KSP-2002


■概要
平成8年度にJR東日本が導入したバラストレギュレーター。
KSP-2001をベース車として主に都市部の作業用として開発された。
従来のKVP-2000,KSP-2000,KSP-2001では都市部の
・複線以上の区間が多数ある
・高架区間等により砕石流出防止及び歩行板設置のため砂利止板設置区間が多い
・民家が線路に近接している
といった条件では作業がしにくく稼働率が低下する懸念があったため、本形式が開発されることとなった。

複線以上の線路が存在する区間や砂利止板設置区間が多い場合、サイドプラウを使用した道床かき上げ、かき込み作業による砕石補充ができない箇所が発生し、砕石を別途補充する必要が生じる。
これをMTTの後追い施工と同時施工とするため、最大7㎥の砕石を搭載できるホッパーを装備した。
砕石補充の頻度をできる限り少なくするため、メインスイーパーで均された後の余剰砕石を再度ホッパーへ積込むことができる構造となっている。
また、サイドプラウを使用した砕石抱え込み作業が線形的に不可能な区間に配備されるため、サイドプラウでかき上げた砕石を軌道内に掃き出すためのフロントプラウは装備されていない。

都市部では民家が線路に近接しており、スタビライザーによる軌道への加振をした際に苦情等の民家への影響が考えられたため、振動の低減についても試験・開発が行われた。
その結果、スタビライザーのアンバランスウエイトを軽くすることで振動の発生を軽減した。

 

■主な装備・機能


△KSP-2002の主要装備 文献2)より

1.サイドプラウ
車両前部に装備され、道床肩の形成を行う。
作業室内の操作レバーは片側のサイドプラウを2本のレバーで操作する構造となっている。

 

2.スタビライザー
偏心荷重による水平振動を発生させMTT施工後に軌道を初期沈下させる。

 

3.メインスイーパー
スイーパーブラシ、クロスコンベアー、スイーパープラウで構成される。
スイーパーブラシでMTT施工後に散らばったバラストを前方のクロスコンベアーへ向けて掃き出す。
クロスコンベアーは左右どちらか一方、左右両方、ホッパーゲートへ向かうスティーブベルコンのいずれかへバラストを運搬する。
スイーパープラウは大量のバラストがクロスコンベアーで運ばれた場合に建築限界に支障する部分の
バラストを建築限界外へ押し出す。

 

4 .回転ブラシ
スイーパーブラシで掃き出しきれないレール底部と締結装置付近のバラストを掃き出す。

 

5.ホッパー
最大7㎥の砕石を搭載可能。MTT施工後の砕石不足箇所にホッパー下部のホッパーシュートより砕石を散布する。
車体側面のホッパーゲート及びスティーブベルコンより砕石の補充が可能となっている。
運用開始後にホッパーシュートの開閉蓋に砕石が挟まり歪む、開閉蓋部で砕石が詰まるといった問題が発生したため、ホッパーシュートの開閉蓋の構造が上下開閉式からスイング開閉式に変更された。


△ホッパーゲート開状態 文献3)より


△ホッパーシュート開閉蓋の構造 文献3)より

 

 

参考文献
1)交通建設『技術力を磨く バラストレギュレータ』
https://www.kotsukensetsu.jp/construction/pdf/H26kouken-autumn1.pdf(2022/12/11)
2)猪狩信人『新型バラストレギュレータの導入(KSP-2002型)』,新線路,51巻6号,鉄道現業社,(1997.6)
3)内藤浩二『KSP-2002の導入結果<都市型バラストレギュレータ>』,新線路,54巻7号,鉄道現業社,(2000.6)