△BAM-α3号車。片山吉信様の許可を得て掲載。
■概要
マルタイ作業後の道床整理作業に使用するバラスト処理機で、マルタイによる搗き固めと扛上により不足したバラストを軌間外から軌間内へと補充する装置、マクラギ上及び締結装置上、レール底部に飛散したバラストを清掃し、清掃後の余剰バラストを軌間外に排出する機能を持っている。２号車以降に締固め機能、3号車以降に搗き固め機能が追加となった。
ニッチはレールジャッキメーカーであるが、そのニッチが車体、芝浦製作所がツール部分を製作し、東進産業は商社機能を担っていた1)。
■開発の狙い
当形式が開発された1990年代に於いて年間を通じて投入される人工が最も多い保線作業が道床バラスト整理等のマルタイ手元作業であり、この部分の機械化は効果が非常に高いことが見込まれる状況であった。これを踏まえ経費削減と省人化を進めるため機械装置そのものを見直しマルタイ施工後作業の改善を図ることとなった。
バラストスイーパで整理した後、約12名程度の要員で整理を行っていた。軌間内の不足バラストを人力で入れる作業の他、マルタイの搗き固め不能箇所を4～5名でハンドタイタンパを用いて施工しているが施主側から精度改善を求められていた。要員の大幅な削減及び搗き固めの精度向上を図るための機械力の導入となった。
■基本構造
1号車のバラスト整理機構は以下の図のようになっている。
前位側から
1)掻き寄せブラシ・・・軌間外の道床肩寄りのバラストをレール近くまで送り込むブラシ
2)掻き入れブラシ・・・軌間外のレール近くのバラストを不足している軌間内に送り込むブラシ
3)搔き出しブラシ・・・レール内側域に中すかしを形成するためのブラシ。中すかしとは列車走行時の風圧でバラストが飛散しないようにバラストをマクラギ上面より所定寸法掘り下げた状態を言う。
5)締結部分清掃ブラシ・・・締結装置付近のバラストを清掃するためのブラシ
6)簡易スイーパ・・・マクラギ上面に残ったバラストを清掃するためのブラシ
が配置されている。
基本機能としては上記の通りで、号車によってコンパクタや自走、搗き固めといった機能が付加されている。
■各号車
5台が製造されたが各号車は見た目が大きく異なっている。
・1号車
1995(平成7)年頃に製作された試作機で上図が示す通りの3分割の車体と市販の多頭タンパの構成で使用されていた。１号車は牽引前提の構成で自走することはできないが踏切より離載線を行うことができた1)。
・2号車
1997(平成9)年2月に製造された2)。当形式の投稿は2024年7月現在ないが、銘板情報を読み取ったとみられる文献情報により「BAM-α」としている2)。
車両は
1)障害物検知器2)
2)掻き寄せブラシ2)
3)掻き込みブラシ2)
4)搔き出しブラシ2)
5)締結装置用スイーパ2)
6)全面用スイーパ2)
7)道床肩部用ローラー式コンパクタ2)
といったツールが備わっている2)。車体は三東製の2軸ボギー台車の上に載っていて2つの台車のうち後部ボギー台車はチェーン駆動することで現場での作業は自走で行えるようになっている2)。
(作業現場まではマルタイ等に連結して移動する)
各作業装置の動力は車体後部に備えられた内燃発電機により供給される。
・3号車
1998(平成10)年頃に製造されたもので車体中央前位寄りにタンピングユニットが備わっている。
また道床肩の余盛に合わせてコンパクタローラにテーパーがつけられている1)。
・4号車
1999(平成11)年頃に製造されたもので3号車にあったタンピングユニットが車体前位側に移動している。
■後継機
後作業要員を半分以下にするという目的で開発された当形式であるが多くの機能と運転操作の自動化を求めたことで高価で大型の機械となっていた。後継機には低廉でコンパクトなものが求められた結果芝浦エレテックにてMTC-1Aが開発されることとなった。
脚注
1)片山吉信氏の談話による
2)文献3) p.225
参考文献
1)株式会社ニッチ『バラスト整理機』, 特開平11-050404
2)片山吉信氏の談話による
3)松田務『第二部『トワイライトゾ～ンMANUAL５～７・９』作業機械-拙稿への補遺』,トワイライトゾ～ンMANUAL : 全国鉄道面白謎探検 10,ネコ・パブリッシング,(2001.10)
4)手塚稔『マルタイ作業後の「道床バラスト整理機」の改良』,新線路,第50巻9号,鉄道現業社,(1996.09)
5)中野昌平・片山吉信・西海絢司『新たなバラストスイーパの開発』,新線路,第64巻3号,鉄道現業社,(2010.03)
6)田井中俊治・平居竜也『バラストスイーパ タイプTの開発』,新線路,第54巻10号,鉄道現業社,(2000.10)