B 200

東急のB 242
『新線路』42巻1号,1988年,広告pより

 


 

B 200はMATISA製のマルチプルタイタンパーである。本記事では日本に輸入されたB 241B 242B 244について取り扱う1)

 

■概要

B 200の広告
日本国外で販売されたものは、前後で運転台形状が異なるものもあった
『Bulletin technique de la Suisse romande』102巻25号,1976年,広告pより

 

国鉄に導入されたB 200の概要図
宮下(1984)より

1970年代後半から登場した、MATISA製機械式マルタイの新シリーズである。最大の特徴は、同時代のライバル製品であるPlasser & Theurer製07形と同様の、前後運転台型となった点である。またB 85ではアーチングビームによりレールを押さえてレベリング作業を行っていたが、重軌道化が進んで作業により強い力が必要となったため、車体全体の重量を用いて前後の台車でレールを押さえつける方式に変更された2)。このため、B 133のようにタンピングユニットを車軸間に配置する形態となった。

 

B 200のレールクランプとレベリング・ライニング機構
白井(1986)Aより

レベリング・ライニング機構の基本的な仕組みはB 85までのものを継承しているが、電子制御が多用されるようになり、カント整正やライニング用の自動補正装置も搭載されている。またレールクランプも大型化され、最大ライニング量が従来の±75mmから±200mmへ強化された3)

作業時は前方運転台でレベリング・ライニング操作を、後方運転台でタンピング・カント設定操作を行う仕組みである(レベリング・ライニング用操作箱は運転台から取り外して車外に取り付けることもできる)。操作方法は自動化が進み、ペダルを踏むだけでタンピングツールの上昇・開閉・つき固めが連続して作業できるように改良が加えられたが、その他の基本的な操作法はB 85のものを踏襲しており、オペレーターへの配慮がなされている4)

エンジン出力は従来の180PS/1800rpmから260PS/2100rpmへ引き上げられ、作業時のタンピング速度や前進速度が速くなって作業能力が向上した。さらに箱型車体化によって防音性能もさらに強化され、騒音は後部運転台内で78dB、5m離れて82dBという水準に抑えられている5)

なおB 241はシングル機、B 242はダブル機であり、B 244は障害物を避けて作業ができるスイッチマルタイである。

 

■運用

西武のB 242
他事業者の個体と異なり、西武のものは前後運転台の間がカバーで覆われていなかった
大沢・田中(1979)より

本機種は私鉄での導入が先行した。日本で初めてB 200を使用したのは西武であった。それまで電気式マルタイを使用していた西武は、1977年5月に初の機械式マルタイとしてB 242を導入した。はじめは初期故障が数件があり、誤操作で踏切にてタンピングユニットを破損させたり、エンジンからの動力伝達軸が折損するなどの苦難も多かった。しかし、MATISA製コンパクター・D 9との組み合わせでつき固めに活躍し、一定の成果を上げたという。西武は1979年にもB 242を追加でもう一台導入している6)

 

大阪市のB 244
大阪市交通局発行のスルッとKANSAIレインボーカードより

その他、私鉄では東急が1983年にB 242を7)、小田急が1984年にB 242を8)、南海が1985年にB 241を9)、大阪市交通局が1986年にB 244をそれぞれ導入している。B 244の導入例は大阪市が日本で唯一であった模様だが、半径120mの急曲線でガードレールや第3軌条設備に制限されず作業できる性能が採用の決め手であったという10)

一方、国鉄では1983年度に大阪局へB 242が1台、新潟局へB 242が2台、天王寺局へB 241が1台導入されたのを皮切りに、B 200の配備が進められたようである11)。これらはJR東日本やJR西日本に継承された記録がある12)

後継機種であるB 40への移行やライバル機種の伸長もあったためか、残念ながらB 200は前作・B 85ほどの普及機とはならなかった。世界全体でのB 200の生産数は約100台ほどであったという13)

 

■諸元

代表的な諸元は以下の通り14)

タイプ B 241 B 242
全長 15.540[m](作業時24.710[m])
全幅 2.730[m]
全高 3.700[m]
自重 45.0[t] 47.0[t]
作業能力 400~500[m/h] 600~750[m/h]
タンピングツール 1丁づき16頭 2丁づき32頭
ツール振動数 2160[rpm]
エンジン GM 6V-92N 260[PS]/2100[rpm]

 

■脚注・文献

1)B 200シリーズの2桁目の数字は車軸数を示しており、本来はB 241などのボギー車タイプだけでなくB 221などの2軸車タイプも存在する(例えば『Automatická strojní podbíječka MATISA B221 ve velikosti TT』http://1-2-8.net/mwva/nex/podb.htm(2023/02/27取得)を参照)。しかし日本には輸入されなかったため、本記事では割愛する。

2)宮下 邦彦「新しい外国製マルタイの導入」『鉄道線路』32巻5号,1984年,pp.9-14.

3)宮下,前掲2.白井 国弘「B-200の操縦(2)」『新線路』40巻11号,1986年A,pp.36-38.

4)大沢 白水・田中 治郎「マチサ・マルタイB-242について」『鉄道線路』27巻10号,1979年,pp.35-39.白井 国弘「マチサ・マルタイB-200の操縦」『新線路』40巻10号,1986年B,pp.31-33.

5)今井 順一「新型マルタイの導入」『新線路』38巻6号,1984年,pp.14-18.大沢・田中,前掲4.

6)大沢・田中,前掲4.

7)雨宮 功「線路と保線」『鉄道ピクトリアル』35巻臨時増刊号,1985年,pp.44-46.

8)高橋 康二「線路と保線」『鉄道ピクトリアル』41巻臨時増刊号,1991年,pp.36-37.

9)若竹 義勝「南海電気鉄道における省力化・経費節減について」『JREA』31巻2号,1988年,pp.34-38.

10)阪本 享司「線路と保線」『鉄道ピクトリアル』43巻臨時増刊号,1993年,pp.50-52.

11)今井,前掲5.

12)松田 務「腐ってもマルタイ:今、明かされるマルタイのすべて…」『トワイライトゾ~ンMANUAL』5号,1996年,pp.190-209.

13)Construction Cayola『Les bourreuses Matisa : 75 années d’innovation』https://www.constructioncayola.com/rail/grands-formats/2020/10/13/130523/grand-format-les-bourreuses-matisa-75-annees-innovation(2023/04/29取得).

14)鉄道現業社『保線ポケット事典:第8版』,1985年,鉄道現業社.宮下,前掲2.