40.65


■導入の背景
レール溶接部の凹凸を列車が通過する際の衝撃がレール底部に疲労として蓄積されることでレール底部が破断に至る。それを防ぐために行われるのが通トンレール交換である。JR東日本では当初6億トンを通トンレールの交換基準として定めていたが、研究の結果敷設から定期的にレール削正を実施した場合は8億トンまで寿命を延伸できるとして現在では8億トンを交換基準としている。

既に交換が終わっていた東京-大宮間に続いて交換期限を迎えるのは東北新幹線の大宮-郡山間であった。延伸された8億トンの基準に達して交換となるのは2021年度であったが各年度の施工延長を平準化するために2017年度より前倒しで実施する計画となった。このレール交換作業を実施するために保守基地の整備とともに導入されたのがREXS編成である。

 

■REXSについて
新幹線レール交換システム、通称REXSとは新幹線の通トンレール交換工事に於けるレールの積込・運搬・取卸・溶接・交換といったレール交換に関わる一連の作業をできるシステムを指す。編成としてはモータカー、レール運搬車、レール積卸車、フラッシュバット溶接車から構成されるがこの項ではREXS編成中のROBEL社製のレール積卸車及びレール運搬車について取り扱う。
なお、REXSは「Rail EXchange System」の頭文字を取ったものであるが、「SREXS」となっていない(Shinkansenの頭文字がない)ことからもわかるようにREXS自体がROBEL社の製品の名称をそのまま使用している。

REXS編成導入により以下の通り、大幅な効率化が実現している。

作業項目 従来作業 REXS 比較
運搬 75[m]×最大10本=750[m] 150[m]×最大20本=3,000[m]  従来の約4倍の輸送力
溶接 ガス圧接溶接(人力)
1口あたり約40分
フラッシュバット溶接
1口あたり約6分
従来の約1/7の時間
交換 レールの長さに応じて作業員を配置 レールの長さに関わらず一定の作業員で交換 従来の約50%減
(750[m]交換する場合)

 

■レール積卸車の概要

△レール積卸車
レール積卸車はレールマニピュレータ(後述)及びレール交換器(後述)を搭載しており、レール積卸作業及びレール交換作業時には自走で作業が可能な構造となっている。そのためレール交換作業時にはレール交換器の牽引車として使用することもできる。
また、レール取卸し・積込作業時には車体側面に装備されたサイドマニピュレータを使用し、車上から地上の仮受け台へ、また地上の仮受け台から車上へとレール誘導を行うことができる。

△サイドマニピュレータ

 

■レール積卸車の動力
機関出力480[kW]のDEUTZ社製水冷8気筒ディーゼルエンジンを1基搭載している。前述の通りレール交換作業時のレール交換器の牽引時に使用するほか、モータカー(PCU)のエンジントラブル時にはフラッシュバット溶接車の480[kW]エンジンとともに編成を駆動する動力としても使用する。

 

■レール積卸車の制動装置
エアブレーキが採用されており直通ブレーキの圧力は0.38[MPa]に設定されている。
貫通ブレーキにはKEバルブが使用されており圧力の設定は0.5[MPa]である。

 

■レール積卸車の主要諸元

名称 レール積卸車
型式 40.65-RW-0001
全長 20,000[mm]
全幅 2,750[mm]
全高 3,092[mm]
自重 60.00[t]
エンジン 4サイクルディーゼルエンジン
エンジン型式 DEUTZ水冷8気筒 TCD2015V8
エンジン出力 480[kW]/1,900[rpm]
機関排気量 15.9[L]
機関出力 480[kW]

 

■レールマニピュレータ

△レールマニピュレータ
レール運搬車からレール積卸車まで連続敷設された専用レール上を自走するレール取扱機械である。
通常はレール積卸車上に固定されていて1.5[t]の重量物の積卸が可能なアームを2[本]有し主にレールやレール交換器の積卸に使用する。また旋回可能な構造であるため逆方向への機材の積卸も可能となっている。

△レールやレール交換器の積卸を行うアーム

 

■レール交換器
レール積卸車に搭載された当装置はT-REX1およびT-REX2の2[台]のトロリーから構成されている。

△レール交換器。参考文献1)より
レール積卸車側のT-REX1は古レール上を走行しガイドヘッドで更換レールをレール敷設位置へガイドする。一方T-REX2は更換レール上を走行しガイドヘッドでを外側のレール仮受台上へと導き交換をしていく。

△レール更換のイメージ。参考文献1)より

 

■レール運搬車の概要
レール運搬車はレールストッパを有するレール固定車2[両]とレール運搬車7[両]の計9[両]で組成されており、150[m]の60[kg]レールを最大で20[本]積載可能となっている。

 

■参考文献
1)萩尾 泰弘『新幹線レール交換システムの概要及び各機械の走行装置並びに作業装置等の解説』,日本鉄道施設協会誌2018年9月号,日本鉄道施設協会

2)平賀 有『東北新幹線における通トンレール交換工事』,日本鉄道施設協会誌2017年7月号,日本鉄道施設協会

3)吉田 謙一『新幹線の通トンによるレール交換基準の考え方』,新線路第57巻12号,鉄道現業社(2003.12)

4)坂本 洋介『なぜ通トンレール交換を実施するのか』,新線路第68巻12号,鉄道現業社(2014.12)

5)東鉄工業株式会社『新幹線レール交換システム(REXS)によるレール交換作業』
https://www.totetsu.co.jp/service/senro/tech/tech_01.html (2022.12.04)


レール運搬車

レール積卸車