△アイキャッチ画像は許可を得て片山吉信様所蔵写真を掲載しています。
■概要
マルタイの後作業の省人化を目的として開発されたバラストスイーパである。
タンパ装置、スイーパ装置、コンパクタ装置など多様な装置を備えている。
■開発の経緯
マルタイの後作業はマルタイ牽引のバラストスイーパーを使用するのが標準であるが、スイーパにはバラストの掻き込み、掻き出し能力はない。また、マルタイでの搗き固め不能箇所はタイタンパ作業を行い施工箇所によってはエンジン付きコンパクタによる道床締固めが必要となる。そのためスイーパで行えない作業のための要員として常に10名ほどが必要であった。
平成6(1994)年より後作業の要員を半分以下にすることをコンセプトに機械の開発が行われてきたが多機能化及び自動化の要求により高価で大型なものとなってしまっていた。こうした現状を踏まえて低廉でコンパクトな機械を開発することとなった。なお開発に携わった大鉄工業では当型式をバラストスイーパタイプTと呼称する。
■主要構造
前方からタンパ装置・運転席・障害物検出装置・制御盤・車輪・車軸・コンベア付きスイーパ装置・エンジンユニット・コンパクタ装置・車軸駆動装置・制動装置・油圧ユニット・発電機・照明灯等で構成されている。

・駆動装置
油圧モータ駆動で0~5[km/h]の範囲で走行が可能となっている。
・タンパ装置
4組の独立したタンパユニットから構成されアンバランスウエイト方式の520[W]電動モータで起振される。1組のタンパのみを使用しての搗き固めも可能でマルタイの搗き固め不能箇所対応にも適している。

・コンベア付きスイーパ装置
台枠中央部に装備され回転ブラシ機構・ベルトコンベヤ装置で構成されている。ブラシ回転数は油圧の流量調整により0~150[rpm]の範囲で調整することができる。ベルトコンベアはスイーパ装置と一体構造で軌間内の余剰バラストを回転ブラシで掻き上げてコンベアで軌間外へと排出する。

・コンパクタ装置
マクラギ両端部のバラストを転圧するもので振動モータ・転圧用プレートで構成されている。振動モータはアンバランスウエイト方式の400[W]電動モータを使用しており任意に加振力を調整できる。

なお、後述の通り軌間内コンパクタを備えた個体が存在する。
・安全装置
台枠前部に接触式センサー及びカラーセンサーを設け軌間内外の障害物を検知するとスイーパ装置・コンパクタ装置は自動的に上昇する。
■バリエーション
MTCは全部で9両が製造されたが、個体により仕様の差異が生じている。
そのうち2,3,4号機は北陸仕様の位置づけでオクノエンジニアリング製の軌間内・肩コンパクタを装備している。

5,7号機はのり面コンパクタを装備している。

またキャビンについては9号機は当初から、また後付けされたものもあったようである。
■主要諸元
寸法・重量 | |
全長 | 約7,400[mm] |
全幅 | 約2,700[mm] |
全高 | 約2,380[mm] |
車輪径 | 500[mm] |
重量 | 約10[ton] |
作業性能 | |
自走最高速度 | 5[km/h] |
被牽引速度 | 30[km/h] |
タンピング能力 | マクラギ1本あたり約1分 |
作業性能 | 0.5~1.0[km/h] |
ブラシ回転数 | 0~150[rpm] |
コンパクタ性能 | 0.5~1.0[km/h] |
自走登坂能力 | 35/1000 |
主要機器 | |
ディーゼルエンジン | 水冷4サイクルターボ付き 2,953[cc] |
定格出力 | 79[PS]/2,000[rpm] |
燃料タンク | 100[L] |
三相交流発電機 | 5[kVA] |
油圧ポンプ | 可変容量型ピストンポンプ2台 歯車型ダブルポンプ1台 |
油圧モータ | オービットモータ(走行用1台、ブラシ回転用1台) |
作動油タンク | 250[L] |
電動モータ | タンパモータ4台 コンベアモータ1台 コンパクタモータ2台 |
参考文献
1)田井中俊治・平居竜也『バラストスイーパ タイプTの開発』,新線路,第54巻10号,鉄道現業社,(2000.10)
2)片山吉信氏の談話による
3)松田務『第二部『トワイライトゾ~ンMANUAL5~7・9』作業機械-拙稿への補遺』,トトワイライトゾ~ンMANUAL : 全国鉄道面白謎探検 10,ネコ・パブリッシング,(2001.10)