R200

概要


R200は、1964年12月に登場したはじめての東海道新幹線向け確認車である。

新幹線の軌道・設備の保守作業が終わったあとに列車の走行に支障がないことを確認して回る車両が確認車である。新幹線における確認車による巡視は1964年10月の東海道新幹線開業時から行われて来た。

当初、確認車専用の車両は存在せず、建設工事時に投入され開業後は保守作業用とされていた軌道モータカーTMC101Bに検知棒を取り付け、走行速度を高める改造などを加えて代用確認車としていた。余談ではあるが、この時代は912形ディーゼル機関車(DD13形の新幹線向け)と931形貨車(ホキ800の新幹線向け)からなる砕石散布列車の回送を確認車代用とすることも認められていた。しかし、代確TMC101Bは高速で走行させるには重量が大きく横取作業が面倒であり、また故障なども多く発生したとされる。

そして、東海道新幹線開業から遅れること2ヶ月、1964年12月に初の確認車としてR200が登場した。

R200のコンセプトは以下のとおりである。
(1) 最高速度70 km/hで走行可能
(2) TMC101Aより重量を軽減した(8.7 t→3.8 t)
(3) 車体上部に投光器を設け照明を強力にした
(4) 車体上部にスピーカを設けオルゴールを鳴らせるようにした
(5) 前面窓に旋回窓を設け悪天候時でも視界を確保できるようにした
(6) レール面下70 mmまでの建築限界支障物を検出するための検知棒を取り付けた(代確TMC101Bと同様)

今では考えられないことであるが、R200は確認走行中に『鉄道唱歌』のオルゴールを鳴らしながら走った。これは保守作業員に対して確認車の接近を明確に知らせることが目的である。

東海道新幹線の保守作業は国鉄から請負業者へ外注する形態を取っていたが、作業統制・指導が行き届かないという問題があった。実際、1964年11月23日に発生した磐田事故では、確認車が通過して旅客列車の営業時間になった朝7時半になってなお請負業者の作業員がタイタンパ作業をつづけていたため、〈こだま 207号〉と触車し、5名が死亡、1名が重症を負った。これを教訓とし、「確認車の運転後はいかなる作業も行ってはならない」という規程を遵守させるために確認車の接近を明確化させる必要があったとされる。

1966年現在、R200は24両存在したが、1973年にR300Aが登場してからは次第に置換えられていった。

 
諸元


■ 寸法・重量

長さ 3,780 mm
3,630 mm
高さ 2,730 mm
軌間 1,435 mm
軸距 2,100 mm(1965年度車2,200 mm)
自重 3.8 t

■ エンジン

エンジン名称 いすゞ DA220
エンジン形式 4気筒
エンジン出力 69 PS/ 2,200 rpm

■ 仕様・設備

駆動輪 1軸駆動
ブレーキ方式 油圧ブレーキ
車輪 絶縁式
充電発電機 交流24 V/ 850 W
オルゴールアンプ 直流24 V/ 15 W
積載荷重 0.5 t(乗務員を含む)

■ 牽引性能

勾配 積載重量 牽引重量 単車積載時 重量牽引時
水平線 0.5 t 5 t 70 km/h以上 40 km/h以上
25 ‰ 0.5 t 5 t 70 km/h以上 40 km/h以上

 
参考文献


1) 西村博志, 『新幹線の確認車』, 新線路, 21巻2号, 鉄道現業社, 1967年2月
2) 『作業員六名死傷……新幹線で作業中「こだま」にはねらる』, 新線路, 19巻1号, 鉄道現業社, 1965年1月
3) 馬越道也, 『きでん室 確認車』, 電気鉄道, 20巻11号, 鉄道電化協会, 1966年11月
4) 久保晋, 『新幹線保守作業後の確認車運行』, JREA, 18巻6号, 日本鉄道技術協会, 1975年6月
5) 湯本幸丸, 『写真解説 保線用機械』, 交友社, 1980年9月 (5版)