MTT-18

(写真:MTT-18A。石原(1978),写真-9より引用)


■概要
マルタイの導入により道床搗き固め作業の機械化を達成しつつあった国鉄では、分岐器区間の搗き固め作業も機械化する事を目論んだ1)。重マルについては昭和42(1967)年にPT製スイッチマルタイであるPLM-275が導入された2)3)が、一方で電マルについても国産初のスイッチマルタイである本機種を開発する事になった。
昭和39(1964)頃に鉄道技術研究所で試作機が製作された4)後、翌昭和40(1965)年にMTT-18Aが完成し国鉄へ納入されている5)


昭和39(1964)年に製作された試作機。この時点では自走機能も無かった4)が、タンピングユニットの構造は翌年に完成する本機種とほぼ同一となった。鉄道線路(1964.6)写真①より引用。

■構造解説

タンピングユニットの図解。秋元(1964.8)図3より引用。
フレームから旋回機能付きのタンピングユニットが吊り下げられており4)、油圧モーターによりタンピングユニットの左右移動および旋回が可能である。5)さらにタンピングユニットは左右各4本、中央2本の計10本のツールが装備されており、左右のツールは取付されている可動フレームごとローラーチェーンを介して横移動が可能である。5)一方で中央に固定された2本ツールは”補助タンパー”と呼称され、クロッシング部やリードレール部等の狭い部分の搗き固めにのみ使用する4)。なお補助タンパーは通常時は下降しない様にロックされている。6)



タンピングユニットの外観(上)と搗き固め作業中のタンピングユニット(下)。中央に配置された補助タンパーでクロッシング部を搗き固めしている事が分かる。(上)秋元(1965.7)、(下)JREA(1966,3)より引用。

その他の性能は同時期に開発されたMTT-17Bと同一である。諸元を下記に示す。

MTT-18A
全長×全幅×全高 約7m×2.8m×2.95m
総重量 約14,000kg
原動機 型式 いすゞDA120P
ディーゼル
定格出力 76.5ps/1,800rpm
3相交流
発電機
25KVA-220V-60c/s
直流発電機 2KW 100V
タンピング
装置
起振用
電動機
600W(6台搭載)
ツール数 10本
走行速度 45km/h(平坦)
26km/h(勾配25‰)

新線路(1965.10)から抜粋し作成。

開発当初は上記タンピングユニットを左右2対設けたものを目指したが7)、技術的に難しくオペレーター1人操作にも向かない事や、そもそも1個のタンピングユニットが移動する事で性能的に充分であった事から、試作機および完成機は上述のタンピングユニット1個装備の仕様となっている。5)

結果的に旋回し横移動するタンピングユニットを装備する独自の仕様に至り、類似の機種が見当たらない意欲作となった。
ただしタンピングユニットの構造の複雑さから故障が多く、昭和51(1976)年時点で殆ど使用されなくなっていた。8)
昭和53(1978)年時点で3両が国鉄に在籍していた1)が、この時点での配置場所やその後の淘汰時期も不明である。

また国鉄以外においても、製鉄所へ納入されたとの記述が芝浦製作所(1989)p65にあるが、納入先名や両数など詳細は不明である。

■参考文献
1)『国鉄で試作された分岐器マルタイ』,鉄道線路,12巻6号(1964.6)
2)秋元清『ポイントマルタイ』,新線路,18巻8号(1964.8)
3)秋元清『ポイントマルタイ』,新線路,19巻7号(1965.7)
4)『軌道保線機械のいろいろ』,JREA,9巻3号,(1966,3)
5)石原一比古『大型保線機械の歴史・開発とその経過』,鉄道線路,24巻10号(1976.10)
6)石原一比古『電マルの生いたち』,新線路,32巻4号,(1978,4)
7)株式会社芝浦製作所『50年のあゆみ』,(1989)
8)新線路,19巻10号,(1965.10)芝浦製作所広告

■脚注
1)石原(1976)
2)なおほぼ同時期の昭和41(1966)年にマチサ社BUN 70も東海道新幹線大阪保線所に導入されているが、石原(1976)ではこの機種については言及していない。
3)秋元清『輸入されたマルチプルタイタンパ』,新線路,21巻9号(1967.9)
4)鉄道線路(1964.6)
5)秋元(1965.7)
6)JREA(1966.3)
7)同時期に海外で実用化されていたPT製PLM-275の影響と思われる。
8)石原(1978)