鉄道車両の車籍


鉄道車両に於いて使用される「車籍」の概念は感覚的な物であり非常に曖昧である。
しかし保守用車総合データベースであるMCDBにおける保守用車及びそれに類する車両の取扱範囲を定める上で明確な基準が必要となるため、ここにMCDBとしての車籍に対する考え方を整理する。

まず、「車籍」に対する一般的なイメージとして下記が挙げられる。

・鉄道車両(鉄道事業の用に供する車両)が有する≠保守用車は有さない
・鉄道車両が新製された際に登録する
・鉄道車両が廃車された際に抹消する

上記を各観点ごとに整理した。

1.車両確認申請から見た「車籍」
「車籍」という単語は法的に定めるところは無く、鉄道事業法 第13条「車両の確認」及び、鉄道事業法施行規則 第20条に定める「車両確認申請」がそれに該当すると言われてきた。
「車両の確認」は「鉄道運送事業者及び第二種鉄道事業の許可を受けた者は、車両を当該鉄道事業の用に供しようとするときは、その車両が鉄道営業法第一条の国土交通省令で定める規程に適合することについて、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣の確認を受けなければならない。」という物で、これに基づき車両の構造及び装置を確認する「車両確認申請」が必要となる。
「車両確認申請」は前述の通り構造及び装置を確認するもので型式ごとに実施され、同型式で構造及び装置に変更が無ければ新造された鉄道車両1両1両に対して実施されるものではない。
また、一度「車両確認申請」を行った鉄道車両の構造及び装置を変更する場合は「構造装置変更確認申請」が必要になるが、逆に構造及び装置の変更が無い場合は「車両確認申請」に「更新」や「抹消」概念は無い。

このことから「車両確認申請」においては鉄道事業の用に供するかどうかは判断できるが、車籍の有無を判断するには不適である。
また、確認のため国土交通省への情報公開請求が必要となることも留意が必要である。

2.車両の定期検査から見た「車籍」
車両(機関車、旅客車、貨物車及び特殊車であって、鉄道事業の用に供するもの)は 鉄道に関する技術上の基準を定める省令 第90条 に定める「施設及び車両の定期検査」が必要となる。
この「施設及び車両の定期検査」は鉄道車両1両1両に対して行われ、検査の「更新」や「検査切れ」の概念があるため、「車籍」の概念により近いと言えよう。
また、検査記録を表記することが定められているため外部から検査状態について判断しやすいというメリットがある。
しかし「施設及び車両の定期検査」の詳細を定めた 施設及び車両の定期検査に関する告示 第6条 検査の特例 において「使用を休止した車両の検査に係る期間の計算については、その使用を休止した期間は、算入しない。」(いわゆる「休車」)が定められており、事業者によっては休車札を掲示しないため、「検査切れ」との区別が困難である。

3.鉄道事業者から見た「車籍」
上記の法的根拠に基づく管理だけでは、鉄道事業者が保有している鉄道車両の管理上の情報量が不十分と思われるため、鉄道事業者によって独自に「車籍」を登録・抹消し管理を行っている。
これらは「車籍」の登録・抹消が明確であるが、これらの記録を確認するには鉄道事業者からの情報が必要となる。
鉄道事業者団体の統計や各鉄道事業者の設備投資計画などに記載されているが、事業者団体に属さない鉄道事業者が存在したり統計も不正確であったりとその情報量はまちまちである。

 

登録 更新 抹消 確認し易さ
車両確認申請

 

× ×
定期検査

 

 

 

 

 

 

休車との

区別が難しい

 

 

事業者情報

 

これらの現状を踏まえ、MCDBでは取扱範囲図において「車籍」という単語は使用せず、「車両確認申請」、「鉄道事業者が鉄道車両としての扱いを取りやめた場合(定期検査の抹消または期限切れ)」という明確な概念で取扱範囲を定めた。