概要
オンレール側雪処理車は、1966年に鉄道技術研究所が研究・開発、新潟鐵工所が製作した除雪機械である。
当時、キマロキ編成の代替としてDD14形式ディーゼル機関車の量産が進められていたが、保線区にて扱うことができる保守用車としてこれに匹敵する除雪能力を有する本車両の開発が行われた。
オンレール側雪処理車は、牽引車と作業車の2両1編成から成る。牽引車は油圧駆動により走行し、前部には車幅分の線路内積雪を排除するための前頭ロータリーが設けられている。作業車の前部にはレール面上80 cm以上の部分を幅6 mまで除雪する段切り翼が設けられ、中央部には側雪を排除するための主筒形ロータリーが設けられている。主筒形ロータリーは左右に4.5 m張り出し、側雪を排除することが可能である。
▲ オンレール側雪処理車の牽引車。前部に前頭ロータリーを装備する。
▲ オンレール側雪処理車の作業車。前部に段切り翼、中央部に主筒形ロータリーを装備する。
本車両のロータリー除雪装置には、鉄研式と呼ばれる方式が採用されている。これは以前に国鉄と新潟鐵工所にてMC形モータカーロータリーを開発した際に採用されたバイルハック形ロータリーの改良版と言えるものである。
一般にロータリー除雪装置の処理量を増すとき、投雪速度を高めようとすると処理量あたりの馬力が2乗に比例して増加してしまうため、これは避けたい。そこで、奥行の長い筒形のケーシングを採用することで多量の雪を呑み込むことができるようにした鉄研式ロータリーが開発された。投雪翼には筒形ケーシングに対応した先細翼が採用された。この鉄研式ロータリーの性能は非常に良好で、その効率は現在主流となっているロルバ形ロータリーの2倍に匹敵する。
DD14形式にせよモータカーロータリーにせよ従来方式の除雪車は、側雪を線路内にかき寄せるようになっている。このため、雪が圧縮変形され、その流動性が悪くなりがちである。そこで、オンレール側雪処理機では、ロータリー除雪装置を左右に張り出す方式が採用されている。
しかし、側雪があまりに高い場合、ロータリー除雪装置を張り出すことが不可能となるため、左右に張り出すことができる段切り翼が設けられている。
線路の片方に多量の雪があり、もう片方は雪が少ないといった場合に除雪をしようとすると、車両に加わる左右方向の外力は不均衡なものとなる。そこで、段切り翼にはバランス翼と呼ばれるくさび形の除雪翼が採用された。これは、一枚の翼は側雪を横方向に移動させ、もう一枚の翼は反力を側雪の壁に押し付けるというものである。
鉄研式ロータリーの開発やオンレール側雪処理機の開発は、1964年頃から1966年にかけて行われ、落成後の性能試験は只見線と陸羽東線で実施された。結果、低速段で3,500 t/hの投雪が可能であり、高さ3.5 m程度までの側雪を拡幅することができた。作業速度の点についても従来より高速で運行することができ、軽い新雪に対しては30 km/h以上での除雪走行も可能とされた。
オンレール側雪処理車は、5編成が製作され、長野局2編成、仙台局2編成、旭川局1編成が存在したとされる。本車両はその高性能さから「万能モータカー」と呼ばれ、略して「BANMO」という愛称も付けられていた。しかし、これ以上に量産されることはなく、後継車も開発されることなく1970年代後半頃までに引退したものと思われる。
現在、飯山線で活躍した製造番号1「おくしなの」が長野市立城山小学校に保存展示されており、その独特の姿を目にすることができる。
メーカ
参考文献
1)中村林次郎,『6.除雪機械の研究』, 鉄道技術研究所講演会(1966年11月18日開催)資料(長岡技術科学大学付属図書館所蔵)
2)石橋孝夫,『鉄道に於けるロータリー除雪の高速化』, 建設機械, 4巻2号, 建設機械編集委員会, 1968年2月
3)関野邦夫,『記念キップで見る鉄道図鑑』, 池田書店, 1974年