出力毎のものが一般的である。

■ロータリー除雪車のメーカー

70年代までに日本除雪機製作所→NICHIJO、新潟鐵工所→新潟トランシス、東洋運搬機→TCMの3社におおむね集約されこの体制が長らく続いてきたが、2010年代にTCMが撤退し、現在の2社体制となる。
この他開発工建が60kw(80ps)級のみ生産を続けているが、先述の2社ほどのシェアは獲得していない様である。

■ロータリー除雪車の細分類

「建設機械等損料表」より一部抜粋し下記表に示す。

細分類 NICHIJO 新潟トランシス その他メーカー
290kw(400ps)級 HTR400級 NR400級 JR300級(旧TCM)
220kw(300ps)級 HTR300級 NR300級
75kw(100ps)級 KBR100級 NR100級
60kw(80ps)級 HTR80級 NR80級 HK130級(開発工建)
上記より小型 HTR50級 等 NR40級 等

■ロータリー除雪車の構造
Category:02 軌道モータカーロータリーと装備が共通するものは割愛する。
<前面>

<シュート展開時>

<後面>

<運転室内>


・除雪装置…先述の通り軌道モータカーロータリーと同じ構造。但しフランジャーは装備されていない。
・掻き寄せ翼…鉄道除雪のみ用いられる装備。本来除雪車には装備されていない。
・牽引装置…軌道モータカーロータリーでも付属装備として見られるもので、自走不能の際には除雪装置内につっぱり棒状に取付し牽引装置として使用する。
・ナンバープレート…大型特殊自動車なので「9」ナンバーである。なお道路運送車両法施行規則第七条によりナンバープレートの掲示は後面のみでよい。
・軌陸ユニット…油圧により昇降操作が可能。鉄輪自体に動力は無く、本来装備のタイヤをレール面に接地させる事で推進する。
・運転室内…一般的な自動車とは異なり左ハンドルである。(本来は路肩の除雪に用いるためドライバーに路肩を視認させる必要がある。)助手席側に除雪装置各部の操作レバーが設置されている。

■載線の様子

富士山麓電気鉄道「作業用車撮影会・見学ツアー」にて撮影。
踏切上などに自走して移動した後、前後に装備された軌陸ユニットを降下させ載線する。
富士山麓電気鉄道の場合、運転席から軌陸ユニットが載線できたか確認できないため、載線確認を線路上の作業員の目視で行うとの事。

参考文献
1)日本建設機械施工協会『建設機械等損料表 令和3年度版』(2021)