保守用車の銘板位置

■はじめに
製造メーカーや個車、使用用途を特定するために車両に付けられている銘板は大切な手掛かりとなる。
ただ残念なことに銘板の形式・取付位置等に規格はなく製造メーカー毎に異なるため銘板が撮影できる状態にあるにもかかわらず銘板に気づかず撮影が漏れてしまうということは意外に多い。

このコラムでは主要保守用車製造メーカーの銘板の形式及び代表的な取付位置について解説する。

なお、解説中で銘板位置を説明するため「前位側/後位側」「1位側/3位側」といった表現を用いている。これは車両の前後左右を示すものであるが詳しくはコラムの保守用車の向きと構成要素を参照のこと。

■各社の銘板形式及び代表的な取付位置
各社の銘板がどういったものかと代表的な取付位置について保守用車製造メーカー大手を中心に解説していく。車両全体画像の赤枠で囲った部分に銘板が取付られている。合わせて撮影の参考にされたい。

・富士重工業
日本を代表する保守用車製造メーカーだった富士重工業の銘板。
保守用車の製造は2003年に新潟トランシスに引き継がれて終了しているが、今なお各地で同社の保守用車の姿が見られる。

△古いタイプの銘板(TMC200B)
△新しいタイプ(TMC501E)

銘板は黒地の四角形で、上から車種、型式、製造番号、製造年月の情報が取得できる。
銘板の様式は年代によって若干の差異が見られるが基本的には内容は同一である。

銘板の位置は基本2-4位側にあり、車体中央に運転室がある車両は2-4位側車体側面中央、箱型形状の車両は2位側車体側面となる。

・新潟鐵工所
長くモータカーロータリーの製造をほぼ一手に引き受けてきた新潟鐵工所の銘板。

△新潟鐵工所の銘板(MCR-4A)

銘板は黒地の横長の四角形で、上から車種、形式と製造年月、製造番号の情報が取得できる。

銘板は1-3位側、2-4位側両側の車体側面運転室下部に取り付けられている。

・新潟トランシス
富士重工業から事業を引き継いだ保守用車製造大手の新潟トランシス。

△新潟トランシスの銘板(MCR-600A)

銘板は黒地の横長の四角形で、上から車種、形式と製造年月、製造番号の情報が取得できる。前身の新潟鐵工所の銘板様式を踏襲している。

銘板位置は機関室があるタイプは4位側、車体が箱型形状のものは2位側の車体側面と概ね富士重工業の様式を踏襲している。

・松山重車輌工業
MJKのロゴでおなじみの同社の製品。地域を問わず日本の広い範囲で見ることができる。

△松山重車輌工業の銘板(MJK-MR1527)

銘板は黒地の四角形で、上から車種、型式と製造年月、製造番号と自重の情報が取得できる。トロにつけられた銘板は大きさが一回り小さいこともあるが内容に変わりはない。

銘板位置は機関室が運転室と別体の構造のモータカーは1位側の機関室側面の扉に取り付けられていることが多い。また検測車など箱型一体形状のものは車体側面の運転席下部付近につけられていることが多いようである。

△小型の松山重車輌の銘板。所謂”MJKフォント”の「マツヤマ」の代わりにMJKのロゴが入っている新しいタイプ(MC0454)

・堀川工機
地下鉄を中心に根強い人気を誇る堀川工機。

△堀川工機の銘板(WD-H20CATDW)

楕円形の臙脂色の銘板という他社とは全く異なる銘板を備えている。製造番号、型式、納入年月の情報が取得できる。車両によっては走行性能銘板も備えていて、機関番号の欄を見るとエンジンの型式がわかるようになっている。

銘板の位置は小型モータカーでは1位側の車体側面にあることが多い。大型の軌道モータカーや電気作業車などでは3位側にあることが多いようである。

・小松製作所
道床整理機構を備えた軌道モータカーなど他社とは異なるラインナップを誇った小松製作所。
同社は残念ながら鉄道分野から撤退してしまったが製品は今なお各地で見られる。

銘板でよく見られるタイプは2種類ある。

一つ目の銘板上記のような黒地の四角形で、上から型式、製造年月、製造番号と自重の情報が取得できる。形式は松山重車輌工業のものに準じており同社との関連を匂わせるものである。バラスト作業車のGR205-1やGT240-1がこのタイプの銘板である。

もう一つが英語書式のもので、型式、シリアル番号、製造年月、質量、エンジン出力の項目がある。同社のGR175シリーズ、GR160-1のほか軌陸車もこちらのタイプの銘板を備えている。

銘板の位置は1-3位側車体側面中央にある。

・北陸重機工業
JR東海の標準型軌道モータカーの地位を確立し着々と数を増やしている同社のモータカー。

銘板は性能銘板と一体型になったものとなっている。

銘板は第4位側車体側面に取り付けられている。

△銘板位置は第4位側

 

・三菱重工業
確認車GA-100で知られる三菱重工業。
確認車以外にも軌道モータカーや電気・土木の作業車を製造している。

同社の銘板はいくつか種類があるのだが標準型ともいえるのが以下のタイプである。

△標準的な形式を持つ架線延線車の銘板

電気作業車・土木作業車のほか、軌道モータカー(表記は英語となるが)もこの形式のものを備えている。

もう一点挙げるとするとGA-100につけられているタイプである。こちらはGA-100専用となる。

△GA-100の銘板。走行性能についても書かれている。

銘板位置は2位側車体側面で、車両によっては若干4位側に寄ったものもある。

・NICHIJO(日本除雪機製作所)
本業の強みを生かした除雪車に加えて多様な製品を供給しているNICHIJO。

△NICHIJOのロータリー除雪車HTR600Rの銘板

銘板は四角形で機械型式、車台番号、製造番号、製造年月の情報が取得できる。また、最近のもので車台番号の項目が省略されたタイプの銘板が確認されている。

△銘板は2位側

銘板位置は2位側にあるものが多い。

・Plasser&Theurer
言わずと知れたオーストリアの大手保守用車製造メーカー。

△Plasser&Theurerの銘板(Unima4)

銘板は黒地の四角形で製造年、製造番号、型式の情報が取得できる。

銘板は3位側にある。なお、マルチプルタイタンパなどでマテリアルワゴンが付くタイプがあるが銘板がマテリアルワゴンに付くということはない。

・SPENO INTERNATIONAL
レール削正車で圧倒的なシェアを誇るスイスの大手保守用車製造メーカー。

△SPENOの銘板(RR24M-32)

銘板は四角形で製造番号、製造年、重量、型式、積載重量の情報が取得できる。

記載されている編成全体の銘板の他に車両単体の銘板も貼られている。

△編成全体の銘板とA車(WAG. A)の銘板が並んで貼られている

型式(MACHINE MODEL)のところに「WAG. A / WAG. B / WAG. C1 / WAG. C2」とあるのは車両単体の銘板になる。撮影したのが編成銘板であることを撮影時に確認することをおすすめしたい。

A車及びB車の車両銘板の脇に編成銘板が別途備わっている。

 

以上、駆け足で主要各社の銘板形式及び銘板取付位置について紹介した。

撮影時の銘板回収の一助となれば幸いである。