B 133はMATISA製のマルチプルタイタンパーである。
■概要
山陽新幹線の建設時に撮影されたB 133
日本機械保線株式会社(1987)より
本機種は分岐器やガードレール設置区間など、通常のマルタイでは作業できない区間のつき固めを目的として開発された機種(スイッチマルタイ)である。そのため、通常区間用であるB 85までのシリーズ(ラインマルタイ)とは構造が大きく異なる。
分岐器を避けてつき固めを行うB 133のタンピングツール
山本(1974)より
車体は細長い形状をしており、車軸間の後ろよりにタンピングユニットが、後部に運転台がある。タンピングツールは従来の横2本分を1本にまとめた幅広のものを用いており、1丁づき8頭式となっている。向かい合った各ツールは4組に分割されており、それぞれ上部を支点として先端の向きをレールに対して左右の方向に動かすことができる。分岐器やガードレール区間をつき固める場合はこの機能を用いて障害物を避ける、という仕組みである1)。
B 133の広告
外側のツールが斜めに展開し、障害物を避けている様子がわかる
日本鉄道施設協会『鉄道線路』21巻12号,1973年,広告pより
ツールの振動方式は従来のMATISA製機械式マルタイと同じである。作業性能はBNRI 85と同程度で、レベリング・ライニング機能も備えている。レベリング時の検測は、前方ブームの先端に基準光線を発するトロリーを繋げる仕様である。レールクランプは分岐器などにある特殊形状のレールに対応できるよう、レールの頭頂部と底部どちらでも掴むことができる形状となっている。レベリング時は車体全体を反力として使い、レールを押さえる仕組みである。また、ホイールベースを回送時は短く、作業時は長くする機能も持つ2)。
■運用
B133の前頭部
端梁の下に格納された検測トロリーが見える
本機種は、日本では国鉄と大阪市交通局のみで使用された。国鉄では山陽新幹線の岡山~博多間建設工事で2台が導入され、岩国・花岡工区と久山・南福岡工区でそれぞれ使用された3)。工事終了後の処遇ははっきりしないが、山陽新幹線建設で使われた機械は東北新幹線建設で引き続き使用された記録があり4)、実際に本機種は東北新幹線の建設現場で目撃されていることから、そちらで引き続き使われていたものと思われる。
大阪市交に導入されたB 133
大阪市交通局(1980)より
また大阪市交通局では1975年に1台が導入された。大阪市交では1957年にRacine製オートタンパーを導入したが、部品供給上の問題があり長く使うことができず、B 133が実質的に最初の本格的なマルタイ導入となった。B 133の特殊な構造は、第3軌条式地下鉄の大阪市交に適していたという5)。
■諸元
代表的な諸元は以下の通り6)。
全長 | 15.24[m](作業時) |
全幅 | 2.70[m] |
全高 | 3.52[m] |
自重 | 35.0[t] |
軸距 | 8.7[m](回送時) / 10.4[m](作業時) |
作業能力 | 350[m/h](一般区間) |
タンピングツール | 1丁づき8頭 |
ツール振動数 | 2160[rpm] |
エンジン | 水冷ディーゼル 235[PS]/2100[rpm] |
自走速度(回送時) | 80[km/h] |
■脚注・文献
1)田中 五十六「最近の輸入保線機械」『新線路』28巻7号,1974年,グラフp.
2)保線機械研究グループ編『保線機械便覧』1978年,日本鉄道施設協会.山本,前掲1.
3)日本機械保線株式会社『20年のあゆみ』,1987年,日本機械保線.
4)日本国有鉄道『東北新幹線工事誌:大宮・盛岡間』,1983年,日本国有鉄道.
5)大阪市交通局『大阪市交通局七十五年史』,1980年,大阪市交通局.
6)保線機械研究グループ編,前掲2.