概要
大型軌道モータカーは登場以来、キャブが細く、大型の貨車を牽引する際などに視界が非常に悪いことから改善が求められていた。これに伴いTMC100系のTMC100Fではキャブが大きく拡大されたため、TMC200系でもキャブの拡大版であるTMC200Bが製造された。
キャブが拡幅されたことに伴い、前面窓が3枚窓になり、定員が3名から5名に増加、側扉が引戸となっている。
そのほかTMC100Fと同様の装備・機能が盛り込まれている。製造番号123号では車輪絶縁方式が3輪絶縁方式となり、キャブ内に短絡SW、短絡表示灯が設けられた。
製造番号145以降では、走行中の変速操作を可能とするため、トルクコンバータの逆転変速機が変更され、高低速切換部も前後進用と同様の油圧クラッチ方式になった。また、これに伴い機関ブレーキの作動ができるようになっている。
製造番号147以降では車体に使用のネジがISOネジに変更された。
製造番号150以降ではエンジン停止用にインテークシャッターが設けられ、デコンプレバーが廃止。更にエンジン用ネジもISOネジに変更された。そのほか、絶縁制輪子がレジン製の2分割型に変更されている。
製造番号166以降では、絶縁車輪の切換方式が各車輪に輪心・タイヤ間を切換SWによる切換方式になり、別に短絡用ワタリを設けている。そのほか、制動灯が新設され、尾灯と一体型としてキャブ上部に取り付けられ、手動・自動切換として左右交互点滅方式となった。キャブ内についてもSW類の変更のほか、転車台格納を示す緑色表示灯のほか、エンジン回転計が新設された。屋根上に黄色回転灯が新設され、車高が3,272[mm]へ変更されている。
製造番号197以降で国鉄保線作業の中編成機械化用として製造されたものには速度警報器が装備される。これは15~70[km/h]の範囲内で5[km/h]刻みで設定できるものである。
上記の製造番号ごとの差異とは別に一部バラストレギュレータ付の個体も製作され、キャブ内に操作レバーなどが増設されており、転車台やクレーンの油圧を利用して動作するようになっている。
製造番号66~。
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 6,440[mm] |
幅 | 2,726[mm] |
高さ | 3,272[mm] |
軌間 | 1,067[mm] |
軸距 | 3,500[mm] |
車輪径 | 762[mm] |
自重 | 11.8[t] |
■ エンジン
エンジン名称 | いすゞ DH100TP |
エンジン形式 | 水冷4サイクル 6気筒 過給機付 |
エンジン出力 | 160[PS]/1,800[rpm] ※ |
※ JIS規格の呼称変更により新表示では185[PS]
■ 動力伝達
クラッチ | トルクコンバータ付湿式、多板油圧クラッチ |
変速機 | 高低速2段 |
逆転機 | 前後進切換(等速) |
駆動輪 | 前後2軸駆動 |
■ ブレーキ方式
主ブレーキ方式 | 空気ブレーキ |
補助ブレーキ | ネジ式手ブレーキ |
■ 主要装置
転車装置・転車台 | 大型自動転車装置 |
離線装置 | 離線車輪付手押 |
撒砂装置 | 全車輪前後方向切替 |
連結器 | 自動連結器 |
連結器高さ | 880[mm] |
■ 積載荷重・定員
荷台積載荷重 | 2.5[t] |
運転室座席定員 | 5人 |
■ 空気・燃料容量
空気圧縮機形式 | C600 |
元空気ダメ容量 | 140[L](70[L]×2) |
燃料タンク容量 | 120[L] |
■ 牽引性能
勾配 | 積載重量 | 牽引重量 | 単車積載時 | 重量牽引時 |
水平線 | 2.5[t] | 160[t] | 50[km/h]以上 | 45[km/h]以上 |
10‰ | 2.5[t] | 110[t] | 45[km/h]以上 | 20[km/h]以上 |
25‰ | 2.5[t] | 60[t] | 40[km/h]以上 | 15[km/h]以上 |
参考文献
1)松田務 『MC -一般型モーターカー見聞録-』, トワイライトゾ~ン マニュアル11, ネコ・パブリッシング, (2002)
2)尾西定明 『大型軌道モータカーの構造と取扱』, 交友社, (1967)