■概要
南阿蘇鉄道株式会社(愛称「南鉄」)は昭和60(1985)年に旧国鉄高森線を引き継ぐために設立された第三セクターの鉄道会社1)で、JR九州の駅でもある立野から高森までの17.7[km]を運行している。平成28(2016)年4月に発生した熊本震災で土砂の流入、トンネル・鉄橋に甚大な被害を受け一時全線運休を余儀なくされたが同年7月末に高森-中松間(7.1[km])に部分再開、令和4(2023)年7月15日に全線で運転を再開している1)。
平成29(2017)年、国土交通省から震災からの復旧にあたり工事期間5年程度、65～70億円の費用がかかることが示された2)。鉄道軌道整備法により国の補助を受けられたとしても赤字経営の鉄道事業者には20億円以上3)の事業者負担分の費用を拠出することは困難であるため、沿線自治体は国への支援を求めるとともに特定大規模災害等鉄道施設災害復旧補助4)制度を活用するため南阿蘇鉄道の上下分離方式の導入を決定した5)。
上下分離方式導入に伴い令和5(2023)年に南阿蘇鉄道は第二種鉄道事業者となり、南阿蘇鉄道管理機構が保有する鉄道施設及び鉄道用地を無償で借り受け運行に専念するという形になっている6)。
■保守用車の特徴
営業区間が短い鉄道会社であるため保有する保守用車の数は多くない。しかしながら少ないながらも同社は個性的な保守用車を保有している。
高森駅には松山重車輌工業製の貨物型モータカーが長い期間留置されておりその愛らしい姿を間近で見ることができた。また、同じく高森駅近くに元高千穂鉄道のTMC400Aも留置されている。TMC400Aは関東近郊では姿を見かける機会が多かった機種であるが九州地方ではこの1両のみと思われる。
平成27(2015)年にエルフベースの軌陸ダンプが導入されている。こちらは降灰対策によるものである7)。
上記の当DBに投稿されているもの以外に軌道自転車を保有している。こちらは形状から東光産業製のスーパーカートであると推測される8)。
■車種別一覧
軌道モータカー
前述の高森駅に留置されていた貨物型モータカーは長い間使われていない様子であったが2010年代後半に姿を消した。「引退か」と思われたが実際はエンジンを修理し、綺麗に再塗装されて震災復旧工事に従事された9)。貨物型の実働例は岩手開発鉄道のものと並んで極めて珍しいものであったが故障が発生したようで去就が注目される10)。
もう一両のTMC400Aは高千穂鉄道廃止に伴い有償譲渡されたものである11)が大規模な修理が必要とのことで南阿蘇鉄道では一度も使用されず留置されている12)。
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軌陸トラック
降灰対策用に軌陸ダンプを1両保有している。
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脚注
1) 文献1)。
2) 文献2) p.7『Ⅵ．復旧見通し・復旧費用』。
3) 文献3) 5Ⅱ(2)③。補助率は『災害を受けた鉄道に代わる公共交通機関の確保が困難である場合』かつ『地方公共団体等が鉄道施設を保有する「公有民営」方式など、事業構造の変更による経営改善を図る場合』は3分の1以内となっている。
4) 文献3) 5Ⅰ(1)及び 5Ⅰ(1)②。この制度を適用した場合の補助率は2分の1以内となる。
5) 文献4)。
6) 文献5)。
7) 文献6)。安全報告書の表紙は作業中の同車のものとなっている。
8) 文献7) ②アルミカート乗車体験。
9) 文献8)。
10)文献9)。不動となり押している様子が確認できる。
11)文献10)。
12)文献11)。
参考文献
1)南阿蘇鉄道株式会社『南阿蘇鉄道について』
https://www.mt-torokko.com/about/(2025.01.18閲覧)
2)国土交通省『南阿蘇鉄道の鉄道施設災害復旧調査報告概要』
https://www.mlit.go.jp/common/001181697.pdf(2025.01.25閲覧)
3)JRTT鉄道・運輸機構『Ⅶ 国における鉄道助成制度』
https://www.jrtt.go.jp/subsidy/asset/bookGuide07.pdf(2025.01.25閲覧)
4)鉄道協議会日誌『【南阿蘇鉄道】上下分離を即決！鉄道が復旧できた理由とは』
https://tetsudokyogikai.net/thirdsector/minamiaso(2025.01.25閲覧)
5)国土交通省『南阿蘇鉄道の鉄道事業再構築実施計画の概要』
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001725721.pdf(2025.01.25閲覧)
6)南阿蘇鉄道株式会社『安全報告書2016年度版』
https://konantetsudo.jp/guide-vehicle/(2025.01.25閲覧)
7)南阿蘇鉄道株式会社『南鉄フェスタ開催します！』(2024.09.25)
https://www.mt-torokko.com/2024/09/25/7140/(2025.01.25閲覧)
8)X『@W405090125』
https://x.com/W405090125/status/1285889524732538880(2025.01.25閲覧)
9)X『@tangyorai』
https://x.com/tangyorai/status/1571753905738108929(2025.01.25閲覧)
10)あきひこゆめてつどう『高千穂鉄道 車両譲渡』(2018.10.25)
https://iwase-akihiko.hatenablog.com/entry/20081025/1224935317(2025.01.25閲覧)
11)X『@W405090125』
https://x.com/W405090125/status/1317705406056079360(2025.02.01閲覧)