△アイキャッチ画像は撮影者の梶山正文様の許可を得て掲載しています。
■概要
機関車の代わりに地固め試運転を行う目的で製作された軌道地固め機械の試作機でモータカーに牽引されて使用される。
試験結果をもとに自走式のKR100が製作された。
■試作機の概略
昭和48(1973)年度の振動式地固め機械の開発にあたり従前の試験結果(フラット車輪を用いた軌道モータカー及び振動ローラによる試験)を総合的に検討し試作機の概略を以下の通りとした。
1)軽量、小型で最大の効果を得るため振動式の構造とする
2)軌道に対する横圧を防ぐため振動輪の踏面をフラットとし、フランジを設けない
3)振動力を安定させるため振動輪の前後に案内輪を設けて台車形式とする
4)軌道構造に適した振動力を与えるため振動力を調整できる変換装置を設ける
5)騒音、振動を逓減するため台車と振動輪軸は防振ゴムを介して取り付けする
6)作業以外に長距離走行を行う場合は振動輪を扛上させ台車に締結させる装置を備える
7)手動式の簡易横取装置、および駐車ブレーキを備える
8)試作1号機は当面試験機的な構造とし被牽引式とする
以上を基本方針として開発を進め昭和49(1974)年2月に当形式が完成した。機械番号は土軌振-1となった。

■主要諸元
主な諸元は以下の通り。
最高被牽引速度 [km/h] |
作業時 | 10 | |
回送時 | 45 | ||
最小被牽引力[t] | 0.3(勾配35/1,000に於いて) | ||
機関 | 形式 | 4サイクル空冷直列3気筒ディーゼル機関 | |
定格出力[PS/rpm] | 44/2,000 | ||
最大トルク[kgm/rpm] | 13.6/1,600 | ||
起振機 | 形式 | 起振力可変形1軸偏心式 | |
起振力[kg] | 1,000~5,0001) | ||
振動数[cpm] | 1,100~2,000 | ||
ブレーキ | 形式 | 手動式ディスクブレーキ駐車用 | |
制動能力 | 35/1,000 | ||
蓄電池容量 | 2×12[V]×120[AH](JIS D5301) |
外形 | 全長[mm] | 3,675 |
全幅[mm] | 2,140 | |
全高[mm] | 1,545 | |
輪軸 | 軸距[mm] | 2,300 |
車輪径[mm] | 660 | |
横取車輪中心間隔[mm] | 1,500 |
項目 | 作業時 | 回送時 |
前輪[kg] | 1,840 | 3,850 |
後輪[kg] | 1,460 | 3,470 |
振動輪[kg] | 4,020 | |
総重量[kg] | 7,320 |
■機関車との比較試験
昭和49(1974)年3月に武蔵野操車場にてDE11形ディーゼル機関車及びフラット車輪の軌道モータカーとの地固め能力の比較試験が行われた。
比較試験はDE11は時速15[km/h]、35[km/h]、45[km/h]でそれぞれ1往復ずつ(計3往復)、軌道モータカーは25[km/h]で6往復、KR50は2[km/h]で3往復、下りの留置線を走行してレール面の沈下量をそれぞれ計測した。
平均沈下量はDE11は3.95[mm]、軌道モータカーは3.81[mm]、KR50は8.29[mm]と、機関車に対して2倍以上の効果があることが明らかになった。また、各車とも通り狂いや締結ボルトの緩みはみられなかった。
■走行速度、振動数と沈下量の関係
昭和49(1974)年9月に走行速度、振動数と沈下量の関係を調べる試験が行われた。試験により以下のことがわかった。
・起振力5[t]で5[km/h]及び10[km/h]で走行した場合、振動数1,400[cpm(Cycle per Minute)]の時は速度が速い方が沈下量が大きかったが1,700[cpm]の時は遅い方が大きかった。
・起振力5[t]で5[km/h]で走行した場合、振動数1,400[cpm]と1,700[cpm]を比較すると1,700[cpm]の時の方が沈下量が大きかった。
■地固め機械使用後に機関車を走行させた場合の沈下量
3回目の試験は昭和50{1975)年1月にKR50を走行させた箇所及び走行させていない箇所をDE11で走行して沈下量を比較するという形で行われた。
結果使用した箇所では0.9[mm]、使用していない箇所では3.8[mm]と明らかな差が出ており振動式地固め機械の効果が確認された。
その後試験を繰り返して実用化の目処が立ったため自走式の振動式地固め機械であるKR100の開発が行われることとなった。
当機械が完成したことにより軌道整備と並行して軌道地固めができるようになり、施設側が希望する回数だけ自由に地固めが可能となり非常に便利になった。
■KR50のその後
自走式のKR100が完成し試作機としての役目を果たした当型式であるがすぐに解体されることなく引き続き地固め試運転で使用されたようである。
製造から8年後の昭和57(1982)年に東北新幹線の東鷲宮保守基地建設現場で留置されている姿が確認されている。状況から東鷲宮保守基地の地固め試運転に投入されたものと推測される。
脚注
1)文献2)。起振力は8[t]程度までは増大可能であるが、機械自体の寿命等を考慮して5[t]が最適との判断となった。
参考文献
1)五十嵐伊三郎『振動式軌道地固め機械』,鉄道土木,第17巻11号,日本鉄道施設協会,(1975.11)
2)『軌道地固め機の試運転が実施された』,新線路,第28巻4号,鉄道現業社,(1974.04)