(写真:鳥飼基地で撮影されたHRA-20B)
HRA-20Bは、日立製作所が製作した産業用機関車の型式の一つ。
このうち本項では、MCDBの取り扱い対象となる「軌道モータカー」的用途を目的として製作された、東海道新幹線建設用の個体について述べる。
■概要
名古屋幹線工事局編(1965)p.715より
日立製作所(1963)p.2より
東海道新幹線の建設当時、基地から工事現場までの資材輸送には、軌道モータカー(TMC101A)のほか、より輸送力の大きいディーゼル機関車も用いられていた。
このうち最も大型なものはDD13形機関車の改造機(2000形→912形)であったが、そのほかにも20t級のディーゼル機関車が計7両用意され、主に軌框の運搬やホッパ車(3000形→931形)の牽引に使用された。
この20t機のうち4両が、日立製作所製のHRA-20Bであった。
日立製2軸ロッド駆動20t機の例(名古屋臨海鉄道OD25)
撮影:新芝ミコフ
本機種は2軸ロッド駆動の液体式20t機である。
日立の標準的な産業用ディーゼル機関車とほぼ同じ形態であるが、特徴として変速機が高低速2段となっており、50km/hでの走行が可能となっている。また通常の自動連結器のほかに、保守用車用のピンリンク式連結器も装備されている。
製造された4両は以下とおり。
製造年月 | 納入年月 | 製番 | 当初の配置 |
1962-10 | 1963-1 | 12735 | 鳥飼 |
1962-10 | 1963-3 | 12736 | 幸田 |
1963-6 | 1963-6 | 12750 | 近江八幡 |
1963-7 | 1963-7 | 12751 | 笠寺 |
京成電鉄へ譲渡された製番12751
東海道新幹線の完成・開業後は、同じく建設用である浜松工場製(1両)・新潟鉄工所製(2両)の20t機と共に、そのままモータカーとして保線作業に用いられた。また製番12751はのちに京成電鉄へと譲渡され、宗吾参道車両基地で入換機(DL-2)として使われていた。
■諸元
全長 | 6,850[mm] |
全幅 | 2,630[mm] |
全高 | 3,500[mm] |
軌間 | 1,435[mm] |
軸距 | 2,200[mm] |
機関 | 日立V3 V14/14 195[PS]/2,000[rpm] |
変速機 | ニイガタDB115 |
整備重量 | 約20[t] |
走行速度 | 50[km/h] |
■文献
沖田 祐作『機関車表』,2014年,ネコ・パブリッシング.
日本国有鉄道名古屋幹線工事局編『東海道新幹線工事誌:名幹工篇』,1965年.
日立製作所「日立HRA-20B形液体式デイーゼル機関車」『車両技術』85号,1963年,pp.2-4.
日立製作所『日立液体式ディーゼル機関車納入先一覧表(昭和6年~44年)』,刊行年不明.
湯本 幸丸『写真解説保線用機械(改訂増補5版)』1980年,交友社.
渡辺 肇『日本製機関車製造銘板・番号集成』1982年.