MTT-51

 

概要


M51は1981年に開発された国産初の重マルである。それまでの国産(芝浦製)マルタイはタンピング機構が電気振動式のいわゆる電マルと呼ばれるタイプであったが、より強力なタンピングをねらって外国製(プラッサーまたはマチサ)並みの機械振動式のタンピング機構を持つ重マルが開発された。

M51は下記の要点により開発された。
1)タンピング機構を機械振動式とする。
2)タンピングと同時にライナー作業を可能とする。
3)レール扛上装置は車体を反力としてレールを扛上させる方式とする。
4)作業速度の向上をはかる。
5)走り装置は2軸ボギー台車として走行安定性の向上をはかる。
6)作業性の向上をはかる。
7)保守をしやすくする。

M51は箱形の車体を持ち、回送の便をはかって運転室を前後に設けている。
エンジンは直噴式ディーゼルエンジンの三菱8DC-60W(190[PS]/1,800[rpm])を1基搭載。走行伝達装置にはトルクコンバータを用いている。
台車は前後ともに2軸ボギー台車を用いており、軸距は1,800[mm]、車輪径はΦ762[mm]である。

タンピング装置は、従来の電マルは電動モータによってタンピングヘッドを振動させる機構であったが、重マルとなり油圧モータによってタンピングヘッドを振動させる機構になった。タンピングヘッドは1組備えるが、タンピングヘッドを移動させることで1回の枕木間移動とで2本の枕木を突き固めることができるセミダブル方式となっている。
レベリング装置は、高低水準検測装置、レール持上げ装置、制御用コンピュータから成る。高低水準検測装置は2本の基準ワイヤーを車体前後に張り、検出器により検出するものである。レール持上げ装置はローラーによりレール内外をクランプする方式である。
ライニング装置は、通り検測部、レール横押部、制御用コンピュータから成る。通り検測は車体前後に検出台車を下ろし、軌間の中央に一定張力で張ったワイヤーを基準にして行う。ライニング機構は、レベリング装置のレール持上げ装置に組み込まれたレール横押部により行う機構となっている。

国鉄向けとして開発されたため国鉄に納入されたほか、仙台市交通局や名古屋鉄道での導入がみられる。
結局、国産重マルはこのM51と兄弟機M61のみとなり、以後マルタイは外国製機の天下となっていく。

諸元


■ 寸法・重量

長さ(回送時) 16,000[mm]
2,800[mm]
高さ 3,400[mm]
軌間 1,067/1,435[mm]
軸距 1,800[mm]
車輪径 762[mm]
自重 39[t]

■ エンジン

エンジン名称 三菱8DC-60W
エンジン形式 水冷4サイクル V形8気筒
エンジン出力 190[PS]/1,800[rpm]

■ 性能

作業速度 350-500[m/h]
回送速度 70[km/h]
レール持上げ力 22[t]
レール横押力 14.7[t]
最小作業曲線半径 160[m]
最小作業縦曲線半径 2,000[m]
最大作業勾配 35[‰]

参考文献


1)宮下邦彦『国産重マルの開発』, 新線路, 37巻, 4号, 鉄道現業社, (1983年4月)
2)宮下邦彦『国産重マルの開発』, 鉄道線路, 31巻, 6号, 日本鉄道施設協会, (1983年6月)