TOC38STWBU-T


杉戸電気施設管理署(東武動物公園駅構内)配備の本機種。後輪直上にある給油口つきの筐体が発電機と思われる。

■概要
東武鉄道では電車線設備保守作業に軌陸高所作業車を使用している。1)年に1回電車線総延長約1,200kmを巡回する精密検査にも使用されており、軌陸高所作業車の稼働頻度は比較的高いほうといえる。2)

00年代中盤より、90年代頃に導入した軌陸高所作業車の更新を検討し始めたが、この際に次世代車はエンジンまたはバッテリー駆動が選択可能なハイブリッド仕様とする事になった。3)二酸化炭素排出量削減による地球環境配慮と沿線への騒音被害防止を目的としており、騒音被害については載線時の油圧ポンプ駆動に伴うエンジン駆動音が問題視されていた。
当初はバッテリーへの充電方法についてブレーキ操作に伴う回生充電が検討され、バッテリーについてはハイブリッド自動車等に搭載されているニッケル水素バッテリーまたはリチウムイオンバッテリーの採用を検討していた。
しかし前者は回生装置の新規開発や搭載スペースの確保、重量等の問題から断念し、夜間照明用の電源として搭載している車載発電機にコンセントを挿し込む事で充電する事とした。なお基地において外部電源(AC100V)からの充電も可能としている。
後者についてもメーカーから供給が受けられなかった事から断念し、小型船舶や電動カートで採用例のあるオプティマバッテリーを採用する事になった。4)


本機種のバッテリー駆動時の動力系統図。発電機ないし外部電源からAC100Vを充電器およびバッテリーに供給し、走行用動力等の油圧ポンプを駆動させている。
品川(2015)図2より引用

平成19(2007)年に1号車が導入されて以降、全線において導入が続き、現在においては全車両がハイブリッド仕様となったものと思われる。1号車導入時に計算したデータによると、前述の精密検査時において二酸化炭素排出量2,600kgならびに軽油137Lの削減を達成し、騒音においてもエンジン駆動時67.3㏈に対しバッテリー駆動時54.0㏈と大幅な低減を実現している。

架装は東洋車輌が担当し、TOC38STWBU-Tの形式が与えられた。なお前世代車は松山重車輌架装の個体が多数確認されているが、本機種以降の同社における軌陸高所作業車は全て東洋車輌架装となっている。
東洋車輌製軌陸車のうち、ハイブリッド仕様の製作例は本機種が確認されている中で最古であり、本機種がその後の技術的基礎となったものと思われる。

■参考文献
1)品川昌之『ハイブリッド型軌陸両用架線作業車の開発について』,第23回鉄道電気テクニカルフォーラム論文集,(2010)

■脚注
1)実作業は子会社である東武エンジニアリング㈱に委託している。
2)全線で12台が在籍しており、週に2回ほど稼働し1回で2~3kmほど走行するとの事。
引用元:https://twitter.com/kaffebitte_/status/1599286211428122624
3)小坂昌裕『川越電気区の概要』,鉄道と電気技術,25巻8号,(2014.8)によると、バッテリー駆動が可能な装置は転車台、高所作業装置、走行装置としている。
4)米国オプティマ社が開発した大容量・密閉式のドライバッテリーの事。


製造番号:1060

製造番号:不明

製造番号:1276

製造番号:1380