MS0239


■概要
自走用動力を持たない測定用台車。
軌道検査の車上化を目的として、軌道検査測定装置と継目板検査装置からなる線路設備診断システムを搭載して2016年に山陽新幹線に導入された。
2022年に車体後部へトンネル覆工表面検査システムの追加搭載改造が行われている。

 

■軌道検査測定装置(V-cube)
3台のラインセンサカメラと形状データカメラから構成され、マクラギ方向に軌道全体の画像を取得し、画像解析により軌道部材の要整備箇所を検知することができる。

△軌道検査測定装置 文献2)より

 

■継目板検査装置(FPIS)
4台のラインセンサカメラを用いてレール腹部・継目板の画像を取得し、画像解析により軌道部材の要整備箇所を検知することができる。

△継目板検査装置 文献2)より

 

■トンネル覆工表面検査システム
1999年に山陽新幹線で発生したトンネルコンクリート剥落事故以降、軌陸SATUZOを用いてトンネル覆工表面検査を行って来たが、これの老朽取換に合わせて新システムを開発しMS0239に搭載することとなった。

新システムは技術革新が進んだ高速道路で用いられているトンネル覆工点検システムを参考に、道路と鉄道での使用環境の違いを踏まえ開発が行われた。
照明装置とラインセンサカメラからなる撮影ユニットを9台設置しトンネル半断面を撮影できる仕様となっている。

△文献3)より

また、鉄道ではカントによる車体の傾斜により被写体との距離が変化しピントがズレる問題があったことからカメラごとに距離計を設けて焦点距離を制御する機構としている他、検測車は年間運用計画が決まっており、雨天時の作業延期が難しいことから撮影ユニットにはエアワイパーを装備し雨天でも作業可能な構造となっている。

 


 

 

参考文献
1)桶谷栄一『画像処理技術等を活用した線路設備診断システム』,新線路,71巻,1号,鉄道現業社,(2017.1)
2)津田晃宏『「線路設備診断システム」による軌道部材の検査判定』,新線路,71巻,12号,鉄道現業社,(2017.12)
3)西日本高速道路・西日本旅客鉄道『”新”新幹線用トンネル覆工表面検査システムの実運用化について』,(2023.3.29)
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230329_01_press_system.pdf
4)丸山直樹・櫻谷慶治『新幹線用トンネル覆工表面検査システムの開発』,日本鉄道施設協会誌,62巻,2号,日本鉄道施設協会,(2024.2)