SES170


■概要
山陽新幹線の地震対策として設置が進められていた逸脱防止ガードが平成28(2016)年に特注品から転用レール方式に切り替えられたのに伴って新型まくらぎへと交換する必要が生じた。
大量のまくらぎ交換を効率的に行うために導入されたのが当編成である。

 

■導入のいきさつ
逸脱防止ガードは新潟県中越地震で新幹線車両が脱線したことを踏まえての減災対策として平成23(2011)年より設置が進められているもので既存のPCまくらぎを交換せずに穿孔して受台とガード材を装着するというものであった。
しかしながら特注品であり高価であったためバラスト軌道区間については平成28(2016)年に中古60[kg]レールを用いた転用レール方式のものに切り替えられることとなった。

転用レール方式のガード材は高さがあり脱線車両の高剛性部材との干渉を避けるためガード材が設置されるまくらぎ中央部を凹形状にした新型まくらぎが開発された。

△新型まくらぎの概要。文献3)より

従来の山陽新幹線におけるPCまくらぎ交換は検査結果に基づく小規模の交換が専らでバックホウを活用して40[本/日]程度の施工であった。
逸脱防止ガード設置に伴う事前の新型まくらぎへの交換実施にあたって現行の保守体制に於いて大量交換を可能とする専用機械の導入が求められた。そのため類似機械の製造等の実績があるメーカーと共同開発して生まれたのが「新幹線用まくらぎ交換機編成」である。

 

■編成の概要
「新幹線用まくらぎ交換機編成」はまくらぎ交換機構(SES170)、軌道整備機構(09-16 CSM)、道床整理機構(SFM20)から構成される。作業現場までは3車両で協調運転を行い、現地で作業進捗に合わせて個々で運転される。
SES170は6[両]で構成され全長は94[m]にも及ぶ。

△SES170の編成。文献4)より

・まくらぎ車上移送装置

△まくらぎ車上移送装置。文献4)より

新旧マクラギを車上置場またはまくらぎ交換装置に車上移送する。

・道床バラスト吸引撤去装置

△道床バラスト吸引撤去装置。文献4)より

既設のバラストをまくらぎ交換のため一時的に3つのノズルから構成される吸引装置で撤去する。一時撤去とすることで編成長を短くすることが可能となっている。

・まくらぎ交換装置

まくらぎを回転させ左右のレールの間から撤去・挿入する。この動きにすることで防音壁が存在する狭隘な環境でのまくらぎ交換を可能にしている。

・レール締結装置設定装置

△レール締結装置設定装置。文献4)より

まくらぎ位置及び軌間を整えてレール締結装置を設置している。

・道床バラスト再散布装置

△道床バラスト再散布装置。文献4)より

一時撤去した道床バラストを集積し再散布する

なお、作業の様子についてはYouTubeのJR西日本公式チャンネルの動画で詳しく解説されている。

 

■作業能力
まくらぎ交換はほぼ全自動化された作業により最大200[本/日]の交換を目指しており2018年には198[本/日]の交換を達成している。

 

参考文献
1)奥平保・橋本貴之『新幹線用マクラギ交換機編成(SES)を用いた逸脱防止対策の推進』,新線路,第71巻10号,鉄道現業社,(2017.10)
2)柳谷勝『山陽新幹線における逸脱防止ガードの整備』,新線路,第70巻12号,鉄道現業社,(2016.12)
3)井上卓也『特殊区間用の転用レール方式逸脱防止ガードの開発』,新線路,第71巻10号,鉄道現業社,(2017.10)
4)柳谷勝『山陽新幹線における新幹線用まくらぎ交換機編成の導入』,新線路,第70巻12号,鉄道現業社,(2016.12)
5)日本プラッサー『メディア – 機械を巡る人々: Vol. 003 リョウさん』
https://www.nipponplasser.co.jp/ja/media-library/operator-voices/vol-003-リョウさん.html(2023.03.11)