■概要
当車両は、JR西日本とNESCOが電柱建植作業の機械化を目指し
軌陸トラックにラフタークレーンを架装、ブーム先端にハンドリングユニットを装備した電柱ハンドリング車として
生産性と安全性の向上を図る一環で2013年に開発が着手された。
従来の電柱建替作業は、軌陸クレーン車を使用してブームを長く伸ばし、ワイヤーで電柱を吊り下げる方式だった事が理由で
ブームとワイヤーの旋回領域に支障してくる上空の電線を、梯子及び架線作業車等を使用し事前に電線を移設するなどの下準備が必要で、それに大きな労力がかかっていた。
これを踏まえ、今後の電柱建て替え作業の省力化を実現するためには当車両が必要とされ、クレーンメーカーと共同で開発された。
実践デビューは2018年6月16日、JR西日本、奈良線宇治構内で初めて電柱ハンドリング車を使用した電柱建替作業が行われ、無事に施行を完了した。
■作業方法・各種仕様
当車両の主な装置配置は上の通りとなる (梶渡広人様撮影写真を使用)
何より特徴は、新規開発されたクレーンの先端についている
“把持装置”(アーム)である。これは電柱を従来のように吊るのではなく、掴めることにある
電柱建替作業の流れは以下の通りで、従来の作業と比べて圧倒的に作業支障区域が少なく、作業も非常に効率化されている。
日本鉄道電気技術協会「電車線線路技術Q&A」 p.34図10より引用
実際の作業写真を見ると、電柱を掴んでいる所がよくわかる (梶渡広人様撮影写真を使用)
従来と違い、掴むという作業ができることは、昨今の鉄道保守工事で重要視されている、「省力化」にも貢献している。
①吊り上げ作業を省略できるため、上空の電線の移設工事が不要
②電柱を直接掴むため、電柱自体の横揺れがなく補助者の配置が不要
③電柱を直接掴むため、吊り金具が不要になり、関連の高所作業が不要
以上3つが代表例として挙げられる、これまでの軌陸クレーンとは一線を画す保守用車となっている。
■車両仕様(NESCO所有車両)
同車は、GS-130NDW(G)の機種名が与えられており
いすゞ フォワードをベース車両として開発されている。
諸元は下記の通り。
全長 | 8,350mm |
全幅 | 2,480mm |
全高 | 3,220mm |
車体重量 | 19.6t |
※JR東海が導入したものは上記のJR西日本の個体と若干の個体差がみられる
■参考文献・脚注
1) 小山広明『『軌道陸上兼用ハンドリングマシンの開発』鉄道と電気技術,30巻3号,日本電気鉄道協会(2019,3)
2) 清水政利『電車線路技術Q&A集(2023年度版)』日本鉄道電気技術協会 電車線委員会(2024,2)
GS-130NDW(G)