視察型/作業用モータカー



典型的な鉄道省規格視察B型モータカー(加藤製作所製) 岡本憲之『加藤製作所機関車図鑑』,イカロス出版,(2014)p30 より引用

TMC100型以前に鉄道省→国鉄へ導入されていたモータカーの内、人員輸送を主目的としたものを指す。
資材運搬用途が想定されていた貨物型や兼用型と比べ、人員輸送のみでよいため低馬力かつ簡素な構造を有する。

貨物型や兼用型同様、鉄道省において昭和6(1931)年に規格化され、昭和10(1935)年に規格が細分化されA型/B型に分かれたが、1)兼用型同様性能面では座席形状しか違いがなく、座席が枕木方向にもあるのがA型、座席がレール方向のみであるのがB型である。2)
なおこれ以降は全く規格化が行われず、JESやJISにも当該の規格が存在しない。おそらく鉄道省規格型は戦前のうちに生産が終了した模様で、戦後は規格に準拠しない人員輸送用のモータカーを視察型と呼称していたものと思われる。

その内のひとつとして昭和25(1950)年より製造が開始されたのが「作業用モータカー」と呼ばれる車両群である。
前年より軌道バイク「レールスター」の製造を行っていた大宮富士産業が製造し、東京富士産業を代理店として国鉄に納入が始まったもので、ボンネットとウィンドウスクリーン程度しか外板がないオープンカー的で簡素な構造が特徴である。


作業用モータカー 山田康一 『保線新書5 軌道モータカー』,交友社(1967)p4 より引用

国鉄においては当初視察型と見做されていたが、やがて納入が進むうちに「作業用モータカー」の呼称が一般的となる。国鉄における納入もかなり長い期間続き、確認出来た限り昭和40(1965)年度まで日本国有鉄道規格(JRS規格)仕様書の存在が確認できる。3)

製造所についても、大宮富士のほかに岩手富士産業が担当していたが、いずれも旧中島飛行機系の企業群であり、昭和30(1955)年に大宮富士や東京富士を含む旧中島系諸企業が合併し富士重工業が成立する4)と、TMC系軌道モータカーと同じく同社宇都宮製作所にて製造が引き継がれている。昭和38(1963)年から45(1970)年までは同じく旧中島系の輸送機工業も製造に加わっている。5)

■作業用モータカーの分類
準備中

■作業用モータカーの構造
準備中

■参考文献
1)日本国有鉄道『鉄道技術発達史 第2編第1』(1956)
2)丸茂達夫・杉山実『保線機械の構造と取扱』(1955)
3)松田務『MC:一般型モーターカー見聞録』,トワイライトゾーンマニュアル11,ネコ・パブリッシング(2002)
■脚注
1)日本国有鉄道(1956)p744-747
2)日本国有鉄道(1956)p746
3)『保線ポケット事典』,鉄道現業社,(1966)p249
4)岩手富士産業は合併に参加しなかったが、その後も富士重工系列会社として作業用モータカーの製造を続けた模様である。
5)『ユソーキ新しき創造 輸送機工業株式会社五十年史』,輸送機工業株式会社50年史編纂委員会,(2000)p68


■作業用モーターカー
<富士重工製 R105形>

<メーカーおよび型式不明>