アイキャッチ画像:保線機械研究グループ編『保線機械便覧』日本鉄道施設協会, 1978年より引用
概要
R300Cは、1978年に登場した無線誘導装置試験用確認車である。
近年に至るまで長らく確認車は運転者と指揮者の2名乗務であり、同じ区間の上下線を確認走行するには確認車1両と乗務員2名を2組用意するか、1組で往復する必要があった。当時、開業が近づいていた東北・上越新幹線ではより効率的な運営が求められており、確認車の運用に掛かる要員を減らして確認作業を行うことが企図された。
片方の線路を乗務員が乗った親機R300Bにより走行し、一方の線路にはこれと並行して親機から無線誘導によって無人自動運転を行う当機が走行する確認走行方法が考案された。1976年に両毛線において在来線用軌道モータカーを使用して基礎実験が行われたのがはじまりで、その後は東北新幹線の先行建設区間である小山モデル線でR300Bと当機を用いた試験が行われた。
小山モデル線で行われた試験の内容と結果は以下のとおりである。
1)高速安定性試験
最高115 km/hまで走行したが異常は認められなかった
2)制動試験
初速度100 km/hにおける制動距離は450-475 mであった
3)誘導性能試験
3-1)走行誘導性能
100 km/h走行中の相対距離は約2.5 mであった
3-2)制動誘導性能
初速度80 km/hからの制動時の相対距離は0-7 mであった
4)電波の有効到達距離および電波遮断試験
電波の有効到達距離は約300 mであり、電波が到達しない場合は自動的に非常ブレーキが作用した。
交流25,000 Vの高圧架線による電波障害は認められなかった
5)異物検知試験
親機が異物検知した場合、親機子機ともに非常停止した
子機が異物検知した場合、親機子機ともに非常停止した
翌1979年には先行的に建設された仙台-北上間に設けられた雪対策試験線に移って試験が繰り返された。
このときは降雪時の無線誘導性能が確認され、両機とも雪かき装置を装着した状態で走行し、良好な性能であることが確認されている。
池上邦信『雪対策試験線の成果概要』新線路, 34巻7号, 鉄道現業社, 1980年7月より引用
しかし、実際には無線誘導装置は実用化されることなくR300Cは1両のみの製造で終わった。その後、確認車の効率化は指揮者を廃した一人乗務へと向かうことになるが、これはまた先の話である。
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 8,300 mm |
幅 | 3,140 mm |
高さ | 3,150 mm |
軌間 | 1,435 mm |
自重 | 15 t |
■ エンジン
エンジン出力 | 235 PS/ 2,200 rpm |
■ 牽引性能
勾配 | 積載重量 | 単車積載時 | 重量牽引時 |
水平線 | 1 t | 100 km/h | 80 km/h |
15 ‰ | 1 t | 70 km/h以上 | 30 km/h以上 |
参考文献
1)『施設のうごき 新幹線確認車(235PS無線誘導装置付)走行試験が行われた』新線路, 32巻6号, 鉄道現業社, 1978年6月
2)池上邦信『雪対策試験線の成果概要』新線路, 34巻7号, 鉄道現業社, 1980年7月
3)湯本幸丸『写真解説 保線用機械』交友社, 1967年初版・1980年改訂5版
4)藤川央玖人『新幹線保守用車の紹介 新幹線用確認車R600 新幹線用電気作業車MKW』建設機械施工, 75巻3号, 日本建設機械施工協会, 2023年3月