■概要
京王電鉄の組織の内で工務部(保線作業担当)と電力部(電車線作業担当)が保守用車を所有している。かつては車両部(工場作業担当)でも当DBで定義する保守用車が使用されていたがこちらは引退している。
保守用車は永福町、北野、南大沢といった保守基地に留置されているほか八幡山、東府中、高幡不動、狭間、若葉台等で日中休む姿を見ることができる。
■保守用車の特徴
銘板情報が確認できる1970年代から2000年代前半にかけての車種の多くはモータカー、トロであっても堀川工機製で堀川工機との関係性の深さが窺える1)。2000年代後半より松山重車輌工業製の車両が見られ始め今現在は同社の保守用車が主流となっている。
モータカーに関しては堀川工機製に混じって井の頭線向けに富士重工業製のTMC300DKが存在したり、キャビン付きクレーンを載せた25[t]モータカー、軌道検測車牽引用のモータカーといった個性的な顔ぶれも存在していた2)。
レール削正車は保有しておらず、日鉄レールウェイテクノスのレンタル機にて削正作業が行われている。
検測車は京王線、井の頭線用にかつてそれぞれヨシイケ科研機器製の軌道検測車を保有しており、京王線向けは1988(昭和63)年から2008(平成20)年頃まで、井の頭線向けは1993(平成4)年から2011(平成23)年頃まで使用されていた。これらは京王線向けは総合高速検測車DAX(Dynamic Analytical eXpress)に、井の頭線向けはATカート牽引のトラックマスターにより置き換えられた3)。
架線の検測は京王線では前述のDAXにより行われているが、かつては珍しい東急車両製の電気検測車や軌陸車で作業が行われていた3)。
マルタイは長らく芝浦製作所製が使用されていたが、1990年代初頭にプラッサーアンドトイラー(PT)製の08-16Mが入った以降はPT製が使用されている。マルタイの跡作業用に芝浦製作所製のバラストスイーパーを連結して長らく使用されていたが、08-1XSと合わせてPT製のUCM-SMが納入され芝浦製のスイーパーは引退している。
保守用車は当初黄色であったが1990年代初頭の08-16M納入の頃から白地に京王ブルーと京王レッドの帯を纏ったの京王線の営業車両と同じカラーリングとなっている4)(一部例外は存在する)。
■車種別一覧
軌道モータカー
堀川工機製や富士重工業製も確認されているが現在では松山重車輌工業製が主流となっている。
在籍車両数は2021年、2022年は13両であったが2023年には12両となっている5)。
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井の頭線 |
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京王線 |
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井の頭線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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井の頭線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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井の頭線 |
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京王線 |
電気作業車
堀川工機製の電気作業車がかつて在籍していた6)。これらの車両は軌陸の高所作業車によって置き換えられたものとみられる。
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京王線 |
マルチプルタイタンパー
京王線は線路延長が長いため各世代2両で稼働していたと考えられる。
在籍車両数は2021年、2022年までは2両であったが2023年には1両となっている5)。
現在はプラッサーアンドトイラー(PT)製が稼働しているが、PT製導入前は芝浦製作所製が使用されていた7)。
一方井の頭線向けのマルタイは現在存在していないが、かつてUNIMAT JUNIORが稼働していた8)。
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
バラストスイーパ
長らくマルタイの跡作業用にマルタイに連結されて芝浦製作所製のバラストスイーパが使用されていた。
現在はプラッサーアンドトイラー製の多機能スイーパ、UCM-SMが使用されている。
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京王線 |
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京王線 |
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京王線 |
レール削正車
京王電鉄ではレール削正車を所有していない。レール削正作業は日鉄レールウェイテクノスからRGH10をレンタルして行われている。
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京王線 |
検測車
軌道の検測を目的として京王線用及び井の頭線用にそれぞれMC牽引タイプのヨシイケ科研機器製軌道検測車を保有していた。また、電気検測車もかつて保有していたようである9)。
2001(平成13)年の営業列車のスピードアップを契機として2008(平成20)年に軌道・架線の同時検測を可能とした総合高速検測車DAX(Dynamic Analytical eXpress)が供用されるようになったため京王線でも保守用車タイプの検測車は引退した10)。井の頭線ではATカートでトラックマスターを牽引しての軌道検測を行っている11)。
DAX導入前の架線の検測は長らく軌陸車により行われてきたものと思われる12)。
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井の頭線 |
軌陸車
高所作業車
直近3年の在籍車両数は7両で推移している5)。
京王社内では「軌陸車」ではなく「陸軌車」と呼ばれている13)。陸軌車は堀川工機が自社製に用いた呼称であるが、過去は堀川工機製軌道兼用車を使用していた名残と考えられる。なお現在は東洋車輌製が使用されている。
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トラッククレーン付き軌陸トラック
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車両牽引用
若葉台工場では長らく車両牽引用にアントと共にウニモグが使用されていた。
現在は独ZAGRO社のマキシシャンターにより更新されている。
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トロ
かつてはモータカー同様堀川工機製が多数を占めていたが近年では松山重車輌工業製が主流となっている。また、トキオ製の省力化軌道用プラント車、東光産業製のロングレール運搬車も保有している。
ダンプトロ
ロングレール運搬車
ボギー式レール運搬車
省力化軌道用プラント車(トキオ)
建築限界測定車(東光産業)
■脚注
1)文献1)p.142 『京王帝都電鉄 保線機械一覧表』及び当DBへの投稿による。
2)文献1)p.137及びp.139。
3)文献3)p.43。
4)文献1)p.139。
5)文献7)p.59、文献8)p.59、文献9)p.59。
6)文献1)p.142 『京王帝都電鉄 保線機械一覧表』
7)文献4) p.36の表-5『保線機械一覧表』によると1976(昭和51)年3月末現在では芝浦製作所製のMTT-225AKTとMTT-55Eの名前が挙がっている。
8)文献5) 本文中の記述による。
9)文献2) P.23。
10)文献3) P.41。
11)文献3) P.43。
12)文献10)。2009年の富士見ヶ丘車両基地一般公開時に2台の架線検測用の軌陸車が展示されていたことが確認できる。
13)文献9)。車両電気部の軌道兼用車の側面に「陸軌車」のポップが貼られている。
■参考文献
1)藤田 吾郎『縁の下の力持ち:京王帝都電鉄の保線機械たち』,トワイライトゾーンマニュアル4,ネコ・パブリッシング(1995)
2)鳥井久直『電力設備の概要』,鉄道ピクトリアル,No.578(1993.07)
3)重岡剛雄・小林俊介『京王電鉄の軌道検測装置』,日本鉄道施設協会誌,2013年5月号,日本鉄道施設協会(2013.05)
4)皿谷寿朗『京王帝都電鉄の保線の保守体制,鉄道線路,第25巻3号,日本鉄道施設協会,(1977.03)
5)MCDB『PT_unknown_unknown_KEIO_null』
https://mcdb.sub.jp/forums/topic/pt_unknown_unknown_keio_null/
(2024.08.18閲覧)
6)京王電鉄株式会社『京王ハンドブック2021』
https://www.keio.co.jp/company/corporate/summary/corporate_manual/pdf/2021/all_keiohandbook2021.pdf
(2024.08.19閲覧)
7)京王電鉄株式会社『京王ハンドブック2022』
https://www.keio.co.jp/company/corporate/summary/corporate_manual/pdf/2021/all_keiohandbook2021.pdf
(2024.08.19閲覧)
8)京王電鉄株式会社『京王ハンドブック2023』
https://www.keio.co.jp/company/corporate/summary/corporate_manual/pdf/2021/all_keiohandbook2021.pdf
(2024.08.19閲覧)
9)石好きどうでしょう!?『☆京王線の富士見ヶ丘車両基地を見学☆』
https://ameblo.jp/manu-a-manu/entry-12540139479.html
(2024.08.19閲覧)
10)トイレ探索日記 by 東府中の住人『富士見ヶ丘車両基地一日開放レポート(2009/03/28)』
http://blog.livedoor.jp/localforfuchu/archives/51897120.html
(2024.08.19閲覧)
11)夏目保男・永田繁『線路と保守作業』,鉄道ピクトリアル,No.422(1983.09)