画像:第1世代目のMCR-4改・道床交換作業車
松枝 裕「道床交換機『アンダーカッター』の開発」『JREA』34巻10号,1991年,pp.45-48.より
本項では長谷川工作所とJR北海道が1990年代に開発していた、MCR-4を改造した道床交換作業車について解説する。
■1世代目
第1世代目MCR-4改の概要図
後部のウインチは記載されていない。
松枝 裕「道床更換機『アンダーカッター』の開発」『新線路』45巻7号,1991年,pp.22-23.より
JR北海道では道床交換作業を人力や小型掘削機などで行っていたが、機械使用の場合でも枕木の抜き取りや、機械を挿入するための空間を人力で掘削する必要があるなど手間が掛かっていた。そこで当時登場し始めていた、人力作業なしに使用できるアンダーカッター方式の道床交換作業車を開発することとなった1)。
1世代目は1990~1991年頃に、モータカーロータリー(MCR-4)のアタッチメントとして開発された。MCR-4は走行用とロータリー除雪装置用の2つのエンジンを持つが、夏季はロータリー装置を外すため、除雪装置用エンジンは遊休状態であった。そこで、ロータリー装置と同様に取り外し式のアンダーカッターを開発し、夏季にMCR-4を道床交換作業車として活用することにした2)。
第1世代目のMCR-4改
アンダーカッターを引き上げた回送状態の写真。
松枝 裕「道床交換機『アンダーカッター』の開発」『JREA』34巻10号,1991年,pp.45-48.より
アンダーカッターはチェーンソーのような形状のスクレイパーチェーンであり、作業時はこれを線路の側面からマクラギ下へ挿入してバラストを掻き出す。掻き出されたバラストはアンダーカッターの上部へ運ばれ、そこからシュートへと落とされて線路外へ排出される。作業走行はレールに接地したワイヤーを巻き取る方式であり、ウインチがMCR-4の後方に搭載されている。諸元は以下の通り3)。
全長 | 作業時7700[mm]、回送時10800[mm] |
全幅 | 作業時4300[mm]、回送時2800[mm] |
全高 | 作業時3150[mm]、回送時3800[mm] |
アンダーカッター部重量 | 4.6[t] |
掘削深さ(マクラギ下面より) | 250[mm] |
アンダーカッター作動用エンジン | MCR除雪用 いすゞBMA1 260[PS]/2000[rpm] |
■2世代目
第2世代目MCR-4改と篩い分け機の概要図
米山 尚喜「機械施工による道床更換作業」『新線路』47巻6号,1993年,pp.8-11.より
その後、1993年頃に開発された2世代目は、アタッチメントではなくMCR-4を改造した道床交換作業専用機となった。キャブの高さが切り詰められた外観が特徴的である(この改造の意図は不明)。また2世代目では、道床篩い分け機が連結されるようになった。アンダーカッターから排出されたバラストは篩い分け機に運ばれ、再使用可能なものと廃棄するものに選別される。諸元は以下の通り4)。
【MCR-4改】
全長 | 作業時9070[mm]、回送時11570[mm] |
全幅 | 作業時3900[mm]、回送時2850[mm] |
全高 | 作業時3140[mm]、回送時3940[mm] |
自重 | 19[t] |
掘削深さ(マクラギ下面より) | 250[mm] |
作業性能 | 70[m/h] |
エンジン | いすゞ10PBI 260[PS]/2400[rpm] |
【篩い分け機】
全長 | 8405[mm] |
全幅 | 作業時4400[mm]、回送時2200[mm] |
全高 | 3200[mm] |
自重 | 6[t] |
最大通過砕石 | 25[mm] |
作業性能 | 乾燥時70[m/h]、雨天時50[m/h] |
これらMCR-4改造の道床交換作業車は、日本国内でアンダーカッターを採用した例として比較的初期のものであったが、どれほど普及・使用実績があったかは不明である。なお1世代目・2世代目ともに、同じく長谷川工作所が製造しJR北海道が使用していた、モータカー取り付け型の鼻バラスト除去装置や、バラスト掻き入れ・掻き出し装置車と共に使用されていた5)。
■文献
1)松枝 裕「道床交換機『アンダーカッター』の開発」『JREA』34巻10号,1991年,pp.45-48.
2)松枝,前掲1.
3)松枝,前掲1.
4)米山 尚喜「道床交換の機械施工」『日本鉄道施設協会誌』31巻8号,1993年,pp.24-27.
5)松枝,前掲1.米山,前掲4.