■概要
バッテリーを電源としてモーターを駆動する牽引用の保守用車である。
■導入の経緯
小田急電鉄ではディーゼルエンジン搭載の軌道モータカー(以下TMC)を昭和48(1973)年より運用してきているが、TMC更新にあたり以下の課題が抽出された。
1.排気ガス及びエンジン騒音が沿線住民へ及ぼす影響
2.増加する地下トンネル区間での排気ガスが作業員や駅施設に及ぼす影響
3.小田急電鉄が取り組むCSR活動「環境負荷の低減」の一環として環境へ配慮した保守用車の必要性
以上を検証した結果当形式(以下HMC)が平成26(2014)年に導入されるに至った。
■重連制御機能
安全性を考慮し小田急電鉄では1作業において動力車を2台重連又は縦走させることとなっている。当初は試験的な意図を含め1台のみの導入だったためTMCのエンジン出力、トルク調整・制御等をHMC側で制御できるようになっている。また、HMC2台重連で運用できるよう電気制御でシンクロ可能な重連制御機能も搭載している。
■バッテリーの充電
保線基地の200[V}電源からプラグを介して充電できるほかHMCに搭載されている発電機により直接充電を行うことも可能。
■夜間の運用
本線上での走行は屋外の一般部では発電機を稼働させ充電をしながら走行し、地下のトンネル区間や住宅密集地域では発電機を停止してバッテリー駆動に切り替えて走行している。
■HMCとTMCの比較
主要諸元 | HMC | TMC |
自重[t] | 約28 | 約20 |
全長[m] | 8.7 | 8.0 |
全幅[m] | 2.8 | 2.8 |
動力駆動装置 | バッテリー(発電機)
鉛蓄電池 電動モーター |
ディーゼルエンジン
トルクコンバーター 12,500[cc] |
運用編成
(重連) |
レール運搬車
(砕石運搬車としても運用可能) |
砕石運搬車
レール運搬車 |
環境対策 | 排出ガスなし
(バッテリー駆動時) 低騒音型発電機 |
黒煙浄化装置
(DPF) |
参考文献
三瓶公博『次世代に向けた保線重機械の導入を目指して』,日本鉄道施設協会誌,2014年11月号,日本鉄道施設協会,(2014.11)