JR北海道(在)の保守用車

■概要
JR北海道(正式名称北海道旅客鉄道株式会社)は昭和62(1987)年4月に発足した会社で、国鉄(日本国有鉄道)民営化により旅客部門を継承した6つの会社のうちの1つである。その名の通り北海道エリアを担っており営業キロ数は実に2,254.9[km]に及んでいる(令和6(2024)年4月1日現在。北海道新幹線(新青森-新函館北斗間) 148.8[km]を含む)。

この項ではJR北海道の在来線向けの保守用車について取り扱う。

 

■JR北海道の保守用車の特徴
北海道エリアの国鉄で使用されていた保守用車を継承したが、民営化から30年あまりが経過しJR化後に導入された保守用車が多くを占める状況となっている。とは言え令和年間に入ってもTMC200CSを始めとした国鉄時代の保守用車を見ることもできる。

JR北海道の保守用車の特徴として何点か挙げられる。

1.除雪車
北海道は豪雪地帯であり冬季の営業列車運行のために線路除雪が欠かせない。そのため国鉄時代から除雪のための車両が数多く登場してきた。蒸気機関車を用いたキマロキ編成といったものがよく知られているが、保線用モータカーの除雪への活用は1950年代から行われていた1)

現在ではDE15形、キヤ291形と共に軌道モータカーにラッセルヘッドを付けたモータカーラッセル、モータカーロータリー、投排雪保守用車が除雪に当たっている。

2.北海道軌道施設工業(HK)
北海道軌道施設工業は昭和24(1949)年に設立されたJR北海道のグループ企業である。
大型機械であるマルチプルタイタンパーはJR北海道発足当初はJR北海道保有であったが、1990年代半ばには北海道軌道施設工業保有に変わっている2)
現在はマルチプルタイタンパーに加えてレール削正車についてもHK保有となっている。

 

製造者視点で見ると軌道モータカー(モータカーロータリー)は富士重工業、新潟鐵工所、および2社を継承した新潟トランシス及び地元のNICHIJO(旧 日本除雪機製作所)といった顔ぶれになる。

軌道検測車は松山重車輌工業、トロについてはかつては三東製もあったと推測されるが現在はトキオ製に統一されている。

脚注
1)文献5)。
2)文献6)。
3)文献7)。
4)文献8)。
5)文献9)。
6)文献10) p.3。
7)文献11)。除雪機械として排雪モータカー47台、排雪モータカーロータリー65台、重連ラッセルモータカーが4組(8台)とある。

参考文献
1)北海道旅客鉄道株式会社『沿革』
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/company/pdf/2024_21.pdf(2025.01.02閲覧)
2)国土交通省『平成8年度運輸白書 第1部 国鉄改革10年目に当たって (1)新会社等の発足』
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/heisei08/pt1/810204.html(2025.01.02閲覧)
3)北海道旅客鉄道株式会社『JR北海道各線営業キロ数』
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/company/com_02.html(2025.01.02閲覧)
4)YouTube『JR北海道公式 北海道の鉄道の除雪車両・除雪機械【JR北海道】』
https://www.youtube.com/watch?v=vpINUoP-Iys(2025.01.02閲覧)
5)北海道軌道施設工業株式会社『沿革』
https://www.h-kidou.jp/enkaku.html(2025.01.02閲覧)
6)MCDB『PT_unknown_unknown_HK_unknown』
https://mcdb.sub.jp/forums/topic/pt_unknown_unknown_hk_unknown/(2025.01.02閲覧)
7)北海道旅客鉄道株式会社『鹿・熊による列車運行への影響件数更新について』(2022.06.08)
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20220608_KO_Animal.pdf(2025.01.05閲覧)』
8)NICHIJO『総合製品カタログ 軌道モータカー』
https://nichijo.jp/catalog_pdf/kidou.pdf(2025.01.05閲覧)』]
9)X.com『白北交通(@extra_car21)』
https://x.com/extra_car21/status/1859528480959959344(2025.01.05閲覧)』
10)北海道旅客鉄道株式会社『函館線七飯駅~大沼駅間 保線作業用機械が、ブレーキが機能しない状態で線路を走行した事象 -点検結果及び対策等について-』
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20210709_KO_Hakodateline_MC2.pdf(2025.01.05閲覧)
11)北海道旅客鉄道株式会社『JR北海道における冬季の取り組みについて』(2022.11.16)
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/221116_KO_Winter.pdf(2025.01.06閲覧)

 

軌道モータカー
冬季はラッセルヘッドを付けて除雪用として用いられるがそれ以外の季節は資材運搬用として用いられる。
HTM350VB及びTMC500(AS/BS)/510/520といった機種が主力となっているがTMC200CS及びTMC300Sも一部残っている。
令和4(2022)年11月時点で47両を保有している7)

TMC200CSには列車と衝突した熊を吊り上げる目的でクレーンに「熊キャッチャー」というアームを備えた個体がある3)

異色の個体としては富士重工業製にもかかわらず新潟鐵工所製のMCR-4系の上物を載せたRW-3といったものもかつて存在した。

 

 

 

 

 

RW-3

 

軌道モータカーロータリー
除雪用の主力として全道に配置されている。
異色の存在はNICHIJOのHTR600RWで2両1セットの重連でラッセルヘッドでの除雪を行う。切り離してロータリー除雪装置を取り付けて除雪を行うことも可能である。

MCDBに投稿されている個体の他に機械番号650の存在も確認されている4)

令和4(2022)年11月時点で73両を保有している7)

 

HTR400R / N-MCR600(新潟) / N-MCR600-M / N-MCR600(日除) / N-MCR600D / HTR600R / HTR600RW / MCR600









































 

投排雪保守用車
今年に入ってP01に加えて機械番号P02(製造番号37)が納入された5)

ENR-1000

 

マルチプルタイタンパー
搗き固め作業が北海道軌道施設工業(HK)保有の機材で行われるようになったためJR北海道保有の機材は現存しない。

MTT-61

 

 

07-16


 

バラストスイーパー
搗き固め作業が北海道軌道施設工業(HK)保有の機材で行われるようになったためJR北海道保有の機材は現存しない。またHKの現役のマルタイではバラストスイーパーを同行させる例は確認されていない。

BC-3A



 

検測車
現在は松山重車輌工業製のMS0238を1両保有している。

MS0208 / MS0238


 

軌道自動車
かつて人員輸送用にマイクロバスベースの軌道自動車を保有していたが現存していない。

いすゞジャーニー

 

軌道自転車
かつてヨシイケ科研機器製のものも存在した。現存するものでは地元北海道の長谷川工作所製のものが確認されている。

ヨシイケ科研機器製軌道自動自転車

 

除雪装置付貨車移動機
五稜郭車両所で使用されている車両が1両確認されている。


 

軌陸高所作業車(ブーム式)
アイチコーポレーション製のU565が確認されている。

アイチU565


 

軌陸除雪車
苗穂車両所内除雪用と思しき軌陸除雪車が1両確認されている。

KBR102

 

トロ
かつては三東製等も存在していたと思われるが、比較的最近納入された鉄製トロ・バラスト運搬散布車・雪捨車はトキオ製となっている。
バラスト運搬散布車は令和3(2021)年6月時点で57両保有している6)
【鉄製トロN形】

【バラスト運搬散布車BCS-T12B-NC】

【水タンク車MWT】

 

【PCマクラギ運搬取卸車】

 

【貨車転用雪捨てトロ】

 

【雪捨車】

 

 

【用途不明】