目黒工業製バラスト作業車のうち国鉄の東海道・山陽新幹線で使われたものは、改良を重ねつつ複数の形式が存在したが、本項では纏めて解説する。
■概要
MMK-SBCの作業車(国鉄時代のBS-102-S)
レール下にスクレイパーチェーンを通した状態
新幹線では道床交換作業の機械化のため、1968年にPlasser & Theurer製のRM 62を導入した。しかし騒音が激しかったため上手く活用することができず、作業はは人力に逆戻りしていた1)。一方その頃、私鉄ではより小型かつ騒音の少ない国産の目黒製バラスト作業車が普及しはじめており、国鉄でも1975年にまず在来線で試験導入された2)。その後、バラスト軌道である東海道・山陽新幹線の東京~岡山間向けとして目黒製バラスト作業車が本格的に採用され、作業の機械化が進められた。
新幹線向けの目黒製バラスト作業車概要図(1978年導入車)
石井 八郎「バラスト作業車による道床更換作業について」『保線講演会記録:第34回』,1981年,pp.168-176より
新幹線におけるバラスト作業車を使用した作業の概要図
石井 八郎「バラスト作業車による道床更換作業について」『保線講演会記録:第34回』,1981年,pp.168-176より
新幹線に当初導入されたのは、篩い分け装置を持たないバラスト作業車であった。道床交換は上図のような複線式作業で行われ、発生バラストの回収・運搬にはダンプトロ編成が、新バラストの投入には931形貨車が用いられた3)。
バラスト作業車は1977年に導入が始まり、その後1982年までに各保線支所へ1台ずつ配置されるに至った4)。分割民営化前の1986年における配置は以下のとおり。
1986年3月における新幹線用バラスト作業車の配置5)
保線所 | 東京 | 静岡 | 名古屋 | 大阪 | 岡山 |
配置数 | 2 | 3 | 3 | 3 | 2 |
国鉄の分割民営化後、JR東海には上記のうち10台が引き継がれたが、東京・浜松配置の計2台は1977年製の初期型で老朽化が進んでいたため、同じく目黒製で篩い分け装置付きのバラストクリーナー2台に置き換えられた。また従来の作業車の一部にも篩い分け装置の追加取り付けが行われた6)。
新幹線向けのバラスト作業車は目黒製の中でも最も遅くまで残存し、JR西日本のBS-113-Eが最後の1台として、少なくとも2022年まで存在が確認されている。
■諸元
代表的な諸元は以下の通り。
・作業車
1978年度導入車7) | 1988年度導入車8) | |
全長 | 12.0[m] | 12.0[m] |
全幅 | 3.25[m] | 3.25[m] |
全高 | 3.3[m] | 3.9[m] |
自重 | 25.0[t] | 30.0[t] |
篩い分け装置 | 無し | 有り |
掘削深さ | 200~300[mm] | 150~300[mm] |
掘削幅 | 3800~4300[mm] | 3800~4300[mm] |
作業可能最大カント量 | 180[mm] | 200[mm] |
作業速度 | 25~50[m/h] | 30~60[m/h] |
・電源車
1978年度導入車7) | 1988年度導入車8) | |
全長 | 7.8[m] | 7.8[m] |
全幅 | 2.8[m] | 2.8[m] |
全高 | 2.6[m] | 2.6[m] |
自重 | 13.5[t] | 14.0[t] |
エンジン | 108[PS]/1800[rpm] | 166[PS]/1800[rpm] |
発電機 | 85[KVA]/220[V](60Hz) | 125[KVA]/220[V](60Hz) |
■文献
1)石井 八郎「バラスト作業車による道床更換作業」『新線路』34巻12号,1980年,pp.34-37.
2)石原 一比古「新しく開発された道床作業用機械」『新線路』29巻5号,1975年,グラフp.
3)石井,前掲1.内田 雅夫「バラスト作業車による道床交換作業」『新線路』33巻6号,1980年,pp.34-37.
4)塙 光雄「新幹線保守特集について」『日本鉄道施設協会誌』25巻13号,1987年,pp.8-11.
5)日本鉄道施設協会「施設年報 第1部 年間記録 Ⅰ:国有鉄道 A:総論」『日本鉄道施設協会誌』25巻3号,1987年,pp.5-57.
6)市川 公洋「道床交換:ふるい分け機能付きバラスト作業車」『日本鉄道施設協会誌』27巻11号,1989年,pp.23-25.官報第18523号(昭和63年11月19日土曜日)本誌「政府調達 落札者等の公示(GATT)」に、JR東海向けバラスト作業車2両の製造を目黒工業が落札したとあり、置き換え分も目黒製であったことが分かる。
7)石井 八郎「バラスト作業車による道床更換作業について」『保線講演会記録:第34回』,1981年,pp.168-176.
8)市川,前掲6.
■MKK-SBC
■MKK-85SB
■形式不明