HTM350S


■概要
トンネルの補修作業等に用いられるトンネル作業車。JR東日本で導入されている。

2004年に発生した新潟県中越地震において、JR東日本では上越新幹線の魚沼トンネル等で覆工の崩落等の大規模な被害を受けた。これを受けJR東日本では活断層近くに位置するいくつかの新幹線トンネルに耐震対策を実施することとなった。
耐震工事にあたっては深夜帯の限られた時間で作業が必要なことから、既存の施工機械では対応できず、新たに施工の高速化・効率化、安全性が高い施工体制を目的に、専用施工機械編成群の技術・システムが開発・実用化された。この専用施工機械編成群は『STARS編成(Shinkansen Tunnel Aseismic Repair Staging-car)』と呼ばれる。
本車はこのSTARS編成の牽引用に開発された。
STARS編成の導入により、汎用機械では9年の工期を要するところ、2008年9月に開始した工事を2013年度末に完了することが可能となった。

■運用
本車は2008年より製作・導入が始まり、JR東日本の東北新幹線エリア,上越新幹線エリア合わせて12両が導入された。また2010年以後にも導入が確認されている。
STARS編成では編成の前後を挟む形で運用されるが、片側をTMC201といった他社製のモータカーで運用されるケースも目撃されている。
回送時は重連であるが、作業現場では編成を分割し運用される。

△Stars編成。用途により中間のトロが異なる。 文献2)より

STARS編成の運用だけでなく、TMCのような小編成の牽引といった運用も確認されている。

なお2019年以降、STARSⅡ編成牽引用として作業機を搭載しないHTM350SPBが導入されている。

■構造
2軸駆動を用いた全速度域油圧走行方式を採用しており、低速連続移動作業が可能になっている。これは従来のトルクコンバーター方式では低速走行が不安定で作業性・安全性で劣っていたためである。
また重連制御運転装置により、作業台車編成を挟み込む形で運用可能である。加えて片側1両が故障しても編成を保守基地まで帰還できるだけの牽引性能も備えている。
また作業機として機関室横に側面作業台、後位側にアイチ製のスカイマスター TZ10Aを装備している。

本車についてはモータカータイプのHTM350Sと型式が同じで、製造番号も“K3***”の追番となってい居る。形状も運転室や機関室が似ている。
ただ、車台番号はモータカータイプは“T02A-****”であるのに対し本車は“T05A-****”となっている。

 

■ 諸元

全長 10.35[m]
全高 3.3[m]
全幅 4.1[m]
重量 28.9[t]

■ エンジン

エンジン名称 CAT C9 Acert
エンジン出力 350[ps]/1900[rpm]

■ 作業機

高所作業機最大地上高さ 9900[mm](レール上面より)
作業床寸法 2600×900[mm]

■ 走行性能

勾配 牽引重量 単車積載時速度 重量牽引時速度
水平線 125[t] 70[km/h] 65[km/h]
10‰ 125[t] 70[km/h] 35[km/h]
35‰ 125[t] 60[km/h] 10[km/h]

 


参考文献
1.日本除雪機製作所 カタログ HTM350S 高所作業床付 軌道モータカー
https://www.nichijo.jp/wordpress-dir/wp-content/uploads/2015/12/htm350tmw.pdf
2.土屋尚登,下垣正宏,岡村直利,『新幹線鉄道トンネルの耐震対策急速施工技術の
開発と実用化』,建設機械施工,第66巻 5月,日本建設機械施工協会,(2014/05)