東急車輛の検測車


■概要
大手鉄道車両メーカーである東急車輛(現:総合車両製作所)はレール探傷車を製造していた。
東海道新幹線開業時に製造した923-1及び山陽新幹線開業に伴い製造した923-2は保守用車ではなく鉄道車両であったが、探傷速度は営業列車と比較して非常に低速であり営業時間帯に走行することは無かったことから、その後に製造する東北・上越新幹線向け探傷車からは保守用車として製造している。
なお同社は探傷車の車体製造を担当しており、探傷装置は東京計器が、発電機を搭載した付随車は堀川工機が製造を担当している。

確認されている同社製の探傷車は下記の4両であり、技術的な変遷を下記に示す。

△文献11)内 表-4を引用の上赤字部を追記

 

■923形
東海道新幹線開業に合わせて1965年に導入された。
車体側面に設けられた出窓が特徴的で、この出窓から係員がキロポストを確認しボタンを押下することでキロポストマーカーを記録用紙に書き込んでいた。
探傷装置は逐次改良が加えられており、下記に詳細を示す。

△博多総合車両部に配備された923-2とE-RF102
探傷方式 超音波パルス反射法および透過法
探触子方式 水ギャップ法による摺動型探触子方式(登場時のみ)
水ギャップ法によるタイヤ方式(登場時は問題があったため使用せず)
摺動探触子ブロック(登場時のみ) 複合探触子
探傷速度 20[km/h](登場時)
30[km/h](1972年改造後)
40[km/h](1975年改造後)

 

△923形の探傷方式の変遷

 

■923形付随車
923形には電源と水を供給する付随車が連結されていた。
付随車は製造メーカー不明・機械番号不明の初代付随車と、その後の改良にて導入された東急車輛の楕円銘板が取り付けられたRF-102が確認されている。RF-102は堀川工機のカタログにE-RF102として掲載されており、東急車輛製の探傷車とは大きくスタイルが異なることから堀川工機製と推定される。
E-RF102は923形が引退した後も東海道新幹線の第2世代探傷車と編成を組成し使用されており、詳細はそちらに示す。

△発電機2台、水タンク2個、清掃装置が搭載された初代付随車 文献4)より
△堀川工機製 E-RF102 なお機械番号はRF-102である。 文献12)より

 

■東北・上越新幹線の探傷車
東北・上越新幹線の開業にあわせて開発された探傷車で1982年に製造された。
型式は不明であるが、東北地域本社所属の1両が存在した。
外観上の特徴として、地点検知が自動化されたことでキロポスト目視確認用の出窓が無くなり車体幅が拡幅されている。
探触子は摺動式を採用しており、探傷速度が向上している。

△出窓が無くなりすっきりとした側面である 文献9)より

 

■東海道新幹線の第2世代探傷車
923形の置換用として1988年に製造された。
型式は不明であるが、機械番号 RD-100として知られる。
前述の東北・上越新幹線の探傷車をベースに継目部ボルト穴割れ検出機能が追加されている。

 

参考文献

1)伊藤『新幹線レール探傷車』,新線路,19巻,2号,鉄道現業社,(1965.2)
2)『新幹線のレール探傷車』,セイフティダイジェスト,11巻,9号,日本保安用品協会,(1965.8)
3)中村林二郎・土棚敏夫・芹沢正直『10.レール探傷車』,鉄道技術研究所,高速鉄道の研究 : 主として東海道新幹線について,研友社, (1967)
4)鈴木孝治『新幹線のレール探傷車』,新線路,26巻,11号,鉄道現業社,(1972.11)
5)鈴木孝悟『新幹線レール探傷車の改造』,新線路,26巻,11号,鉄道現業社,(1972.11)
6)中村隆一『新幹線レール探傷車の改良』,新線路,30巻,10号,鉄道現業社,(1976.10)
7)車輌設計事務所貨車『923形式新幹線用レール探傷車』,車輛工学,48巻,2号,車輛工学社,(1979.2)
8)『新幹線レール探傷車』,新線路,35巻,10号,鉄道現業社,(1981.10)
9)『東北・上越新幹線の超音波探傷車』,新線路,36巻,6号,鉄道現業社,(1982.6)
10)小川茂俊・土棚敏夫『新しい超音波探傷車について』,鉄道線路,30巻,6号,(1982.6)
11)宮本英雄・三井寛人『東海道新幹線の新型「超音波探傷車」の構造と取扱い』,新線路,42巻,8号,(1988.8)
12)堀川工機株式会社『RAILWAY MOTOR・CAR & DISEL LOCOMOTIVE』