SV

■概要

SVは新線の架線延線を目的とする電気作業車である。
SVはStretch Vehicleを指す。

昭和43年より、日本鉄道建設公団は電車線路の新線工事にあたっての、省力化及び施工精度向上を目的とした「電車線路工事の機械化」を検討していた。国鉄においても同様の取り組みがあり、「電車線路作業機械化委員会」が発足し、公団も参加、電柱建柱車や架線延線車などの開発を行なっていた。
国鉄新幹線では架線延線車の配備がされ電車線保守に活躍したが、公団では使用目的が建設線工事に限られることから、独自の架線延線車が開発されることとなる。
こうして昭和46年11月に在来線向けの架線延線車SV-1、その後の昭和53年には新幹線向けのSV-Sが開発されることとなる。


 

SV-1

△SV-1 後位側から見た写真 文献6)より

■概要
東海道新幹線で活躍していたSWを参考に車両限界の小さい在来線用に開発されたものがSV-1である。
昭和46年11月に1両が完成し、昭和46~47年度の武蔵野線府中本町〜新松戸間の工事に使用された。
160PSのモータカー、固定作業台、昇降式作業台、延線機、架線案内装置、架線引き留め装置、2.9tクレーン装置で構成される。ちょう架線及びトロリ線のドラムは10tトロに連結され、RV-1と共に架線延線作業を行なった。

■構造
・車体
架線延線時に一定低速運転をする為、油圧駆動方式が採用されている。
転用に伴う解体輸送を考慮した設計となっており、輸送解体時は全高を3,000mmに抑えることができる。
・作業台
作業台は前部作業台、昇降作業台、中間作業台で構成される。
後位に設けられた昇降作業台は油圧により作業床高さをレール上面から5,000mm(ストローク1,900mm)まで上昇できる。また昇降作業台には架線案内装置が設置されており、延線時に水平方向に700mm(電動)、垂直方向に600mm移動して架線の案内が行える。
・延線機
中間作業台のほぼ中央に設置してあり、直径1,400mm、幅750mm、重量3t以下の電線ドラムを保持できる。延線時にドラムよりちょう架線及びトロリ線の繰り出しが可能な他、500kg以下の任意の張力に一定保持できる油圧ブレーキを装置を内蔵している。この張力制御は運転室内から操作可能である。また、延線機下部には電線ドラムを着脱するためのドラム昇降用油圧シリンダを有している。
・クレーン
車体の右前部に、電線ドラム及び架線用金具を中間作業台上に吊り上げる2.9t油圧クレーンを装備している。

 

■ 諸元

・寸法

全長 8810[mm]
全幅 2645[mm]
全高(格納時) 4000[mm]
自重 約25[ton]

 

・エンジン

機関 183[PS]/1800[rpm]

 

・走行性能

回送時 45[km/h]
作業時 5[km/h]

 


 

第1世代SV-S

△延線車とドラム積載車により構成されるSV-S 文献7)より

■概要
昭和53〜54年に日本鉄道建設公団では、上越新幹線の新線建設工事のためにSV-Sが5セット導入された。SV-Sは架線延線車のSV-S-Aとドラム積載車のSV-S-Bで構成された。
SV-S-Aは国鉄の延線車と比較して、回送速度が求められないことから、走行速度が35km/h(国鉄では70km/h)と低く、機関出力を小型にすることで経費節約が図られている。また、勾配によらず低定速走行による安定した延線作業が可能となっている。

■構造
SV-S-Bは付随車としてSV-S-Aに連結され、4つのドラムを積み込める構造となっている。
また、ドラム積載用のクレーンと作業台、架線案内装置を装備している。
その他、転用に伴う陸送を容易にするため、軽量化が図られている。

 

■諸元

SV-S-A(架線延線車)

・寸法

全長 6840[mm]
全幅 3000[mm]
全高(格納時) 4300[mm]
自重 約20[ton]

 

・エンジン

機関 139[PS]/1700[rpm]

 

・走行性能

回送時 35[km/h]
作業時 5[km/h]

 

SV-S-B(ドラム積載車)

・寸法

全長 6840[mm]
全幅 3000[mm]
全高(格納時) 4300[mm]
自重 約15.5[ton]

 


 

第2世代SV-S

△延線システムが1両にまとまられたRV-S 文献8)より

■概要

第1世代で2両編成で行っていた作業を1両で実施できるようになっている。

■構造
昇降作業台、延線装置、引留装置、架線案内装置、クレーン、ドラム積載装置を備えている。
延線装置は引留装置と一体で構成され、ドラム積載装置の上のドラムを挟み込み、さらにドラムを上昇させる一連のシステムを自動化したことで、延線作業の効率化が図られている。
引留装置は油圧シリンダーにより5トンの張力をかけられる。

 

■諸元

・寸法

全長 8200[mm]
全幅 2850[mm]
全高(格納時) 4100[mm]
自重 約21[ton]

 


参考文献
1.日本鉄道建設公団 東京支社『上越新幹線電気工事誌』,(1983.11)
2.日本鉄道建設公団 関東支社『津軽海峡線工事誌(電気)』,(1988.8)
3.電車線工業協会『「電車線技術進展のあゆみ」Q&A』,(1997.5)
4.山口浩一, 樋口芳久『日本鉄道建設公団における 電車線工事の機械化』,電気鉄道,27巻,6号,鉄道電化協会,(1973.6)
5.浅香正賢『昭和53年度官公庁、建設業界で採用した新機種 日本鉄道建設公団』,建設の機械化,353号,鉄道電化協会,(1979.7)
6.富士重工業株式会社 車両事業部 車両工場概要 パンフレット
7.富士重工カタログ 架線作業車(架線延線装置付) [型式:SV-S]
8.富士重工カタログ <新型>電気作業用軌道モータカー(延線車) [型式:SV-S]