バラスト作業車(山形新幹線建設用)

写真:バラスト撤去作業中の作業車
八鍬 義雄「軌道設備と工事の概要」『鉄道と電気技術』3巻7号,1992年,pp.29-32.

 


 

本項では目黒工業製バラスト作業車のうち、JR東日本の山形新幹線・福島~山形間建設時に使われた機種について解説する。

 

■概要

山形新幹線(福島~山形間)の一般区間で用いられた改軌方法
佐々木 光春「山形新幹線の開業に向けて:平成4年夏、奥羽本線福島~山形間新幹線直通乗入れ」『土木技術』47巻1号,1992年,pp.57-65より

山形新幹線は日本初のミニ新幹線として、在来線(奥羽本線)を軌間1067mmから1435mmへ改軌することで建設された。その改軌方法は、バラストを撤去して軌框をつり上げ、PCマクラギを1067mm用から1435mm用へ交換した後に、軌框とバラストを再設置するという方法で行われた1)。この工事でバラストの撤去作業のために用意されたのが本機種である。

 

■構造

山形新幹線工事用バラスト作業車の側面図
画面左が作業方向である。
佐々木 光春「山形新幹線の開業に向けて:平成4年夏、奥羽本線福島~山形間新幹線直通乗入れ」『土木技術』47巻1号,1992年,pp.57-65より

本機種は他の目黒製バラスト作業車とは構造が大きく異なる。ウェストコンベアが作業方向と逆向きに取り付けられており、前進しながら後方のダンプトロにバラストを排出する。また電源車は省略され、作業車本体に発電機が搭載されている。

バックホウなどの土木機械ではなくオンレール式のバラスト作業車を使用することで、

  • レール面を定規として作業するため設計通りの施工ができる
  • 曲線部でも綺麗に作業が可能
  • マクラギ下バラストに轍や不正面を発生させることがない
  • 天候にあまり左右されない

などの利点があった2)

また本機種は、スクレイパーを調整すれば停車場内でも作業可能な構造であった。なお、改軌前の軌道上で作業するため軌間1067mm用となっていた。

 

■運用

このバラスト作業車は2台が製造された3)。人力作業に比べて大幅な省力化が達成され1日あたり150mを施工するなど大きな威力があった。その一方で、長年使われてきた奥羽本線の道床には、災害時に使用したと思われるレール杭やワイヤー類、旧構造物の基礎などの障害物が多く、場合によっては1日に5m程度しか施工できないという困難もあったという4)

 

■諸元

諸元は以下の通り5)

掘削深さ(マクラギ下) 150~300[mm]
標準掘削幅 3000[mm]
ホーム部掘削幅 2900[mm]
作業可能最大カント量 110[mm]
作業速度 40~80[m/h]
回送時速度 30[km/h]以下
通過可能最小曲線半径 60[m]

 

■文献

1)佐々木 光春「山形新幹線の開業に向けて:平成4年夏、奥羽本線福島~山形間新幹線直通乗入れ」『土木技術』47巻1号,1992年,pp.57-65.

2)佐々木,前掲1.八鍬 義雄・佐々木 光春・庄司 公男・高木 芳光・添ノ澤 和雄・和田 雅彦「工事施工の特色」『日本鉄道施設協会誌』30巻7号,1992年,pp.8-15.

3)松田 務「バラクリ3年…:今年は「バラスト=クリーナー」」『トワイライトゾ〜ンMANUAL』6号,1997年,pp.182-193.

4)八鍬ほか,前掲2.吉田 宏美・澤田 貞悦「山形新幹線の工事および施設概要」『JREA』35巻8号,1992年,pp.3-10.

5)佐々木,前掲1.