写真:国鉄が試用したBL 07
『鉄道線路』6巻10号,1958年,グラフpより
BL 07は、MATISAの小型マルタイ(ライトタンパー)である。
■概要
BL07の側面
『鉄道線路』6巻10号,1958年,グラフpより
1950年代後半、国鉄ではMATISA製マルタイの導入を徐々に進めていたが、これは非常に高価かつ取り扱いに高度な技術が必要な機械であった。さらに作業間合い時間を長く確保する必要があり、回送にも時間が掛かるため、効果的に使うには特定の線区に限定して運用する必要があった。
こうした不便を解消するため、国鉄はより柔軟に運用できる機械を求めていたが、国産の電気式マルタイや4頭タイタンパーはまだ実用化に至っていなかった。そこで、すぐに運用できる既製品を試用することになり、1958年に輸入されたのがBL 07であった1)。
BL 07の構造
伊能(1958)より
BL 07はタイタンパー本体2つが支持台車の上に載った構造となっている。タイタンパー本体は①振動フレーム/②中間フレーム/③固定フレームの3層で構成される。①振動フレームには⑥油圧式タンピングツールを4本備えており、②中間フレームから供給される動力で振動および開閉が行われる。
①振動フレームは⑧弾力性振動吸収台で中間フレームと接続されている。②中間フレームには⑨エンジンと油圧機器・制御装置などがあり、ツールを上下するための⑬油圧シリンダーで③固定フレームと繋がっている。
③固定フレームはタンピング中に⑰油圧クランプでレールと位置を固定できる機能を持つ。また③固定フレームは⑯車輪を介して④支持台車の上に載っているため、④支持台車からレール横に置いた退避装置の上に横移動することで、レール上から簡単に取り外すことが可能である。なお自走能力は無く、移動は手押し式である2)。
BL 07のレールクランプ(左)とタンピングツール(右)
『鉄道線路』6巻10号,1958年,グラフpより
BL 07の退避装置(左)と支持台車上からの退避の様子(右)
左:伊能(1958)より
右:『鉄道線路』6巻10号,1958年,グラフpより
本機種は国鉄に2台導入された記録があり、1966年の時点では名古屋局と天王寺局に配置されていた3)。しかし、芝浦製電気式マルタイや吉池製4頭タイタンパーが実用化されたためか、本格的な大量採用には至らなかった模様である。また近鉄が1959年に軌間1435mm仕様を1台導入しており、1970年の時点で上本町営業区に配置されていた4)。
■諸元
諸元は以下の通り5)。
全長 | 1.7[m] |
全幅 | 2.4[m] |
全高 | 1.7[m] |
重量(本体1台) | 約350[kg] |
重量(支持台車1台) | 約40[kg] |
重量(退避装置1台) | 約40[kg] |
作業能力 | 約70~80[m/h] |
タンピングツール | 本体1台につき1丁づき4頭 |
ツール振動数 | 3200[rpm] |
エンジン | JRO 単気筒空冷ガソリン 7[HP](本体1台につき1機) |
油圧 | 40[kg/cm^2](通常) |
運転操作人員 | 本体1台につき1名 |
退避所要時間 | 1分以内 |
■脚注・文献
1)秋元 清「新しく輸入されたタイタンパ」『施設教育』11巻11号,1958年,pp.13-15.伊能 忠敏「ライトタイタンパー」『鉄道線路』6巻10号,1958年,pp.30-31.国鉄側の文献では形式名が出てこないが、近畿日本鉄道『50年のあゆみ』,1960年,近畿日本鉄道,p.236に同じ形状のライトタンパーが写っており、春永 駒男・小林 陽三「保線作業機械化の現状と方向について」『近畿日本鉄道技術研究所技報』2巻1号,1970年,pp.115-123,に形式名が「BL 07」とあるため、国鉄のものも同型と推測される。
2)秋元,前掲1.伊能,前掲1.
3)施設局保線課『保線用機械一覧表:昭和41年3月31日現在』,1966年.
4)春永・小林,前掲1.
5)秋元,前掲1.伊能,前掲1.春永・小林,前掲1.