■概要
移動式フラッシュバット溶接機を搭載したフラッシュバット溶接車である。山陽新幹線建設工事のため3編成が導入された。
従来消費電流の大きさから定置式に限られていたフラッシュバット溶接機の電流を制御することで、可搬式発電機の電源容量で作業可能となった。これらをトロに積載することでフラッシュバット溶接車を構成し、従来フラッシュバット溶接の適用が難しかった現場溶接を可能とした。
溶接車はフラッシュバット溶接機、クレーン、100[kVA]発電機を搭載したAトロ、溶接機制御装置、180[kVA]発電機を搭載したBトロから構成され、モータカーにて牽引されて移動した。

■溶接機
溶接機本体、動力キャビネット、コントロールパネル、自動トランス、ポンプユニットから構成され、これらがPaton製である。
溶接電流を制御することで少ない電源容量で作業を行えることが特徴で、草津レールセンターで使用されていた定置式フラッシュバット溶接機が750[kVA]の電源を要したのに対し、K-355では180[kVA]電源での作業が可能である。




・溶接機諸元
項目 | 性能 |
単相交流電源電圧 | 360[V] |
周波数 | 50[Hz] |
出力 | 180[kVA] |
使用率 | 50[%] |
一次定格電流 | 395[A] |
溶接定格電流 | 20,000[A] |
二次定格電圧 | 6.3[V] |
被溶接レール最大断面積 | 10,000[mm^2] |
60[kg/m]レールの溶接所要時分 | 約3[分] |
最大クランプ力 | 125[t] |
最大最終強圧 | 48[t] |
使用油圧 | 100[kg/cm^2] |
最大よりしろ | 15[mm] |
最終強圧速度 | 20(mm/sec) |
フラッシング速度 | 0.22~1.00[mm/sec] |
機械の全工程(よりしろ15[mm]のとき) | 70[mm] |
60[kg/m]レール溶接能力 | 10[口/h] |
自動トランス定格出力 | 27[kVA] |
自動トランス定格一次電圧 | 380[V] |
自動トランス定格二次電圧 | 6.3[V] |
ポンプ吐出量 | 63.5[L/min] |
ポンプ使用油圧 | 100[kg/cm^2] |
油タンク油量 | 400[L] |
ポンプ電動機 | 17[kW] |
■搭載用トロ
搭載用トロは高萩製作所製15tトロをベースにしているとみられる。
・搭載用トロ諸元
項目 | 性能 |
積載量 | 15[t] |
走行速度 | 40[km/h] |
制動空気圧 | 約5[kg/cm^2] |
クレーン定格荷重 | 2.5[t] |
クレーンブーム形式 | 2段伸縮式(全油圧式) |
クレーン作業範囲 | 2,900~5,550[mm] |
クレーン揚程 | 約2,900[mm] |
クレーン伏仰角度 | 0~11[°] |
クレーン旋回角度 | 左右20[°] |
クレーン旋回速度 | 1.2[rpm]以下 |
クレーン巻上速度 | 約7.5[m/min] |
空気圧縮機出力 | 5.5[kw] |
空気圧縮機作動圧力 | 5.5~7[kg/cm^2] |
空気圧縮機吐出量 | 690[L/min] |
空気圧縮機タンク容量 | 230[L] |
ロングレール引き寄せシリンダ 引寄せ力 | 10[t] |
ロングレール引き寄せシリンダ ストローク | 250[mm] |
■個体差
各種文献に登場する第1編成とみられる個体では単軸 x2で足回りが構成されるが、その後導入されたとみられる編成では2軸ボギー台車 x2で足回りが後世されている。
また、Aトロ後方に搭載されていたクレーン・溶接機冷却装置用発電機がBトロに移設され、溶接機制御装置がAトロの後ろに配置されている。

参考文献
1)『ソ連製 フラッシュバット溶接機』,新線路,28巻,3号,鉄道現業社,(1974.3)
2)田中五十大『ソ連製 フラッシュバット溶接機』,新線路,28巻,8号,鉄道現業社,(1974.8)
3)田島浩『フラッシュバット溶接機による基地溶接』,新線路,29巻,11号,鉄道現業社,(1975.11)