近畿日本鉄道の保守用車


■概要
近畿日本鉄道は2026年現在、鉄道営業キロ501.1㎞と日本最大の路線総延長を持つ私鉄である。
路線は標準軌と狭軌を保有しているほか、ロープウェイ、ケーブルカーによる路線も存在する。なお、2015年3月までは特殊狭軌線(762㎜)も保有していた。保線作業は直轄でも行われているが、マルタイ作業や一部の保線作業については子会社の近鉄軌道エンジニアリングへ外注している。

■保守用車の特徴
本格的な保線作業機械化は1959年のMATISA製マルタイのB-27の導入が始まりとなる。1970年台から1980年台末にかけて軌道構造近代化工事として道床の強化、PCマクラギ化、ロングレール化が進められ、その際に多種多様な保守用車を導入している。
一部の保守用車は軌間変更に対応しており、標準軌路線と狭軌路線の両方で運用されている。

■保守用車の附番方法
モータカーは下記の通りと推定される。
機械番号(自重+型式)_導入年度(西暦下2ケタ)_製造会社名略称

その他の保守用車は下記の通りと推定される(※電気作業車除く)。
導入年度(西暦下2ケタ)_用途_機械番号

■車種別一覧
軌道モータカー
保線作業の機械化が始まった1960年台は近畿車両製や富士重工製のモータカーを導入していたが、1969年に大阪万博関連工事および軌道構造近代化のために松山自工(現:松山重車両)製MJK-12MBCを導入して以降、現在では同社製で統一されている。
塗装は車体が薄緑色、台枠やクレーンは黄色だが、一部のモータカーは黄色い車体に緑色と深緑色の帯が巻かれ、牽引する探傷車と合わせてある。

機械番号が1ケタ~3ケタのモータカー

   

貨物型モータカー(近鉄型式『K-1』)

1960年に三東製を2台導入
機械番号:STK1~2。
1988年に2台とも廃車。
(写真:参考文献.4より引用)

No Image  

三東_K-2

1962年に2台、1965年に1台導入
機械番号:STK3~5。
1972~1973年に3台とも廃車。

   

KKS_K-3

1962~1963年にかけて3台導入
機械番号:KKS-6~8
引退済み

No Image  

KKS_型式不明(中型軌道モータカー)

1964~1965年にかけて2台導入
機械番号:KKS-1~2
引退済み

No Image  

FHI_TMC101B

1965年に1台導入
機械番号:FJK-3
引退済み

No Image  

MJK_8M

1969年に1台導入
機械番号:不明
引退済み

No Image  

MJK_12M

1969年に2台導入
機械番号:不明
引退済み

No Image  

MJK_12MC

1969年に3台導入
油圧クレーン、ダンプトロリー操作装置付き
機械番号:不明
引退済み

 

MJK_12MBC

1969年に2台導入
油圧クレーン、ダンプトロリー操作装置、バラストかき寄せ装置付き
機械番号:不明
引退済み
(MJK_12MBCと推定される写真:参考文献.4より引用)

MJK_MR1101

引退済み

MJK_MR1102

引退済み

KKS_型式不明(標準型軌道モータカー)

1990年に1台導入
機械番号:KKS-9
引退済み

 

機械番号が4ケタのモータカー(20XX)

MJK_MR1532

MJK_MR1533

MJK_MR1548

MJK_MR1562

MJK_MR1583

MJK_MR1586

MJK_MR1590

MJK_MR1609

MJK_MR1714

 

機械番号が4ケタのモータカー(25XX)

MJK_MR1713

 

機械番号が4ケタのモータカー(28XX)

MJK_MR1008

MJK_不明

MJK_MR1000

MJK_MR1009

MJK_MR1012

MJK_MR1105


養老線の分離時に養老鉄道へ移管された

 

電気作業車
近鉄における架線作業車は1961年の架線ジープが始まりである(本サイトでは軌陸乗用車に分類されるのでそちらで取り扱う)。
その後、架線ジープのみでは対応しきれなくなってきたため、作業精度の向上、作業時間の短縮、作業人員の減少、安全性の向上という条件をを満たす電気作業車をの開発が昭和53年度より行われた。その結果、大型架線作業車と中型架線作業車が導入された。

△大型架線作業車。1983年時点で1台保有(写真:参考文献.7より引用)
△中型架線作業車。1983年時点で5台保有(写真:参考文献.7より引用) 

以降、複数の電気作業車が導入されたようだが、近年は軌陸車による作業が主流と思われ、電気作業車はあまり見られない。

MJK_MS132

MJK_MS148


元:近鉄保有。引退後、輸出されたと思われる。

MJK_機種不明

 

MJK_機種不明


養老線の分離時に養老鉄道へ移管された

 

道床交換作業車
1961年から1965年にかけて日車製が導入されたのが始まりだが、評価は芳しくなく12~15年程度で廃車となっている。
1970年台にはバラスト道床の老朽化が進行し、全線の40%に当たる約450㎞については抜本的な改良工事を行う必要が生じてきたためMATISA製C 311目黒製が導入された。その後、1980年代後半までに道床交換がおおむね達成されたため順次引退し、現在では道床交換作業車を所有していない。

日車_3035および3040

1961~1965年に6台導入
機械番号:NPP-1~6(うちNPP2と4は狭軌)
1973~1980年引退済み
(写真:柳瀬 珠郎「近畿日本鉄道の駅改良、線路改良、スピードアップ」『JREA』4巻11号,1961年,pp.23-25.より引用)

MATISA_C 311

1974年に2台導入
機械番号:74 BC1~2
1985年および1988年に使用休止、その後引退
(写真:参考文献.6より引用)

目黒_MKK-NBC

1973~1979年に4台導入
機械番号:MKK-1~4(うちMKK-1と4は狭軌)
引退済み

 

マルチプルタイタンパー
導入当初は自社保有していたが、1987年4月に子会社の近畿日本軌道工機(現:近鉄軌道エンジニアリング)へ移管し、作業も外注している。

MATISA_B 27


1959年に1台導入
機械番号:B-1
1972年引退
芝浦_MTT-13D


1961年に1台導入
機械番号:MTT-1
1987年に近鉄軌道エンジニアリングへ移管
MATISA_B 60

1961年に2台導入
機械番号:B-2~3
1987年に近鉄軌道エンジニアリングへ移管
(写真:参考文献.4より引用)

芝浦_MTT-55B

1968年に1台導入
機械番号:MTT-2
1980年引退

 

MATISA_BN 60

1963~1964年に3台導入
機械番号:BN-1~3
引退済み
(写真:参考文献.4より引用)

No Image  

芝浦_MTT-15C

1964年に1台導入
機械番号:MTT-3
引退済み

 

MATISA_BNR 60

1966年に1台導入
機械番号:BNR-1
1987年に近鉄軌道エンジニアリングへ移管
(写真:参考文献.4より引用)

No Image MATISA_BNRI 85

1972年に3台導入
機械番号:BNRI-1~3
1987年に近鉄軌道エンジニアリングへ移管

MATISA_BMNRI 85

1973~1974年に2台導入
機械番号:BMNRI-1~2
1987年に近鉄軌道エンジニアリングへ移管
(写真:参考文献.6より引用)

 

バラストスイーパー
1971~1974年にかけて近車製が計3台(牽引式1台、自走式2台)が導入されて試験使用されたが本格使用には至らず、これ以降は導入されていないと思われる。

△近車製牽引式バラストスイーパー(機械番号:BS-1)(図:参考文献.5より引用)

 

バラストフィニッシャー
近鉄では道床締め固め用の機械は『ランミングマシン』という名称で導入されていたが、道床改良工事が終了した現在では見られない。

MATISA_ウインドホフ

1965年に1台導入
機械番号:RM-1
1988年引退
(写真:参考文献.4より引用)

No Image MATISA_D-9

1972年と1975年に各1台導入
機械番号:RM-2~3
引退済み

 

バラストバラストレギュレータ
道床改良工事で使用されていたが、現在では見られない。

MATISA_R-7D

1972年に2台導入
機械番号:BR-1~2
引退済み
(写真:参考文献.6より引用)

 

削正車
近鉄におけるレール削正作業は1968年にマチサ製の手押し式レール研磨器を導入したのが始まりとなる。削正車を用いた本格的なレール削正作業および削正車の保有は、近畿日本軌道工機による行われているので、そちらに記載する。

 

検測車
軌道系検測車
PV-5の導入以降、保守用車を用いて軌道検測を行っていたが、営業列車による軌道検測の開始に伴い、標準軌区間では保守用車が使われなくなった。レール探傷は引き続き保守用車で行われている。

MATISA_PV-5

1966年に1台導入
機械番号:MTS-1
引退済み
(写真:参考文献.22より引用)

MATISA_PV-6

1972~1973年に各1台導入
機械番号:MTS-2~3
うち1台は後にレール溶接継目用自動探傷システムを搭載
引退済み
(写真:参考文献.9より引用)

MATISA_M462

1989年に1台導入
機械番号:89-HSMC-1
2022年に運用終了

MATISA_MPV9

1994年に1台導入

MJK_MS0201

2002年に1台導入
軌間変更対応

 

架線・信号通信系検測車
世界初として電気検測車(初代)が導入されて以降、保守用車を用いて架線検測とATS地上子検測を行っていたが、2006年に営業列車と同じ速度で検測可能なモワ24系電車『(愛称)はかるくん』が導入されたため、保守用車は使われなくなった。

KKS_電気検測車(1号車)

1968年に1台導入
機械番号:不明
引退済み
(写真:参考文献.3より引用)

KKS_電気検測車(2~3号車)

1974年ごろに推定2台導入
機械番号:不明
軌間変更対応
引退済み
(写真:参考文献.25より引用)

MJK_型式不明

1988年に導入(台数不明)
機械番号:不明
引退済み
(写真:参考文献.10より引用)

 

マクラギ交換車

No Image GEMCO_ジョージ モス

1972年に2台導入
機械番号:SC-1~2
1985年引退

 

通り整正機
中型マルタイであったが、近鉄では通り直し機として使用していた。

MATISA_LCR-03

1966年に1台導入
機械番号:LCR-01
引退済み
(写真:参考文献.4より引用)

 

軌陸乗用車
近鉄では電車線路保守作業における機動力の導入として、1961年に『架線ジープ』が導入されたのが始まりである。架線作業車として最大22台を保有していたが、本機種のみでは対応しきれない状態になってきたため、後継は電気作業車となった。

MMC_JEEP

1961年以降に計22台導入
引退済み
(写真:参考文献.7より引用)

 

軌陸トラック
近鉄所有車のほか、子会社の近鉄電気エンジニアリング所有車も多く存在する。

ISUZU_ELF(6代目 ハイキャブ・ワイドキャブ 2006~2023年)

 

軌陸高所作業車
近鉄所有車のほか、子会社の近鉄電気エンジニアリング所有車も多く存在する。

ISUZU_ELF(5代目 1993~2006年)

ISUZU_ELF(6代目 2006~2023年)

ISUZU_ELF(6代目 ハイキャブ・ワイドキャブ 2006~2023年)

 

軌陸高所作業車(ブーム式)
近鉄所有車のほか、子会社の近鉄電気エンジニアリング所有車も多く存在する。

UD_CONDOR

 

軌陸延線車

ISUZU_FORWARD

 

トロ
用途記号不明

松山自動車_MJK4BK(門型クレーン運搬トロリー)

1969年に4台導入
MATISA製の自走門型クレーン(M5型)を搭載。
引退済み
(写真:参考文献.4より引用)

松山自動車_MJK15BK(バラストドーザ運搬トロリー)

1969年に1台導入
日特金属製のバラストドーザ(NTK-4WH-TBC)を搭載する。
引退済み
(写真:参考文献.4より引用)

MJK_RDT(低床式トロリー)

1981年時点で139台保有
一部は移動式レールガス圧接作業車として使用された。
[移動式レールガス圧接作業車]
1970年から1972年にかけて3組導入(3両1組)
ガス圧接機、押抜きせん断機、縦横矯正機を搭載する。
引退済み
(写真:参考文献.28より引用)

 

用途記号:T(レール運搬車、軌框運搬車)

松山自動車・MJK_MJK65

MJK_MC165

MJK_MC624

 

用途記号:ZT(材料運搬車(ボギー式))

MJK_MC0447

 

用途記号:LRT(ロングレール運搬トロリー)

MJK_MC352

MJK_MC353

MJK_MC354

 

用途記号:DT(ダンプトロリー)
1981年時点で116台を保有していた。(松山製三転式:99台、松山製二転式:17台)

松山自動車_6DT・MJK_DT6

1969年から8台導入

松山自動車_5DT

MJK_DT320

1975年時点で14台を保有

MJK_DT405

MJK_DT402

MJK_DT331

MJK_DT334

MJK_DT409

MJK_DT434

 

用途記号:D(除草薬散布車)
1981年時点で5台を保有していた。(松山製1000ℓ:1台、高北製2000ℓ:2台、松山製5000ℓ:2台)

MJK_MC254

MJK_MC0648

 

用途記号:なし(延線巻取車など)

MJK_MC269


元:近鉄保有。引退後、輸出されたと思われる。

MJK_MC285


元:近鉄保有。引退後、輸出されたと思われる。

 

■参考文献
1)近畿日本鉄道株式会社,『会社概要』,2026年1月22日閲覧
2)近畿日本鉄道株式会社,『安全報告書2025』,2026年1月22日閲覧
3) 田辺駿『電気検測車』,近畿日本鉄道技術研究所技報,1巻,(1969)
4)春永駒男,小林陽三『保線作業機械化の現状と方向について』,近畿日本鉄道技術研究所技報,2巻,(1970)
5)春永駒男,小林陽三『解説 軌道構造近代化工事の現状と省力化機械の開発』,近畿日本鉄道技術研究所技報,3巻,(1971)
6)『小林陽三『新しい保線機械と道床改良作業システム』,近畿日本鉄道技術研究所技報,7巻,(1975)
7)近畿日本鉄道技術室・電気部『近鉄における電車線路保守作業用機械について』,近畿日本鉄道技術研究所技報,14巻,(1983)
8)後久義昭,高田憲一,富田都吉『高速軌道検測車について』,近畿日本鉄道技術研究所技報,20巻,(1989)
9)上垣隆,難波丈久,番匠谷隆,富田都吉『レール溶接継目用自動探傷システムの開発-3』,近畿日本鉄道技術研究所技報,22巻,(1991)
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11)山岸武『電気検測車を利用した軌道回路短絡感度簡易測定法の開発』,近畿日本鉄道技術研究所技報,27巻,(1996)
12)宇治川高義.高田憲一『新しく導入したレール削正車について』,近畿日本鉄道技術研究所技報,30巻,(1999)
13)山岡嬉明,『バラストクリーナによるロングレール区間の道床改良作業』,新線路,40巻12号,鉄道現業社,(1986.12)
14)河村猛,出口俊和,『近鉄のマルタイ作業』,新線路,41巻10号,鉄道現業社,(1987.10)
15)福井英之,『近鉄におけるバラストクリーナの施工記録』,新線路,42巻9号,鉄道現業社,(1988.9)
16)河村猛,『近鉄におけるスピードアップ』,新線路,43巻3号,鉄道現業社,(1989.3)
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19)高田憲一.吉原稔郎,『近畿日本鉄道におけるレール探傷車を利用したレール検査』,新線路,57巻12号,鉄道現業社,(2003.12)
20)岸川隆,椙岡淳一,高田憲一,『近鉄のレール探傷車』,新線路,59巻1号,鉄道現業社,(2005.1)
21)岸川隆,椙岡淳一,高田憲一,『近鉄におけるレール検査』,新線路,59巻1号,鉄道現業社,(2005.1)
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24)田辺駿,電気検測車,鉄道電化協会 編『電気鉄道 = Electric railways』23(10)(257),鉄道電化協会,(1969.10)
25)廣岡三四一,松川秀樹,近鉄の電気検測車,鉄道電化協会 編『電気鉄道 = Electric railways』28(8)(315),鉄道電化協会,(1974.8)
26)西野泰生,近畿日本鉄道における保線作業の機械化,『鉄道と電気技術』3(10)(534),日本鉄道電気技術協会,(1992.9)
27)近畿車輛株式会社 編『50年の歩み』,近畿車輛,ダイヤモンド社 ,(1971)
28)奥村正晴『近鉄の保線の機械化』,鉄道ピクトリアル,31巻臨時増刊号(1981.12)
29)近畿日本鉄道株式会社『保線機械経歴一覧表 平成3年4月現在』,(1991)