小松製作所の軌陸ボルト緊解作業機

概要


従来、スラブ軌道区間の通り整正の際、手作業で行われていたスラブ締結ボルトの緊解作業を機械化するため、JR東日本によって軌陸ボルト緊解作業機(軌陸オートパワーレンチ)が開発された。1995年に第一次型の軌陸ボルト緊解作業機が登場し、2002年から2005年頃に第二次型の軌陸ボルト緊解作業機が登場した。

スラブ軌道区間における通り整正・この車両の運用方法については、この車両と同時に運用される軌陸通り整正機の項目を参照されたい。

第一次型


軌陸通り整正機自体にスラブ締結ボルトを緊結する「ナットランナー」装置が備えれられているが、効率的な作業のためにはあらかじめボルトを緩解し、通り整正後に緊締するための作業機械が別個に必要である。このため、1993年頃から1995年にかけてに軌陸ボルト緊解作業機(オートパワーレンチ)が開発された。
開発に当たっては、緩解作業時に緩めすぎによるTボルトの落ち込みを防止する機能や、軌陸通り整正機と共同作業が可能であることが求められた。

軌陸ボルト緊解作業機には、軌陸通り整正機と同様にスラブ締結ボルトの位置を探し出す「タッチセンサー」、スラブ締結ボルトの緊締を行う「ナットランナー」装置を有する。なお、「ナットランナー」装置は同時に4本のスラブ締結ボルトの緊解が可能である。


ナットランナー装置
柳沢義春, 『スラブ軌道用トラックライナーの導入』, 新線路, 49巻7号, 鉄道現業社, 1995年7月より引用

第一次型の諸元


■ 寸法・重量

長さ 5,700 mm
2,500 mm
高さ 2,700 mm
軌間 1,435 mm
自重 7.5 t

 

■ 動力

出力 37 PS/ 2,700 rpm

 

■ 性能

走行速度 25 km/h
被牽引速度 45 km/h
作業性能 300 m/h
スラブ締結ボルト緊解 4本同時
緩解トルク 5,500 kgf・cm
締結トルク 3,500~4,000 kgf・cm
乗車人員 2 名

 

第二次型


■ 開発経緯
第一次型の軌陸通り整正機および軌陸ボルト緊解作業機の開発は概ね成功したが、一夜あたりの施工量が少ないという不満点があったため、一夜当たり350 mの施工能力を有する新型軌陸通り整正機に合わせて新型軌陸ボルト緊解作業機が2002年から2005年頃に開発された。

2004年頃に登場した第二次型の軌陸ボルト緊解作業機は、一夜当たり350 mの高速施工を可能とするため、以下の改良が施された。
1)緊結作業の高速化・精度向上
・レーザセンサーを導入し、停止位置の検知を行い、スラブ締結ボルトの位置検知精度を向上させた。
・移動量の測定一を見直し、ナットランナー直近で測定可能にし、通り整正の精度を向上させた。
2)高速化のための機能向上
・ハンドルによりナットランナー位置を簡単に調整可能とした。
・カメラにより運転席から緊結作業状況を確認できるようにした。
・ナットランナーの高速化と緩解力を向上させた。

これらにより一夜当たり350 mの高速施工が可能な第二次型軌陸ボルト緊解作業機が実現している。


第二次型軌陸ボルト緊解作業機のナットランナー装置
宮本康之・阿部秀明, 『新型トラックライナーの開発』, 土木学会第60回年次学術講演会, 土木学会, 2005年9月より引用

 
参考文献


土田正, 『スラブ軌道用トラックライナーの開発』, 新線路, 47巻10号, 鉄道現業社, 1993年10月
柳沢義春, 『スラブ軌道用トラックライナーの導入』, 新線路, 49巻7号, 鉄道現業社, 1995年7月
二瓶満, 『新幹線スラブ軌道用トラックライナーの導入』, 新線路, 50巻7号, 鉄道現業社, 1996年7月
中島幹彦・杉木新衛, 『「新幹線スラブ軌道用トラックライナー」による通り整正機械化施工』, 新線路, 54巻9号, 鉄道現業社, 2000年9月
宮本康之・阿部秀明, 『新型トラックライナーの開発』, 土木学会第60回年次学術講演会, 土木学会, 2005年9月